Ⅰ.新たな始まり
ブクマしてくださった方、ありがとうございます!!
気が付くと、屋敷のベッドで横になっていた。
ベッドの端にはくまのぬいぐるみが置かれている。
俺は起き上がると、能力が書かれている紙を見た。
「俺は能力を使って戻ってきた…。」
そのことだけは覚えていた。
何故…どうして、能力を使ったのだろう。
なにか理由があるはずだ。
いくら考えても思い出せない。
まるで、広い野原で一匹の蝶を探しているような気分だ。
見つかりそうで、見つからない。
俺は近くにあったぬいぐるみを抱きしめると、ベッドの上をコロコロと転がった。
なんだか落ち着かない。
目の前で人が死んだら、落ち着いていられるわけないか。
そんな時、部屋の扉がノックされた。
「ユウ…いるんだよね?」
扉越しに聞こえたのは、懐かしい幼馴染みの声だった。
俺は迷わず扉に駆け寄り、鍵を開けた。
「アイリ…!」
どこか遠慮がちなアイリは、部屋の中に入ると俺の腕を見た。
吊られて視線を向けると、そこには抱き抱えたままのくまのぬいぐるみがある。
なんだか恥ずかしくなって、目を逸らした。
「アイリ、ぬいぐるみ大好きだっただろ。
ほら、あげるよ。俺のじゃないけど…。」
そう言ってぬいぐるみを差し出すと、曇ったアイリの表情に光が差した。
「ぷっ…ふふっ…ありがと。」
「喜んでもらえたならよかった。」
アイリはくまのぬいぐるみを抱きながら、俺の袖を掴んだ。
そのまま、部屋の外に引っ張り出される。
俺の裾を掴んだ腕には、俺と同じ時計がはめられていた。
「ユウ、この時計は通話機能を持ってるんだ。
私ここで留守番してるから、食堂で食料確保してきてくれない?
そうそう、この屋敷は三階もあるみたいだから見て来て。
この部屋の警備は任せなさいっ!!」
アイリがこの短時間で時計の使い方をマスターしていることには驚いた。
けど、なぜそんなに慌てているのだろう。
本人はいつも通りを装っているつもりなのだろうが、幼馴染みの俺には一目瞭然だった。
それを本人に確認する前に、バタンっと扉を閉じられた。
仕方なく、俺は足を進める。
食料確保をしてからでは両手が塞がるだろうと思い、俺の足は三階へ上がるための階段へと向く。
ここは二階だ。三階はすぐ上。
幸いながら、誰にも出くわすことなく三階に着くと、その埃っぽさに咳が出た。
息が苦しい。
「げほっげほっ…これは女の子には行かせられないな…。」
呟くと、またホコリが舞った。
これは、黙って無言で行動した方が良さそうだ。
何故二階と三階でここまで差があるのだろう。
二階はホコリひとつ見つけられなかったのに。
それに、アイリの様子も変だった。
時計を確認すると、まだゲームが始まってから30分しか経っていない。
こんな短時間で食料の置かれている場所を把握し、三階の存在も突き止め、更に俺の居場所まで特定するなんてこと、アイリに可能なんだろうか。
それに、なんだか急いでいる様子だった。
昔から、少し抜けたところのある少女だった。
誰にでも優しくて、明るい。
何も考えない純粋さが、また人を惹きつける。
階段を上って、一番手前の扉から手をつけて行った。
ノブを回しても、鍵が掛かっているようで開かない。
順番に確かめていくと、手前から六番目の扉が開いた。
中を覗くと、廊下とは比べ物にならないくらい隅々まで手入れが行き届いていた。
どうやらここは書斎のようだ。
棚は本で埋め尽くされており、入って目の前には机と椅子が置かれている。
部屋の中をキョロキョロと見回しながら机に近付くと、つま先に何かが当たった。
拾い上げるとそれもまた、一冊の本だった。
パラパラと捲っていると、付箋の貼られたページに目を止める。
「バラバラ殺人事件…。」
大きく書かれた見出しを声に出して読んだ時、頭が何かに締め付けられるような感覚に襲われた。
手から本が落ち、頭を抑えてうずくまる。
やがて頭痛が治まると、俺の脳裏にとある一場面が浮かんだ。
山の奥深くで、右手に斧を持った人影。
左手には、人間の頭部を握っている。
心臓がバクバクと、大きな音を立てて鳴った。
額から汗が滲み出てくる。
怖い。今すぐ家に帰りたい。
恐怖が、全身を包み込んだ。
その空間にいるのが恐ろしくて、俺は部屋から飛び出した。
今のは一体、何だったのだろう。
あの本は気になるが、今の状態で行ける気はしない。
「……食堂に向か…げほっごほっ…!!」
ホコリのせいで喉が痛い。
もしも明日があるのなら、また明日来てみよう。
そう思って踵を返そうとした時だった。
「あ、人発見です!!」
背後から、幼い少女の声が聞こえた。
振り返ると、栗色の明るい髪の毛を二つに結った少女がこちらに向かって走ってきた。
残り40名




