私、目を疑いましたの
かっこいい騎士様にダンスホールに案内された。
ダンスホールの中は人・人・人…王都中の人が集まったみたい。
特ににぎやかな一角に近づいてみる。
小柄な私は、人の間をすり抜けるのは得意なのだ。
人の波を抜けた先では、20名ぐらいの若い騎士が警棒を片手に一糸乱れぬ様子で踊っていた。
あまりのかっこよさにため息をついていたら…
突然、軽いテンポの楽しい曲に代わり、姉たちが飛び出してきた。
私は目を疑わずにはいられなかった。
姉たちはダンスの名手である。
パーティーの前に必ずダンスの先生を呼んで練習をしている。
息を呑むくらい綺麗に踊るのだ…家では。
だが今の姉たちは、おどけた表情で、足をあらぬ方向に伸ばしたり、
ダンス相手の騎士の足を踏んで大げさに飛び跳ねてみたり…
姉たちを見て笑う周囲にショックを受けた私はその場から逃げた。
広間を抜け、廊下を走り…気づいたら庭の噴水の前に立っていた。
そこには綺麗な男の人がいた。男の人は私を見て驚いたような顔をした。
話しかけられて、今見たものを説明したら、男の人はしばらく考え込むような顔をして
それから綺麗な笑顔で笑った。
綺麗な男の人、エドさんにダンスを申し込まれて会場に戻った私は、みんなに見守られてくるくる踊っていた
「見て、エドワード様が踊ってるわ」
「お相手の方はどなたかしら、とても綺麗な女の子ねぇ」
「でも、若すぎない」
「まさか、王子が今まで結婚しなかったのって」
「ロ…(rw」
周囲でひそひそと囁く声が聞こえる
「姉さん、あれ、ロザンナじゃない」
「ちょっとどうして来てるのよ」
姉たちの声が聞こえる。
手を放すタイミングが分からないまま繰り返し踊って、踊りつかれた私の目に入ったものは
エドさんの後ろで、鬼の形相で親指を自分に向けて「こっちこい」と口パクするお母様の姿。
あまりの怖さに私は、その場から逃げ出しました。
エドさんが追いかけてきたけど、小さいので私小回りには定評あるのです。
途中で靴が脱げてしまったので、片足裸足で駆け出したところで、姉たちに捕獲され家に帰る馬車に放り込まれました。
お父様とお母様が運転する、姉妹3人だけの馬車の中にはとても気まずい空気が流れていました
半分悟り顔のマーガレット姉さまと打ちひしがれた顔のリラ姉さま…
「ねえ、あれ、みたの?」
「うん」
馬車の隅にはいつものパーティー料理の箱とワインが3本乗っていました。
家に帰った私たちは何事もなかったかのように、
みんなでパーティー料理を食べました。