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7人の僕が世界を作り直すまで  作者: セリシール
1章『集え彦星、女神の下に』
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1章8話『わたしのかぞく(後編)』

「アルタイルの…………様子が変?」


 シュルバはヒロキの戦闘の補助に必死だった為、アルタイルを見ていなかった。

 しかし改めてアルタイルを見てみたがどちらにせよシュルバにはおかしな所は見当たらなかった。


 あると言えば、目の前の状況全てが一般人にとってはおかしな所だが、中庭の様子を見れば恐らく一般人でも頷けてしまうだろう。


「見た感じ、おかしな所は見当たらないけど…………」


 シュルバは首をかしげながらタクトに言う。

 タクトはシュルバの発言に特に動じることも無くモニターを指差した。


「今回のアルタイル、さっきからずっと空を見上げてないか?」


 タクトが指摘したのは、シュルバが自分の中で解決してしまった至って単純明快なあからさまにおかしな所だった。


「でも、中庭にあそこまでリアルな人形を放置するぐらいの人だしずっと空を見てても不思議では無いんじゃないかな?」


 シュルバは冷静に物怖じせずタクトに向かって自分の意見を述べた。

 そこにタクトは決定的な発言をする。


「それだけならまだ良いんだ。でもコイツに関しては見てる見てないとかの次元の話では無くなってくるんだよ」


 そう言うと、タクトはモニターの方のマウスを動かして数回クリックした上でシュルバにモニターを見せた。


「これは…………」


 モニターに映るのは不自然な程目まぐるしく回るヒロキ達の戦い。

 その画面の奥に映るアルタイルは空を見上げている。


「コイツ、こんなに長い時間ピクリとも動いていないんだ」


 シュルバは絶句した。

 タクトはモニターの映像を巻き戻して3倍速にして流したのだ。

 それなのにアルタイルは瞬き1つせず、延々と空を眺めていた。


「これ、一体どういう事なの?」


 目前の現象に混乱するシュルバの力がまるで入っていない質問にタクトは回答する。


「こういうことだよ」


 タクトはまたもやモニターのマウスを動かして数回クリックをした。

 映し出されたのはアングルを変えた別の映像だった。


「これは僕もさっき気がついたんだけどね」


 シュルバはその映像の中の一瞬の変化に気づくことが出来た。

 全ての謎が解決したシュルバはこんな事にも気がつけなかった自分に対する恥ずかしさで本能的に笑ってしまった。


「なるほど………と言うことはちょっとした作戦を立てないと」







「…………………っ!」


 血塗られた刀に太刀がギリギリと押し付けられる。

 力が強い。

 今にも押し負けてしまいそうだ。


 何とかペルセウスの猛攻を振り切ったヒロキは一度距離を置いて様子を伺うことにした。


「はぁ…………はぁ…………」


 ヒロキは酷く息切れし、腕にも脚にも力が入らない。体はもう活動限界を示しており、刀ですら今この瞬間にも手からこぼれ落ちそうである。


 それでももの凄いスピードで近づいてくるペルセウスの集団にヒロキは何とか咄嗟に対応し持ち応える事が出来ていた。


 ヒロキはペルセウスの攻撃を一つ残らず完璧にガードし、隙を突いて相手の体制を崩す。そういった戦法で戦っていた。


 やろうと思えば姉の力を借りてペルセウスを一掃することも出来るのだが、あまりにも体に負荷がかかるので今のヒロキには使える代物では無かった。


 もはやこちらから攻撃を仕掛ける程の体力は残っておらず、カウンターを打つか、体制を崩した隙に刺し殺すかで何とかペルセウスを倒して来れていた。


 が、果てしない速さで動く太刀の隙間から見えたのは今回のアルタイルを抱えて空へと逃げていくペルセウスだった。


