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Death gameーデス ゲームー  作者: 他人の誰か
殺人鬼編
8/13

Ⅷ.着物美人と斧


「おや、ようやりますなぁ。」


この場に、艶めかしい声が響いた。

恐る恐る顔を上げると、雅な着物に身を包んだ若い女性が微笑んでいるのが見えた。

口元には、大きな蝶が描かれた扇子をあてている。

黒い髪が映える、とても綺麗な女性。


この女性が、俺たちに向かって斧を投げてきたのだろうか。

てっきり、もっとごつい男かと思っていた。

全体的に線の細いその人は、とても斧を投げられるようには見えない。


「ようやってくださいましたなぁ…だよね、シロ。」


「……リョウタ、指示して。」


俺たちが床に手をついている間に、2人は立ち上がり、戦闘態勢に入っていた。


「…ボクたち、仕掛けられた側だもんね。

あ、そうそう…お姉さんの能力借りるね。」


リョウタはそう言って、アイリの頭に手を置いた。

うつ伏せになっている今現在、アイリの頭はリョウタよりも低い位置にある。


「さてと…シロ。」


リョウタが合図をすると、シロの身体が淡い光りに包まれ、みるみるうちに縮んでいく。

やがて光りが収まると、そこには見覚えのあるたぬきのぬいぐるみがあった。

変形の能力者なのだろうか。

なんにせよ、今考えることではない。


「おやまあ、愛らしいぬいぐるみやねぇ。

切り刻み甲斐がありそうやわぁ。」


おっとりとした口調で、恍惚とした笑みを貼り付けた女性。

扇子を閉じ、たぬきのぬいぐるみを指した。


「確かに愛らしいぬいぐるみなのは認める。

でもね、そこにボクが干渉すれば、ただの可愛いぬいぐるみじゃなくなるんだよ?

あ、斧振り回してるようなおばさんにはわからないよね~。」


「よう言ってくれはりますわ。」


二人とも、とてもいい笑顔で対峙している。

先手を打ったのは、向こうだった。

何も無い空間に光が集まり、斧となってリョウタに振り下ろされる。

リョウタはそれを軽々躱すと、たぬきと顔を見合わせた。


たぬきが跳んだかと思うと、また光りに包まれて人になり、刀を振り下ろす。

さっきまで、刀なんて持っていただろうか。


女性はそれを軽々と躱した。


目の前で戦闘を繰り広げるこの2人は、少年漫画に出てきそうなほど強い。

俺たちがリョウタとシロに戦いを挑んでも、()()()()使()()では歯が立たない。

恐らく、俺の能力も…。


シロが斬り込むと、女性が避けてシロに斬り込む。

女性が斬り込むと、シロが避けてまた斬り込む。

先程からずっとそんな調子だ。


だが、女性は俺たちのことも眼中に入れているらしい。

時々、頭上を狙った攻撃が飛んでくる。

下手に動けず、立ち上がれずが現状だ。

食糧たちに関しても、無事を祈ることしか出来ない。


それにしても、さっきシロは凉太に指示するよう頼んでいた。

リョウタは現在、無言で立ち尽くし、攻撃が来たらそれを避けている。

二人は脳内で意思疎通が出来るのだろうか。

それとも、さっき言っていたアイリの能力を借りている…?


「はぁ…はぁ…。」


女性の方から、荒い息づかいが聞こえた。

いくら少年漫画のようだと言っても、やはり現実。

疲労はあるのだろう。


「あれれ、もうギブアップ?」


それに比べ、リョウタとシロは一切息が上がる様子はない。

この二人は、二次元から来たのだろうか。


「……。」


シロに至っては、息が上がらないどころか表情を変える様子もない。

俺にもそんな体力があったら、持久走で良い成績を残せていたかもしれないのに。


「うん、もうキツいよね。

いくら鍛えてたって、おばさんがボクたちに敵うはずないもん。」


「…くそったれ。」


女性はリョウタを睨みつける。

と共に、能力を発動したのだろう。

リョウタの背後に、空中から切っ先の尖った剣が浮き出てきた。

本人がそれに気が付く様子はない。

それどころか、皆女性の方を向いていて、剣に気が付いているのは俺だけのようだ。


気が付けば、俺の身体はリョウタに向かって突進していた。

先程とは逆で、俺がリョウタを押し倒すと、本来リョウタに刺さるはずだった剣はそのまま、女性の腹を貫通した。


「おっと、危なかった…。

助かったよ、ありがとう。」


そう言う凉太の表情から、危機感は読み取れない。

するりと俺の腕から逃れると、女性の頭に手を乗せた。


かろうじて息があった女性は、少しすると瞼を閉じ、ピクリとも動かなくなった。

相当綺麗に刺さったのだろう。

出血をしていない。

そのお陰か、俺は冷静さを保つことが出来ていた。


シロは人間の姿に戻り、リョウタに歩み寄る。

リョウタはアイリに近寄ると、また頭に手を乗せた。


「お姉さんの能力いいね。

()()使()()だっけ?

ありがとう。」


リョウタはにっこりと、アイリに笑いかけた。



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