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お前らはシュミットでさえない

「――ララを殺したのはお前らか。」


「知らない。だれ、それ。」


「れんしゅうじゃない?れんしゅう。」


「エラリーが使い終わったからいいよって、いつもの奴じゃない?」


「だから、どれだって。」


 子供のような声で囁く三人組にイーオインが茫然と立ち尽くすと、彼等はマントを閃かせて一斉にイーオインに襲いかかってきた。


 その体の小ささにそれらが本当に子供かもしれないと思いながらも、彼は一人目を振り払うように切り捨てた。

 すると、倒れる仲間を台にして飛び上がった二人目がイーオインの視界から消え、しかし、イーオインは惑わされるどころか足元に切りかかって来た三人目を上から叩き切り、その刃をすぐさま跳ね上げて大きく振った。


 彼の頭上に切りかかって来た二人目はその刃を横腹に受けて地面に落ちたが、それは手遅れな自分の人生を嘆くどころか子供のような声ではしゃぎながら死んでいった。


「シュエットであることを誇りで生きて来たんだ。俺達はこのまま死ぬさ。」


「お前らはシュエットでさえないだろう!」


 ざざざと一斉にシュエット達が動き出し、彼等は多勢に無勢でイーオインに切りかかるのだと彼は覚悟を決めた。


「お前らはシュエットでさえないよ。ただの人殺しだよ。畜生。ルーカスだったらお前達を説得できたのだろうな。済まないね、こんな口下手な領主で。お前達を立ち直らせるどころか、切り捨てる事しかできない。」


 剣を構えたイーオインに向かって飛び込んできたのは、逃がしたはずのスフェールである。

 月の灯りを受けたスフェールは完全な銀色に輝き、剣を構えていたはずの彼は無意識に構えを外すとスフェールの首に抱き着いた。


「一緒に死んでくれるのか。うれしいね。俺にはお前しかいないものな。」


 愛馬と今生を懐かしむ彼に切りかかって来た無作法者は、彼に邪魔な葦のように簡単に斬り捨てられた。


「やるよ。」


 イーオインは馬に飛び乗ると、まずは兵を率いる頭目が良そうな小高い丘へと馬を走らせんと馬をその方角になるようにと旋回させた。

 彼が指揮を取るならば、見通しがよく、一番敵から優位に立てる場所にする。


 ぱし。


 スフェールの足すれすれの大地に穿たれた矢は意外と太く、この太い矢に射貫かれればイーオインどころかスフェールでさえ致命傷になりそうだ。

 彼は矢を射って来た方向へと馬を向けようとして、信じられないものを見た、と動きを止めた。


 彼等を狙っていた射手を、彼の銀色に輝く妻が流れる動きで二人も斬り殺した光景である。

 そこから彼女は右へと鳥のように飛び上がると、その位置に潜んでいたもう一人の射手を斬り殺したのだ。


 しなやかで踊るような動きにイーオインは感嘆していたが、彼の妻は夫へ一瞥も与えることなく大声で叫ぶだけであった。


「あなたは向かうべきところに行きなさい!私には私を守る剣がある。」


「畜生!その台詞は俺のトラウマなのに!」


 イーオインは剣を鞘に納めると手綱を握り直し、スフェールを元々の狙いへと走らせた。

 彼の意思はこのような茶番をすぐにでも止めさせるべきだと、それのみである。

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