 それに合わせて全てのペルセウスが天空へ向かって走り出し、いつしかその姿は見えなくなった。


「ヒロキ、今だ」


 タクトの指令を受けたヒロキは真っ直ぐに人形の塊に向かっていく。

 そして、そのうちの幼い女の子の人形の首を刀で跳ねた。

 人形からは血が大量に噴き出し、ヒロキに返り血としてかかった。

 ヒロキはタクトの完璧すぎる作戦に驚嘆しながら、その刀で自分の腹を突き刺した。

 同じようにヒロキの腹からも勢い良く血液が飛び出し、中庭は血まみれになってしまった。


 しばらくして転生機の中で目を覚ましたヒロキの目線の先にはさっきの幼い少女の人形と会話するタクトとシュルバだった。


「どうして、ルカが人間だってわかったの?」


 ルカと名乗る少女は無表情のまま2人に質問をする。

 シュルバは口に人差し指を当てて歯を見せて笑った。

 それを見たルカはいまいち納得いってない様子だったが、それ以降しつこく聞いてくることは無かった。


「あの人形は君が作ったんだよね?一体何の為に?」


 タクトはルカに目線を合わせてずっと分からなかった疑問を問う。

 この後に、聞かなければ良かったと後悔することになるとも知らずに。


「ルカのママはね、海で溺れて死んじゃったの。だからね、ルカ、ママがいなくても寂しく無いように、お人形を作ったの。それをパパとお兄ちゃんにも見せたらね、2人とも上手だってルカの事褒めてくれたの」


「それが嬉しかったからね、今度はパパとお兄ちゃんのお人形を作ってあげたの。それをまた見せたの。そしたらね、2人とも怖い怖いって言ってルカと遊んでくれなくなったの。ルカのパパとお兄ちゃん、悪い子になっちゃったの」


「ルカには良い子のパパとお兄ちゃんしか要らない。だから、そんな悪い子なパパとお兄ちゃんをルカ、ママの所に送ったの」


 流石のタクトも、これには言葉を失った。

 オカルト系の話が苦手なシュルバに関しては今にも恐怖で泣き出しそうになっている。


「君には、僕達の手伝いをしてもらいたいんだ」


 長い沈黙を破ったのはタクトだった。


「お手伝い?」


 ルカは少し期待しつつも首を傾げてきょとんとしていた。


「あぁ。ルカと僕達で新しい世界を作り出すお手伝いだ」


 ルカはタクトの言っていることの意味が良くわかっていないみたいだ。


 みかねたアテナがルカの背後にスッと現れ、ルカに大まかな事情を説明する。

 流石神。ルカは一発で話の流れを理解してくれた。


「そういう事なら、ルカがんばるー」


 タクトはルカの頭を撫でて、ニヤリと笑った。


「でもルカ、何をすればいいの?」


 一同は顔を見合わせてはっとする。

 そういえばタクトがルカを仲間にした理由は一切聞いていない。

 一体何の役に立つと思ってルカを仲間にしようとしたのだろうか。


「ルカにはこの船の奥の部屋を貸してあげる。ルカはそこで人形だったり、悪い子を退治するための武器を作って欲しいんだ」


 ヒロキは少し反論する。


「おい、武器はともかく人形なんか作らせてどうするつもりなんだ?」


 タクトは見下したかのような目でヒロキを見て


「まぁ見てなって」


 そう言った。





 それから何日か立った。


「出来たよー」


 奥の工房から現れたルカから人形を受け取ったタクトは頭にあるものを埋め込んだ。


「ひゃぁ!」


 シュルバは珍しく女の子らしい声をあげた。

 人形は限りなく人間に近い動きで歩き、船の中を探索しだした。


「タクトさん、これはどういうことですか?」


 アテナは冷静に問う。


「人形の中にAIを組み込んだだけだ。乗組員として働いて貰う為にな」


 その2日間は、ルカの人形にタクトがAIを組み込み、シュルバがそれを見て悲鳴を上げると言うのが船の中で繰り返し発生した。

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