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予想外続き⑦

「村人達の話は意味不明なものばかりでした。でもなんとか繋げてみると、どうやら魔女として拘束されている少女と一緒に食事した者が……村長の息子なんですが、食事を終えて直ぐに悪魔に連れ去られ、地獄の業火で身体を焼かれたらしくてですね。そう仕向けたのが、捕まってる少女だと主張してるんです」


 想像していたよりも、オカルティックな内容だったため、マルゴットの顔をジルはポカンと見つめる。


「まぁ……」


 夜に聞く様な話ではなかったと、ジルは少々後悔した。眠れなくなるかもしれない。


「村長の息子が好意を寄せて、嫁にしようとしてた相手がその少女だったみたいなんです。でもその息子は普段から少女に冷たくあしらわれていたらしいので、一部の村人の話だと、どうして2人が食事をしていたのか疑問だと……」


「結婚相手はちゃんと選びたいものだもの。合わないと思えば、拒否するのも当然だわ」


「ジル様が結婚に対して不信感を持つのは良く分かります……」


 ジルは未だに大公と婚姻関係にある事を思い出し、内心溜め息を吐いた。


(大公に違和感を覚えた時点で修道院にでも行けばよかったのよね。どうせ私みたいな女、恋愛なんか出来っこないんだから。はぁ……)


 改めてつまらない気持ちになりながら、夜食を平らげていく。


「何となく……、その少女は村長の息子から魔女に仕立て上げられたんじゃないかなって思ってます。一緒に食事した時に酷くフラれて、その腹いせに一芝居うったのかも……。野ばらの会では悪魔はいるものだとされてますけど、呼び出せるのは高位の術者だけです。それに悪魔のプライドを考えても、その辺の村人をどうにかするためにわざわざ呼び出される事なんて無いですよ」


 悪魔のくだりはさておき、マルゴットの考察に「ふむ……」と頷く。ただ、恋愛をした事のないジルは好きな相手を陥れる感覚にあまりピンと来ない。


「求婚を断られると、そこまで恨みを抱くものなの?」


「今度大人向けの恋愛小説を読んでみたらいかがですか? 人間の行動パターンとして中々興味深い事が書かれていますよ。嫉妬に狂って殺人を犯したり、嫌がらせをしたりとか、結構凄いみたいです」


「大人向けか……。マルゴットは読んだことがあるのね?」


「媚薬の作成を依頼されることもあるんですけど、どういう時に使うものなのかと気になって……」


 そう言うマルゴットの顔は赤く染まる。媚薬という物が何なのか気になるが、彼女の様子を見ると質問したら可哀そうな類の物なのだろう。気になる心を抑えつつ、ジルは納得した風に頷いた。


 ジルはマルゴットの一連の話を聞いて違和感を覚えた点を伝える事にする。


「でも、その村では魔女狩りはわりと継続して行われているのよね? その少女が魔女とされているのは村長の息子との件があったからだとしても、それ以外の女性は本当に魔女だったのかしら?」


「私がブラウベルク帝国に来る前の話になるので、会員の方に聞いただけなんですが、やはり何の力も持たない人間の様だったと言っていました。村の中で偶然何か良くない事が続くと、生贄的に普通とはちょっと違う女性を殺すのかと……」


「ねぇ、マルゴット。以前私に、最近村で流産等が続いていると言っていたわよね? 魔女とされていた女性たちに何の力も無いなら、一体どうして良くない事が続くのかしら? 過去その村で魔女狩りが行われた時期とその原因をまとめてみたらどう? そうしたら何か共通する点が分かるかもしれないでしょう?」


 ジルの提案に、マルゴットは思案顔になる。


「そうですね。野ばらの会の資料室で大陸全体の魔女狩りのまとめ資料は見た事があるんですが、あの村の出来事だけをまとめた物は無かった気がします。一度私なりにまとめてもいいかもしれません」


「何か分かったらいいわね!」


「はい。あの……、ジル様、また相談させてください。野ばらの会だけで魔女狩りについて話をしようとしても、村人の魔女に対する差別意識に対しての感情論ばかりになってしまって、解決に結びつかないんです」


 ジルは魔女ではない自分が頼りになるかしら? と思わなくもなかったが、真っ直ぐ見つめるマルゴットの為に頷いた。


「分かったわ。ちゃんと力になれたらいいのだけど……」


「私の主様なのですから、きっと大丈夫です」


 ジルは半笑いで、ミルクパンに牛乳を注ぎ、火にかけた。

 揺らめく火を見つめながら、マルゴットに聞こうと思っていた事を思い出す。


「ねぇ、マルゴット」


「何ですか?」


「幻覚を見せる呪い? ってあるのかしら?」


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