14/43
消えた女と馬
「え、嘘。」
困ったのはル―カスであった。
十二名の復讐に燃える盗賊を一人で始末して疲れ切っている彼に追い打ちをかける様に、彼に感謝するべき女性の姿は無く、そればかりか、彼の愛馬が姿を消してしまっていたのである。
「あの、馬鹿馬。」
愛馬の鐙の跡を見れば、彼の愛馬がかなりの勢いで駆けて行った事は想像するまでも無く、否、物凄く嬉しそうに駆けて行ったに違いないとル―カスは忌々しく確信していた。
イーオインのスフェールがイーオインと夫婦のような呼吸を見せているのとは違い、ルーカスの馬は反抗期真っ盛りの青二才なのだ。
意味もなく走り出したくてうずうずしており、そのような機会を与えた相手には、ルーカスという主人の存在も忘れて付き従うに違いないと、ルーカスはウンザリしながら認めるしかない。
「あーあ。どうしてあんな馬を買っちゃったかな。」
顔にかかる髪を煩そうに後ろに流すと、彼は馬が駆けて行ったであろう王都への方角ではなく、盗賊の巣へ引き返す事にした。
「駄馬でも馬は何頭かいるはず。馬泥棒は縛り首、か。まったく面倒なことだよ。」




