面白かった小説やら本やら紹介やら回想やらどっちらけ――わが疑わしき名作の思い出
何を面白いと思うかそれに情熱感じるか頭カッカと灼熱地帯の様相呈すか、なんてつまり価値観は最新の健康法に対する専門家の見解並に変動するもので、昨日感動した小説は今日のちり紙交換有力候補。
それでも面白かったものはたしかに面白かったと信じ、そろそろ価値観も固まってきたんじゃないかシャブコンに根を張る花のように、ってなもんだから適当に書き記す記憶の澱折々と。
確固たる信念理由思想意味意義はすべて不明であり、吹雪の夜のバス停探しゲームに酷似。だから話半分に聞けと居丈高なお願いご了承これは本文だから利用規約よりは注意を向けられる可能性高いとして記すよろしくね卍卍卍卍卍卍
ちなみに活動報告との被り多数。重ねて強化とかできないんすかね?
卍『ガリヴァ旅行記』ジョナサン・スウィフト 中野好夫訳 卍
巨人小人のヤイヤイが主題なりとの勘違い。幼少期からの連綿錯誤。実のところそんなもんがすべてじゃなし。その黒さ筆舌に尽くしがたき筆舌。一切の光を拒み佇む。
もうじき3百年三世紀の時またぐ。にしてはずいぶん腸を歪ます大爆笑。爆笑? いや、クスリクスクスにやにや笑いがお似合いかと。おれもそんなもん。ただ、あの爆裂犬は笑うなというほうが無理難題オデュッセウス。
上っ面のこもごもは時代の生臭い風やらたまさかの頂点により変われど、根本のアレなるアレは変わらずと承知。万古不易のツボがここにはある。
導入の素早さにも畏怖驚嘆。長々しく冗長なる前日譚はまるでなし。ちょっと見習いたいと読書尚友のEメール。えっ? 迷惑? 中世に守護神はなく。
卍『銀河ヒッチハイク・ガイド』ダグラス・アダムス 安原和見訳 卍
ぶっちぎりのユーモア。家取り壊しの阻止に尽力する間に地球は微塵。
隙なく油断なく躊躇なく予断なく、単語文節文章に散りばめられた無数のギャグコメディユーモアジョークナンセンス。それ全部数えるのは鑑真須川の砂に対するそれより難し。ってのは少々誇張かもしれないが。
なんとまあ、こんな笑える文章を書けるのかと。顎関節症超えて称賛の眼差し。目元の笑いは言葉の綾にとどまらず。警句の切っ先ムラマサより鋭く。
……と、こんな文章書く間にもまるでその魅力壮大面白味、現物の寸分すら伝えられぬともどかしく。ああこのおれの手よ頭よ何のためにあるのかいっそ果てちまえ死ね死ね。
それでも爆笑の記録は新しく、まるで昨日のよう。だがおれは昨日のことよりむしろ十年前の仇敵のたった一言をむしろ鮮明に記録しているので、このたとえはよろしくないと客観視。
卍『ロリータ』ウラジーミル・ナボコフ 若島正訳 卍
読んだと言っていいのか怪しいというのは本当に理解できたのかストーリーの懸河で直立不動を極められたのか自信がないから。しかし理解なんておれにはどんな文章にしろ一生不可能レアドロの確率より低いわねってことで開き直りの御開帳。
いっちゃんの魅力はその文章表現些末にいたるまで手抜きのないああゴシック建築様式っていうわずかばかりの世界史の記録を引っ張ってくるほどの。マジ何食ったらこんなの思いつくのかというかむしろ吸ってんじゃねえかって。
これがエロ本扱いされていた日ときたらそれこそ銀河皇帝の誕生日。まあそういうのなんか昔からあるようなので(又聞きの又聞きもはや出典はなくソースもないオムライスプレーンの薄味でゴー)、生々流転。
しかし文章だけでなく物語もすんばらしいと来た日には、ああ天は二物をばらまくのだとクソ運営のごとくにねって。ただこういうのが読めるんだったらちったあ感謝してやってもいいと祈念する下痢腹の洋式便所の上の日に。
卍『重力の虹』トマス・ピンチョン 佐藤良明 訳 卍
上巻しか読んでない小説を読んだとしていやしくも紹介するためのこういう場所に登場させるのそれいかが? と思われる向きあるだろう。ごもっともだし弁明の余地はなくこれ以上後ろに下がったらあららそこは大絶壁ときた。
それでも書きたい面白さがあるってことだよと聖人君子背景の推測を試み喧伝。ありがたい! と、これは水飲み場に駆け抜けるメロスの心境。
本当にマジで内容は理解出来ていないけれど、そんなことはどうだって。ただそこにある一文一文がああこれは石碑に刻んでおくがよござんすねってほどのそれ、それをただただ読み下し腹下しゲロ笑いして整腸剤を買い求めればよろし。ちょうど近所にドラッグストアも出来たことだしね。
ところでこのドラッグストアのわずか数十メートル先には別のドラッグストアがあるのだ。林立するドラッグストア。お前の街なんかどうせ病人だらけだろ? という大企業からの揶揄か。それってどんだけヒマなのチョーネンテン。
はい脱線。オートブレーキの効き悪し。とにかく(もう外来種並に繁殖したツノウサギ)、あらゆる面白さが詰まってるんじゃねーのと言ってみる。少なくともわたくしめにはそうおもわれました。
すげーと口あんぐりヨダレだらりな小説にはよくあることとして、かったい文体とゆめかわふわふわみてえな文体とが渾然一体バランスブレイカーってな感じに顕現していることがageられるかも。
この重力の虹もそう。ところどころこれはねラノベなんだよオボコちゃんうぇえへへへへへと言って差し出しても当たり障り差し障りないと思われる部分があったかな……どうだろう、あるだろうか? この先は自分の目で確かめろ!
