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妻としてのけじめ

 イーオインは私を洞窟に残したあの日のままだった。

 自分一人で全部背負い、私に逃げろと言ったあの日のままだ。


 私は彼と一緒に走りたいだけなのに。


 たった一人でだれにも頼らず、私の父や兄の慟哭までも受け止めて、それらを昇華しようとするなんて。


 頑固なだけの男を止められることが出来ないのならば、影となって手伝うしかないだろう。


「あなたは向かうべきところに行きなさい!私には私を守る剣がある。」


 遂にやってしまった。

 私は彼の手を振り払った。


 そう、私は自分を守れるようになったのだ。

 だから、あなたはやれるだけやって、暴れて、そして、シュエットなど忘れて本来の人生を歩めばいい。


「畜生!その台詞は俺のトラウマなのに!」


 え?


 彼の言葉に慌てて崖下の彼を探したが、彼は既に私の言葉を実践していた。

 敵の親玉がいるだろう崖に、スフェールと一緒に上っているのだ。


「なんて、直情馬鹿!どういう意味なのか言ってよ!」


 ヒヒン。


 背中に生暖かいものが当てられ、慌てて振り向けばそれは困った顔をしたブケパロスだった。


「どうしてあなたがこんな所に。」


 私はルーカスに頼んでいたミリアの事が頭に浮かび、ブケパロスに飛び乗るとブケパロスにミリアのところまで走らせることにした。

 私も私がやらなければならないことをしなければ。

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