元旦の川下り
今年の仕事はじめ。
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」
新年の挨拶もそこそこに私は、舟の準備へと入る。
川に係留した舟がずらりと並ぶ船着き場。
霜よけに外した八枚の舟の床板を元に戻し、絨毯を敷く、それから折りたたみの長机を二つ並べ、つなぎと呼ばれる板を間にのせる、それからこたつ布団を三枚バランスよく敷き、上に天板と呼ばれる板を二枚置く。
それから火鉢を入れる。
今日は、これを7隻、準備する。
果たして、この状況下、お客様は来るのだろうか。
同僚の船頭とさすがにねぇ・・・でも準備はしとかないとと言いつつ。
元旦の今日は陽が照って、なんだか清々しく感じる。
冬の朝は遠くまで見渡せるような気がする。
川は透明度があり、浅い底がはっきりと見える。
ちょっびりチラ見してしまう柳川のいつもの景色。
白い息を吐きながら、腕時計を見つつ準備作業に没頭する。
キリの良い所で、作業を中断し朝礼に参加する。
普段の元旦ならほとんどの船頭が出勤して、仕事始めとなる。
だが、本日は半分の船頭、状況を考えると致し方ないけど寂しい。
年始の社長の挨拶を聴く。
今は耐え忍ぶ時と言われるが、どのくらい我慢すればいいのか、それは誰にも分からない。
年始の抱負を個々に発表する。
私は去年、コロナ化の休業で、かなり気が緩んでいたので、なかなか仕事に身体や心が追いつかなかった。
ので、対応力をしっかり身につけると言った。
乗船場には、お酒、塩が備えられる。
新年の一発目。
真新しい法被と足袋に身を包んだ私は、川下り二番手の漕ぎ手となる。
一艘目のお客様は一人。
続いて私の番も一人のお客様での出発となった。
午前中にあって、先日の大寒波が嘘のような晴天で、陽がでているおかげで意外にもあったかく、風も穏やかで絶好の川下りコンディションとなっていた。
マンツーマンは多少、緊張もするが、気さくな方もあって和気あいあいに、今年最初の川下りは無事に終えた。
乗り場に戻り、ハイエースで船頭を迎えに行ったり、駅のお客様の送迎を行う。
お昼は会社からおせちの弁当がでた。
去年はオードブル形式で、今年は個々の弁当、時勢を感じた。
やはり、お客様はまばらで少ない。
私は作業をしながら、次の番を待つ。
最終便で、2回目の出発となる。
なんと、12名のお客様、内、在日の海外のお客様もいて、賑やかな船旅となった。
思ったより、多くのお客様が来ていただいたのかなと思う。
外で屋根がなく安全と思われているというのもあるのだろうか。
観光はお客様がいてからこそ、成り立つので嬉しい事ではある。
けど、油断ならない状況である事も間違いない。
今年もこんなジレンマを感じるのかなと思いつつ、自分の今ある仕事をしっかりとやる・・・やっぱりそれしかないのだから。
明るく楽しく元気に、そう、今日はいい一日だった。
本年がよい年でありますように。