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Death gameーデス ゲームー  作者: 他人の誰か
殺人鬼編
5/13

Ⅴ.彼と幼馴染み


彼女はわからないことを考えるとき、顔が真っ赤になる。

きっとこの状況で、頭をフル回転させたのだろう。


「大体、私たちを殺したいなら、さっさとそうすればいいじゃん!!」


「あ”ぁ”?」


一瞬面食らったような表情になった彼は、ドスのきいた低い声でアイリを脅しにかかる。

だが、今は完全にアイリのペースだ。

スイッチが入った彼女を止めるなんて、俺でも難しい。

簡単にペースに飲み込まれてしまう。


俺はなんて、勇敢な幼馴染みをもったものだろう。


「だって、説明してる間に私たちが攻撃を仕掛けられるかもしれないんだよ?

お互いに能力があるんだから!!」


「ちっ…。」


彼は舌打ちの直後にポケットをまさぐり、ポケットナイフを取り出した。

さっきまで感じていた殺気が、今はそこまで濃くない。


俺も持っていたナイフの切っ先を彼に向ける。


「どうせ死ぬんだから、オレの能力を教えてやってもいいぜ。」


また彼に、余裕の表情が戻った。

右手でポケットナイフを握り、左手を腰に当てる。


今はただ、様子を伺った。


「オレの能力は、()()だ。

あらゆる情報を得ることが出来る。

オレにはお前らの能力なんて、筒抜けだったわけさ。」


ヘラヘラと笑う彼に、俺はドキリとした。

()()、その能力はこの場で一番貴重かもしれない。

最恐(チート)と呼べるほどの…。


人を殺したことがない俺。

最恐の能力を有している彼。

自分以外を殺し、生き残ろうとしている彼。


「取り引きしないか。」


「しないね。お前らに、オレの欲しい物は用意できない。」


彼は嘲笑うように、俺に向かってそう告げた。

彼の欲しい物…それは、この屋敷から()()()()()()()()()()()()のハズ。

いや、たとえそうでなくても、根本的なところはそこだろう。


この屋敷から出られなければ、欲しい物なんて永遠に手に入らないとも言える。


「この屋敷から出る方法は、一つだとは限らない。」


俺は彼の意見を無視して、とりあえず話すことにした。

それを聞いて、彼が納得してくれれば取り引きが出来る。


「なに…言ってやがる。」


「殺し合いをしなくても、この屋敷から出る方法はある。

それに…もしかすると、そっちの方が確実だ。」


俺はそこまで話して、彼をじっと見た。

今出会ったばかりの人の情報は、俺には全くわからない。

彼が何を考え、どのように行動するのか。

わかるはずなんてない。


それでも、俺は嘘を言っていないし、可能性が0な訳でもない。

だから、この可能性にかけてみた。


「その根拠はなんだ?

逃げ出そうにも、アイツを見ただろ?

バラバラにされて、晒しモンだ。

オレはあぁなりたくねぇんだよ。」


「……問題ない。」


彼の意外な一面に、少し戸惑った。

強気な彼にも、怖いと感じるものはあるらしい。


ここは2次元ではない。

人にはそれぞれ得意不得意があって可笑しくはない。

怖い、怖くないも同様だ。


「どうする。」


相変わらずナイフをお互いに向け合ったまま、彼が聞いてきた。

片眉をつり上げ、戸惑いの表情を見せている。


「それはまだ言えない。

この状況でお前に話して、先に実行されたら困るからな。」


俺はありったけの眼力を込めて彼を睨んだ。

問題はそこだ。

彼のことを、100%信じることが出来ていない。

それはまた、彼も同じだろう。


この場で彼に情報を渡し、彼に逃げられれば色々とマズい。

彼の弱点とは行かないまでも、何か逃げ出せなくなるような…そんなものがないだろうか。


「ねぇユウ…さっきから思ってたんだけど、あの人見たことない?」


背後から聞こえたアイリの囁き声に、俺は記憶をたぐり寄せ、彼を観察する。

見たことがある…?

いや、俺の記憶にはない。

忘れているだけか…?

芸能関係には疎い自信があるが…。


いくら考えても、覚えていないものは覚えていない。

アイリもTVはあまり見るタイプでは無いと思っていたが…。


「……。」


気まずい。

そんな俺の内心を悟ったのか、アイリが耳打ちしてきた。


その言葉に、俺は目の前にいる男を見つめた。

黒い服、白い髪、鋭い目つき。

右の耳には…月を模ったピアス。


「お前…まさか…。」


「あ?」


俺はそれを見てハッとした。

彼は、俺たちにとって忘れるはずもない存在だった。

いや、実際に今まで忘れていたのだから、それは間違っているか。


「お前…どこ行ってたんだよ。

急に消えやがって…シュウ。」


俺の言葉に、彼は目を見開いた。

この反応はやはり、間違いない。


安堵したのもつかの間、彼…シュウの顔に、激怒の表情が浮かんだ。



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