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Death gameーデス ゲームー  作者: 他人の誰か
殺人鬼編
3/13

Ⅲ.能力と可能性


アイリとの再会を果たすことが出来た俺は、先程の思考を改めることにした。

この部屋に引きこもっているという選択は、やはり現実的ではないだろう。


俺はベッドに腰掛け、背中越しにアイリに話しかけた。


「アイリ、俺たちの持っている各々(おのおの)の情報を共有しないか。」


「ん、ユウがそう言うんならいいよ!」


アイリはぬいぐるみを抱いたまま、俺の隣に腰掛けた。

その腕には俺と同じ時計がはめられている。

服は俺たちが通っていた高校の制服で、肩までのくせ毛な茶髪は下ろしてある。

黄色と白のヘアピンを横髪に挿しているのはきっとオシャレというやつだろう。


人は見た目からでも、様々な情報を得ることが出来る。

こんな時だからこそ、()()()()()()はかなり大切になってくるだろう。


「それで、アイリはここに来るまでに何か見たか?」


俺は隣で再びぬいぐるみと会話を始めたアイリに問いかける。

相変わらずのマイペースだ。


「あ、えーっとね~。

私がここに来るまでに見たもの…?

んー、ユウの背中と…殺人現場?」


天井を見上げながら、そう告げたアイリの様子は特に変わることがない。

殺人現場を目撃しておいて、こんなに冷静でいられるものだろうか。

隣に座るアイリからは、負の感情を感じない。

成長して落ち着くことが出来るようになったのか…いや、いくら成長しても、戦場に出たことがあるような人間でなければ、殺人現場を目の当たりにして冷静さを保つなんてこと難しすぎるだろう。


そんなとき、俺は思い出した。

アイリは、普通の人と比べてはいけない。

どんなことでも軽く受け取り、自分と周りを傷付けないように徹底するのがアイリの良いところだ。

それは同時に悪いところでもあるが。


「俺は特に見なかった。

今の所有物はこの時計だけだ。」


「うん、私も同じだよ。」


アイリの返答は、やはり軽い。

現状を受け入れてないのか、受け入れた上でそうしているのか。

いくら幼なじみの俺でも、それはわかりかねた。

ナイフの件は、隠しておくことにしよう。


少し時間が経ち、俺は頃合いを見計らって提案した。


「アイリ、お腹空かないか?

多分、この屋敷内に食堂があると思う。

そこには食料が用意されていると思うんだ。」


そこまで言ったとき、誰かの腹の虫が鳴いた。

照れた様子で、アイリが苦笑いを浮かべる。


「そうだねぇ、私お腹ペコペコだよ~。」


俺たちは早速、食堂へ向かうことにした。

目標は、できるだけ多くの保存食をこの部屋に持ち込むこと。

二人でこの部屋を出るのは危険なので、俺がアイリに部屋に残るように告げると、アイリは首を横に振った。


アイリはニコッと明るい笑みを浮かべると、クマのぬいぐるみをベッドのど真ん中に置いた。


「一人一つずつ、能力が与えられたでしょ?

私ね、ぬいぐるみとお話しできるんだ~。

だから、この子に見ててもらおうよ~!」


すっかり抜けていたが、アイリも能力を有している。

能力(それ)を上手く使えば、この作戦も上手くいくかもしれない。

俺が判断を下すのに、時間はかからなかった。


「どんなことが出来るんだ?」


「えっとね~、ぬいぐるみが見ている情報を、視線を通じて共有すること、それから遠隔操作みたいなのも出来るよ。」


「…それなら、罠でも仕掛けていこう。」


俺たちは早速、罠の準備に取りかかった。

ぬいぐるみの手に縄を括り付け、引っ張るだけで罠が作動する仕掛けにする。

これで、ここは俺たちの一時的な拠点となった。

同じような行動をしている人がいないとも限らない。

もしかすると、既に食堂を占拠している人がいるかもしれない


殺し合い…実感は湧かないが、用心に超したことはないだろう。


「アイリ、ぬいぐるみを操作して、食堂の様子を伺うことは出来るか?」


これが可能か不可能かで、今後の動きも変わる。

教えてもらった情報通りなら、そこまで難しいことでは無いと思う。

しかし、二つを同時に操作することが可能かどうかは、本人に聞かなければわからない。


「余裕だよ、私に任せて~!」


そんな俺の不安を晴らすように、アイリは満面の笑みでうなずいた。


「ちなみに、ぬいぐるみは同時に何体まで動かせるんだ?」


「えっとね~、今のところ2体かな。

さっき見つけたうさちゃんのぬいぐるみに、今屋敷内を詮索してもらってるんだ~。」


複数を同時に動かすことは可能なのか。

俺は部屋を見渡した。

クマのぬいぐるみの他に、ぬいぐるみは見受けられない。

この部屋には一つしか無いのか。

他の部屋にもそうかもしれないが。


「とりあえず食堂を目指そう。」


そう呟いて扉のノブに手を掛ける。

アイリはコクンと首を縦に振った。



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