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Death gameーデス ゲームー  作者: 他人の誰か
序章
1/13

Ⅰ.屋敷と俺たち


目が覚めたとき、俺は黒い霧に包まれた洋館の前に立っていた。

辺りを見回すと、数十名とも思われる人々が洋館を見上げていた。

俺もそれにつられるように洋館を見上げる。

赤い空に黒いシルエットを浮かび上がらせる洋館は、不気味な雰囲気を醸し出している。

状況の整理が出来ないまま立ち尽くしていると、どこからか声が聞こえた。


《レディースエーンドジェントルマン。

今宵この場に招かれし皆様、ご機嫌よう。》


この場に不似合いな、軽い調子の声が辺りを包んだ。

どこから聞こえているのかわからない。

それは他の人々も同じようで、キョロキョロと声の発信地を探している。


やがて諦めた人が再び洋館を見上げた。

次々に同じ行動をする人が増え、俺も皆に習う。

恐らく全員がそうしたのだろう。

待っていたような間が空いて、再び声が響いた。


《この場に招かれた皆様には、各自一つずつ、()()を授けます。》


その言葉に、ざわめきが起こった。

よくファンタジー小説やミステリー小説などで聞いたことのあるワード、()()と言うのは何なのか。

疑問を抱いたのはきっと、俺だけではないだろう。


少しすると、徐々にざわめきが収まり、辺りは静寂に包まれた。

なんとも言えぬ威圧感が、場をそうさせているのかもしれない。

この威圧感さえなければ、発狂する人も出てくるだろう。

俺は、口を固く閉じたままじっと洋館の屋上を見つめる。

そこから声が聞こえているわけではないのに、自然と視線はそこへ流れていく。


ゴクリと、つばを呑んだ。


《その能力を駆使し、()()()の皆様には───》


その言葉の続きを、誰もが待った。


《殺し合いをしていただきます。》


再び、ざわめきが起こった。

今度は、先程よりも長く、大きく、激しく。


「なんだよ…それ…。」


俺の口からも、ポツリと零れた。

そのつぶやきは、周りのざわめきにかき消される。


ふざけるな、(うち)に帰せ、責任者を出せ…そんな声が、あちこちから聞こえた。


《最後まで生き残った方につきましては、現実世界に帰すことを約束いたしましょう。》


今度はざわめきをかき消すくらいの威圧感で、アナウンスが流れた。

声の調子は先程までと変わらない。


その内容に、俺は血の気が引いていくのを感じた。

手足の感覚がない。

頭がクラクラして働かない。


それはつまり、一人しか現実世界に帰れないと言うことだ。

この大人数の中から、たった一人。


極度の混乱状態に陥ったとき、人は理性が崩壊する。


「ふざけるなぁぁぁあッ!!!」


そう叫んで、洋館と逆方向に走り出した男がいた。

()()()の俺たちは、その男の行く末を見守る。

誰も何も言わず、ただ見守った。


屋敷を囲むように、半円形に並んでいる俺たちは、きっと全員がその男の最後を見ることが出来たのだろう。

いや、見えなかった奴がいるはずなどない。

屋敷の前に、大きなモニターが三台表示され、男の様子を映し出したのだから。


男は走っていた。

この状況から逃げ出そうと、一心不乱に。

そして、屋敷から30m程離れたところで、血飛沫が上がり、男はバラバラになった。


甲高い悲鳴が、泣き叫ぶ声が、恐怖に絶望する様子が、簡単に想像できた。

その1秒後、それらは現実となる。


《この場を出るには、この任務(ミッション)を遂行していただかなければなりません。

会場は、この屋敷の中です。》


そのアナウンスの直後、屋敷の正門がギィィと音を立てながら開いた。

屋敷の中は闇に包まれており、何も見えない。

先程屋敷を囲むように半円形で並んでいると言ったが、先頭列の人でも屋敷からは10m程離れている。

それにどういう訳だか、先程から場所を移動することが出来ない。


次の指示が出るまで、俺たちはただ立ち尽くすしかなかった。


《皆様、能力に関しましては、屋敷の正門右手にクジの入っている箱が置いてございます。

引かれました紙に書いてある能力が、そのまま皆様に付与されます。》


能力はくじ引き。

どんな能力があるのかもわからない。

つまり、殺そうとした相手が、自分にとって不利な能力でも、自分はそれを知ることが出来ない。


そもそも、能力の優劣の有無、その対象もわからない。


《それでは、順番に屋敷の中へ入っていってください。》


アナウンスは、それで終了となった。


今から、殺し合いが始まる。

全く実感は湧かない。

頭が混乱して、現状を理解するのにも時間がかかりそうだ。


しばらくして、俺の番が来た。

順番なんて知るはずなくても、勝手に足が動く。

クジの入った箱に手を突っ込み、一枚の小さなメモ用紙を取り出すと、そのまま屋敷の中へと入っていった。



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