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二人の約束

「だから、私は誰にも欲しがられないいらない子なの。」


「そんなことないわよ。私こそミリアだったらっていつも思うもの。アイボリーは確かに素晴らしい人よ。でも、私はミリアにこそなりたいわ。」


 私は親友の悲しみに言い返しており、もう、涙も出そうだったかもしれない。


「私なんて、イーオインが可哀想って宮廷で言われているというお荷物よ。」


「え、どうしたの、お荷物って、そんな。ちょっと。」


「だって、私はどこもかしこも灰色の、美しくない上に貧乏女男爵よ。」


「いいじゃないの。その銀髪は良いなって、私は思っていたんだから!それに、イーオインは名ばかり男爵なんでしょう。大丈夫、気にしない!」


 私はミリアに慰められながら、ミリアは一言余計な所が天使たり得なかっただけでは無いのかとチラリと考えた。

 考えて、自分を慰めている友人にまで辛辣な事を考えられるなんてと、本気で自分はろくでもない人間だとがっくりするしかなかった。


「私とイーオインは白い結婚だったから、私は妻どころか、婚約者でもないわ。彼はそのことを忘れている。伝えない私は嘘つきだわ。」


「イーオインはそのことを伝えたら婚約を普通にし直すし、結婚だってその日のうちにしてしまうでしょうよ。そんなの気にする必要が無いわよ。あの直情一本男は、その日のうちに襲ってくるわよ。いいの?それで?」


 確かにとクスリと笑い声も出たが、私は彼の義務感ではなく愛情が欲しいのだ。


「彼は兄との遺言を守らなければと思っている。私は彼を縛りたくないの。」


「あなたはなんてお馬鹿さんなの!」


 彼女のこの言葉を聞いたのは、私には二度目だった。

 召使の時に、彼女は私にお友達になりましょうと言ってきたのだ。

 その時に、私は召使だから恐れ多すぎると辞退した時にも、彼女にそう言って叱られたのだと思い出した。

 しかし、ミリアはその時とは違う続きも叫んでいた。


「縛り付けるぐらいいいじゃない!縛られたいって思っている人間も世界にはいるはずなのよ!」


「いやよ!縛られてそばにいるのは、私を好きだからじゃないじゃない!」


 反射的に返してしまったのは、私の本心だった。

 あぁ、私は何のしがらみもない状態でイーオインに傍にいて欲しいのだ。

 私はミリアにぎゅうっと抱きしめられた。


「君を縛りたくないと言って離れちゃうなら、縛られていたいって人もいるでしょう!嫌だって言うまで縛り付けておけばいいじゃないの!」


「嫌われたら生きていけない!」


「どうでもいいって思われる人間よりいいじゃない!」


 私達は抱き合ったま叫び合い、終いにはわぁわぁと泣き出した。

 一人は大好きだからこそ諦めなければならない男性への恋心に。

 一人は愛されたことのない自分自身の哀れさに。


 そして抱き合って、私達はいつも一緒にいようと約束しあった。

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