卍『蜘蛛女のキス』マヌエル・プイグ 野谷文昭訳 卍
全編九割会話文。だから読みやすいかもしれない。わからないけど。
まあそんなのどうでもよく、これは奇をてらったおれの鳥糞絨毯爆撃みたいな文章の低劣愚劣さのまるでない(そりゃ当然だが)、ってのは奇天烈に逃げず、ド直線王道の小説の醍醐味、心情とかそういうところの描写に重きがある。
続きが気になるというありふれまくってもう捨て場所もないくらいの表現を懲りずに引用したくなるほど、続きが気になった小説。先へ先へとページの海を漕ぎ渡り、昼夜も分かたず。
そういうシンプルな感動、思い出せあの児童文庫、なんてところへ回帰。そう、ああ、小説ってのはなにも時系列グチャメチャ文体ゴチャクソ登場人物が全員精神病患者だってばかりじゃなく、こういうのだったねああそうだ思い出した。っていうふうに。
卍『パプリカ』筒井康隆 卍
原作もアニメも両方すんばらしい作品。とにかくゲキ面白い。それしかない。
夢なんて無秩序超前衛的な芸術作品みたいなものを、こう古からある文章で表現。その時点でもう拍手喝采両手が割れて中身が飛び出すくらいの。それだけでなく、やはりストーリーもいい。
最後、最後! しみじみしんみりとか、なんとも説明のつかぬ感情に襲われ。奇妙な物語ではあるかもしれないが、感情面の掌握はちゃんとしっかりバッチリな手腕辣腕にああちょっと絶句。
チリソースのように刺激的。やはり気になる頭の中身。おそらく地球上のどこにもない植生で、図鑑の編纂者をあざ笑う動植物が、凡庸な発想を主食として珍妙な排泄をするのだろう。コピ・ルアクは脳内産!
卍『百年の孤独』ガルシア・マルケス 鼓直訳 卍
名作名作だとへえそうなんすかじゃあちょっくら読んでみますわとはいえこういうのはたいてい難解かつ晦渋でおれのような最終学歴保育園なやからには……っていうのをすべて打ち砕く面白さ。
なにもノーベル賞やら文学やらというのは理解しがたき文章ばかりでないってこと、それを知る契機。ってなわけで最後に紹介。超有名ってことは常識。
それでも知ったのはせいぜい一年前そこら。ああわが蒙昧をみなで嘲り蹴り笑え。石を投げよ巷の石はみな致命傷。コツンコツンと生命の割れる音……
なんてのはどうでもよく、とにかくこの作品はめちゃくちゃ面白い。名作名作名作名作とどこでもかんでも言われるだけは、ありとあらゆるサイトに登場するだけはあると心得る。
もちろんすべてを理解できたとは思わない……そりゃそうだ。色々とその国の歴史的背景やらなんやらが込められているそうだが……ま、それら全く知らずとも、面白さを感じるのに能力値不足ということはない。名作の懐は海洋のように。
まあ、おおむねこんなもん。長文を書くのは疲労をともなう一大事であり、きっと明日には全身全霊筋肉痛に見舞われているはず。全身はともかく全霊の部分の筋肉痛は、これは一体どうやったら治療できるのか? 霊障のたぐいだとして近場の神社に駆け込むべきか?
名作というもの検索すればいくらでもおすすめしている幾万のサイトを発見できる。こんなんよりそっち見たほうが百倍どころでない利益を得られるはずだし、そうしなかったあなたはちょっとご愁傷さまを言わざるを得ない……とはいえ、本当に読んでくれたのならありがとう。
本当に、価値観やらなんやら、自分がためこんだ腐敗臭のする常識固定観念先入観偏見差別にソーラレイを照射するような、そういう作品のなんと多いことか。本当はもっともっと書ける書くべき名前というのもあるにはあるが、いい加減に指先の冷えがひどいのでここで去る。
間違いなく、価値のある作品というのは存在する。いつの日かまたそれを発見できることを祈念して、ああ、これけっこうまともな締め方じゃないの?




