いとこ2・その2
ハウカダル共通暦三二二年感謝の月四日
きょう、ホープの義妹が訪ねてきた。学校から帰ると、寮の玄関で寮監と押問答している若い娘がいて、それがゆうべ酒場でホープといっしょにいた娘だったんだ。
「あんたのいとこの義妹だと言ってるんだが、ほんとうか?」
寮監が疑わしげにたずねるので、「そうです」と答えた。
半信半疑の寮監に頼んで、彼女を会見室に案内した。
寮内は原則女人禁制だけど、身内が訪ねてくれば寮監が取り次いでくれるし、会見室で会って話をすることもできる。だから、外に連れ出すより会見室で話をしたほうが、妙な勘繰りをされずにすむと思ったんだ。
彼女は、商売用の名はジジだが、本名はジョーザルだと名乗った。
「あの、ごめんなさい。いきなり訪ねて」
ジョーザルは気後れしたみたいで、どこかおどおどしている。
「いや、そちらから訪ねてきてくれて助かった。気になってたんだけど、ゆうべのようすじゃ、ホープはおれを避けようとしていたからね。また店に行ってもいいものかどうか、判断に困ってたんだ」
「それは……わたしにもわからないんです。あなたにホープを訪ねてくださいとお願いしたほうがいいのか、そっとしておいてほしいと言ったほうがいいのか……」
村で会ったときや、ゆうべ店で見かけたときとは印象が違った。ジョーザルはホープに反感を持っていると思っていたが、いまは心配しているようだった。
「ただ、彼女にはあなたが必要です。いろんな意味で。だから、ああいうところで働いているからって、彼女のことを妙な目で見ないようにって、そう言いたくてお訪ねしたんです」
「妙な目でなんてみるもんか」
「それならいいんです。ああいう店にいるということでどう思われたか心配で。それに、だれかが何か言うまえにこれだけは言いたくて。ホープは汚れていません」
一瞬、意味がわからず、「汚れてって……」と聞き直しかけて、はたと気がついた。
「あ、ああ。歌と踊りであの店に勤めてるってのは、ゆうべ、店のおやじさんに聞いたよ」
「じゃあ、彼女を軽蔑したり、見捨てたりしないでくださいね!」
「ああ、もちろん」
「ずっと彼女を大切にしてくださいね」
何か変だと思いながら、「ああ」とうなずいた。
「ちゃんとお嫁さんにしてあげてくださいね」
思わずむせ返った。ジョーザルがとんでもない勘違いをしていると、やっと気がついたのだ。
「なんでそう思ったんだ? おれとホープはそういう間柄じゃないんだよ?」
「やっぱり酒場で働いているような女は妻にはできないってことですか?」
ジョーザルが気色ばんだので、思わずたじたじとなった。
「ホープは親戚だし、妹みたいな気がしてる。だから、彼女の身に起こったことは他人ごとじゃないし、心配もしてるんだ。それは、もしも仮に酒場での仕事が歌や踊りや音楽だけじゃなかったとしても変わらないよ。でも、それは、きみが想像しているような関係じゃないよ。最初からね」
「だって……。それじゃ、ホープの片思いなの?」
「え? ホープだって同じだろ?」
「そんなはずはずないわ!」
「ちょっと待て。ホープが? おれを?」
考えたこともなかったので、面食らった。
だって、ホープと直接会ったのは一回きりだし、そんなそぶりをされたわけじゃないし、何回かやりとりした手紙でも、そんな感じを受けたことはないぞ。身内ってんで、親しみを感じてくれているみたいではあったけど。
「ホープがそう言ったのか?」
「はっきり言ったわけじゃないけど、わかります」
「なんで?」
「恋人じゃないというのなら、酒場で働いているところを見られたからといって、どうしてあんなにショックを受けるんですか?」
「そんなにいやがってたのか、おれに見られたことを?」
ジョーザルはうなずき、泣きだした。
おっと、消灯の時間だ。まだかなり長いつづきがあるんだけど、あす書くことにしよう。




