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天災球児の暇つぶし

作者: 薄荷

投げれば豪速球、打てばホームラン。誰もが憧れるチームの中心的存在、エースで4番。

だが、そんな事(エースで4番)すらも俺にとっては当たり前。小さい頃から投げても打ってもチームの中ではピカイチ。全国大会でだって何回も優勝した。中2の夏までは。

中2の夏、地区大会決勝最終回、俺たちが4点リードしていて相手の攻撃、ツーアウトランナーなしの場面、誰もが勝てると確信していた。もちろんこの俺も。が、一球目を投げた瞬間俺の肩が悲鳴をあげた。俺はそのまま倒れ込み直ぐに病院へ。チームはそのままずるずると点を取られサヨナラ負けをしたらしい。小さい頃からさんざん酷使してきた方はもう限界だったらしく、自分の才能に似合わず身体は平凡だったようだ。医者曰くもう中学生の間は投げることは叶わないだろうと。

俺の野球人生は1度ここで幕を下ろした。


高校生になった俺は部活には属さず毎日ただダラダラと過ごす日々を送っていた。肩は完治していたし別にもう身体的には野球も出来る状態ではあった。だが、精神的にはそうはいかなかった。俺は投げることが怖くなってしまっていた。野球が、ただただ恐ろしかった。それでも才能があると自覚しているぶん、野球が出来ない事がとても悔しかった。


そんなある日だった。

うちの学校の野球部が地域でもそこそこ名の知れた強豪校と練習試合をするというのを聞いたのは。

別に見る気はなかった。だが何故か俺の脚はグラウンドに向かっていた。俺がグラウンドに着いた時、試合はまだ一回表だった。スコアボードには9対0の文字。しかもまだノーアウト満塁。

うちの学校のやつらはもう皆諦めムードだった。情けねぇ。心の奥底からそんな声が聞こえた気がした。


「ピッチャー交代!俺!!」


気がつけば叫んでいた。部員でもない俺なんかに変わらないのは分かっていた。分かっていたけど、叫ばずにはいられなかった。

相手の監督はまんざらでもない様子。

うちの部員たちはもうどうでもいいと言わんばかりに俺にグローブとユニフォームを渡してくる。おいおい、いいのかよ。まさかマジで変わるとは思ってなかったんだけど。

もうこうなりゃヤケだ。イップスだろうがなんだろうが、投げ抜いてやろうじゃねぇか!こんなもん俺にとっちゃただの暇つぶしだ!

こうして俺の野球人生第2幕はなんともデタラメなスタートを切った。

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― 新着の感想 ―
[一言] この後どうなるんだろう!という、楽しみが感じられるラストでした。主人公の今後がを想像したくなる、余韻の感じられる終わり方が素敵です。 「そんな事」と書いて、「エースで4番」と読ませる書き方も…
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