ビジネスチャンス
「ようやく鉄道事業が軌道に乗ったぞ」
「お父様もたまには良いことをなさいますのね」
喜ぶテオドールを見て、マーガレットが呟いた。
マーガレットの家は貧乏である。
テオドールは一応貴族ではあるが、爵位は騎士爵…一代限りで領地をもたない貴族。
そのため領地収入はない。
しかし今は、テオドール、ダリア、マーガレット、リラまでが王城で働いており安定した固定収入は望めるのだ。本来ならば使用人の1人や2人や3人雇えるくらいには…
その原因の一つはテオドールの投資癖である。給料全て注ぎ込む…今回は給料を前借りしてまで注ぎ込んでおり(ロザンナのおかげで、準備金という名目で前借をなかった事にしてもらったが)、前借の話を聞いた時にはさすがのマーガレットも殴ってやろうかと思った。
親には頼れないので、マーガレットとリラの貰った給料は一部は食事代として家に入れるがほとんどを給料天引きの財形貯蓄に割り当てている。結婚資金として。老後では無いんだからね!
この家の経済は、ダリアの給料で回っている。
ダリアとテオドールの結婚は、王妃の口利きである。
妻を亡くし、小さい子供を抱えた仕事以外はダメ人間を見て、このままじゃやばいと思った王妃が早急に相手を探すミッションを立てた。
そして、早く夫を亡くして、二人の子供を抱えてたくましく生きていたダリアに白羽の矢が立った。
「まあ、2人も3人も一緒ですよね。4人になると辛いので、テオドールさんはちゃんと自分の食い扶持を稼いでくださいね」…というのがダリアの返事だったとか。
その前に、マーガレットやリラが食費を入れるようになってしまったのだが。
ある日、王城では以下のような話し合いがおこなわれた
「鉄道事業が軌道に乗ったら、チャンスです」
「どういう事だ」
「これからは観光です。この国の王都を観光地にして外貨獲得を図りましょう」
「しかし、どうやって王都に客を呼ぶんだ」
「王子の結婚です」
「いや、さすがにロ(rqはまずいだろ」
「なんの事かな」
「そこを美談にするんですよ。身分の差を超えたラブストーリー、お涙頂戴要素も欲しいですね」
「そうですね。継母と姉たちにこき使われた話をいれますか」
マ「私も職場でこきつかわれてますが…」
「パーティーに連れて行って貰えなかったですしね」
マ「パーティーを盛り上げる為に道化役している姿を思春期の妹に見せられないでしょ」
「他にもなんか欲しいよなぁ」
リ「ロザンナ、慣れない頃はよく頭に灰をくっつけたわね。一生懸命、竈の炭を吹くものだから、可愛かったわぁ」
「灰かぶり!それだ!」
マ「先に言いますけど、16歳になるまでは結婚は許しませんから」
「小姑怖い!」
「教育係としても、仕上げるには3年かかりますから。ちょうど良いのでは」
そして、ねつ造されたシンデレラストーリーによってお城は観光名所となり、
シンデレラストーリを基にした舞台も有名になり、
サービス精神旺盛な姉たちの愉快なダンスは舞台の目玉となったのです。