靴が勝手に戻ってきましたの
我が家の朝は早い。
騎士の父さまは鶏の鳴き声で起きて鍛錬+水瓶に二日分の井戸水を入れる。
母さまとリラ姉さまが朝ごはんを作り、マーガレット姉さまと私はお洗濯。
いつものように朝ごはんを食べていたら、門を数台の馬車が通る音がした。
父さまが怖い顔をして、私にクローゼットの中に隠れるように言った。
お客様はどうも男の人らしい、靴…ぴったり?…なんか言ってる。
「わかりましたわ。この靴がぴったりはまる女性という事ですね。では恐れ多くも私から試させていただきます」
ダリア母様の声が聞こえる。
「ちょっと、いくらなんでも」
「失礼な!私だって女です」
「もしぴったりあったらどうするんですかぁ」
「その時にはもちろん今の夫を捨てて、全身全霊で仕えさせていただきますわぁ。慰謝料はいただきますけど。イヒヒヒヒ~」
「どさくさに紛れて、靴を折ろうとするのやめて!」
「次は私ですね。では…あら?寒すぎて皮が縮んでるみたい。伸ばした方が良いわね」
マーガレット姉さまの声が聞こえる
「マーガレットさん、暖炉に投げるのナシですから!」
靴?慰謝料?うちはすっごく貧乏だから確かにお金はほしい…
「今度は私かしら。あら残念入らないわ」
「リラさん、なんで外に捨てようとしてるんですか!」
「おほほ、ごめんなさい。我が家の人間じゃなかったみたいね。」
リラ姉さまのコロコロ笑う声が聞こえる。
「いや、この家にはもう一人娘がいるだろう。テオドール、そこを動いてもらおうか」
先ほどの人とは違う、張りのある言葉が聞こえる。
「申し訳ありません。殿下、動きたいのはやまやまなのですが持病の腰痛が、イタタタタ」
「テオドール、そこを動いてくれたら前借していた給料」
「はい!すぐに動きます」
「お父様!酷い!」女性陣の声がはもった。
扉が開き、そこには満面の笑顔のエドさんが立っていた。
あれとあれよという間に、靴…昨日落としたはずの靴を履かされ、ラッパが鳴って
エドさんに膝抱っこされて馬車に乗っていた。
エドさんは本名はエドワードさんで、王子様で…
え?私、王子様の妻、お嫁さんになるんですか?