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7人の僕が世界を作り直すまで  作者: セリシール
4章『崩れゆく柱』
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4章12話『休息』

 カランコロン。

 アルトとの会話を終えたシュルバはカフェスペースへと戻ってきた。その頃には既に他数人が朝食をとっている。


「あ、シュルバっちおはー!」


「アリスちゃんおはー!」


 こういう時真っ先に声をかけてくるのはアリスだ。彼女の底抜けな明るさは見ていて微笑ましい。


「シュルバにしては……………起きてくるのが遅いな………………」


「ちょっとアルトと話しててさ、気にするほどでもないよ」


 レイナは物静かで口数も少ないが、仲間の事を大切に思っている優しい人だ。貧民層ゆえに苦しみも分かっているからこそ、仲間には優しく接してあげようというレイナなりの思いやりだろうか。


「さて、次の作戦立てないと…………」


 シュルバがノートPCを開こうとすると、すかさずアリスが言った。


「ねぇシュルバっち、最近疲れてない?」


 アリスに言われてハッとする。


「疲れ…………てるのかな?」


「だって目の下、クマすごいよ?最近寝れてないんじゃない?」


「言われてみれば………確かに寝てないかも」


「でしょー?最近忙しかったけど、このままじゃ身体もメンタルもボロボロになっちゃうよ?」


「うーん…………」


「アリスの言う通りだ…………たまには休息をとった方がいい………」


「……………そうだね、そうしよっか」


 シュルバはノートPCを脇に抱え、2人に微笑んだ。2人は安心したように頷く。


「あっ、じゃあさ」


 シュルバはふと何かを思いついたように、目を光らせて言った。


「3人で、どっか出かけない?」


「おー!いいねいいね!」


「私は別に構わないが…………大丈夫なのか?睡眠をとれてないんだろ…………?」


「そのへんは大丈夫♪探偵って割と寝れない仕事だからね〜。徹夜明けゲームとかもよくやってたし」


「じゃあ、今日は女子会だね!準備しなきゃ!」


 アリスは満面の笑顔でカフェスペースを後にした。


「行っちゃった。アリスちゃんはこういう時の行動力すごいからね〜」


「本当だ…………」


 レイナはマスクの下でにっこりと笑った。


「私達も、準備しよっか」


「あぁ………」


 そして2人ともカフェスペースを出て自室へと向かった。


 シュルバは自室のクローゼットを開き、その中の服を1つ1つ手にとってみる。それを身体に合わせ、時折首を傾げながら他の服を取り出す。それを何度か繰り返し、シュルバはこれだ、という組み合わせを見つけ、すぐさまその服に着替えた。

 アリスも同様に、自分のクローゼットの服を選び納得がいく服に着替える。こうして3人でどこかへ出かける事は滅多にないので服はしっかり選ばないと、というアリスのプライドだ。

 それとは対称的に、レイナはクローゼットを開くなり適当に手にとった服にさっと着替えた。というよりも、レイナ自身洋服に興味がなく、そこまで多くの服を持っていないのが現状だ。ずっと黒や灰色のパーカーを着ている。


 周りとは一足早く準備を済ませたレイナは、すぐに転送装置へ向かう。


「あれ?レイナどうしたんだ?バックなんか持って」


「休息がてら…………シュルバとアリスと一緒に街へ行くことになって……………今から向かうところだ………」


「そっか、楽しんで来いよ」


「うん………」









「あ、きたきた」


「ごめーん、服選ぶのに時間かかっちゃって」


「いーのいーの、じゃあアリスちゃん来たし行こっか♪」










 シュルバ達が訪れたのは現代の日本。大都会、とまでは行かないがそれなりに発展した街である。街の中には様々な店が並んでおり、他国出身のアリスとレイナにとっては興味深いものが多かった。特にアリスに関しては、さっきからずっと興奮しっぱなし。事あるごとに何かを指差してはしゃぐものだから、なぜ疲れないのか不思議なくらいだ。むしろ見ているシュルバの方が気疲れしていた。


「とりあえずまだ行く場所決まってないし、適当にお昼食べながら相談しよっか」


 シュルバのその提案を受け、3人はファストフード店に入っていった。


「はい、2人とも♪」


 シュルバは黒いお盆に乗ったハンバーガーやフライドポテト、ドリンクなどを2人に渡す。


「ありがと、シュルバっち!」


「悪いな…………シュルバに頼んでしまって………」


「気にしないで、ここの事はある程度知ってるから♪」


 他国出身の2人はファストフード店での注文の仕方を知らない。そのため、シュルバが代わりに2人の分も注文してあげたというわけだ。


「で、こっからどこ行く?」


「どうしよー、アリス行きたいとこいっぱいあるなー」


「私は…………2人が行きたいところに連れてってもらえればそれで異存ない」


 3人とも特に何も考えてなかった為、話し合いが難航する。と、思われた。

 シュルバはレイナの身なりを見る。彼女はいつも通りの黒パーカーとマスク、それに短いジーンズをはいていた。シュルバはこれを見て、アリスの方を向く。アリスもどうやらシュルバと同じ意見らしく、2人はアイコンタクトだけで行く場所を決めた。


「じゃあ、洋服屋行こっか♪」


「さんせーい!」


「洋服屋………か。了解した」











「みてみてー!可愛くない?」


 試着室から出てきたアリスは、宝石風の髪留めに加え、白色のフリルブラウスと黒色のロングスカートを身につけている。サイズは少し大きいようだが、それがまたアクセントになっていて非常によくアリスに似合っている。


「おー!似合ってる似合ってる!」


「えへへー、やった!」


 レイナは2人の様子を見て、なんだか安心したような気分になった。いつもは神と殺伐とした殺し合いをしている2人がこんなに楽しそうに笑っているのを見ると、不思議と嬉しくなった。


「次シュルバっちね!」


「うん、待ってて♪」


 数分後、シュルバはいつものリボンに加え、白を基調としたシャツの上から赤と黒のチェック柄の上着を羽織り、黒色で無地のミニスカートをはいて試着室から出てきた。


「こんな感じかな?」


「すごーい!シュルバっちかーわいいー!」


「いえーい、私かーわいいー!」


 2人はキャッキャと手を合わせながら飛び跳ねてる。レイナは服には興味がないが服の良さなら分かる。レイナの目にも、その服を着るシュルバが可愛く写っていた。同時に、その服を着た自分の姿が頭に浮かんだ。


「じゃあ次!」


「あれ…………?2パターン買うのか………?」


「え?何言ってんのレイナちゃん♪」


 シュルバはレイナに買い物かごを押し付けた。


「次はレイナちゃんの番だよ♪」


「え……えぇええぇえええ!!?」


 レイナは顔を真っ赤にしながら自分でも想像がつかないような声を上げた。


「アハハッ!レイナっちそんな可愛い声出せるんだ!いっつも低い声なのに、今すごい女の子みたいな声だったよ!」


「わ、わわ私も着るのか!?」


「もちろん♪むしろ私とアリスちゃんはレイナちゃんに服を買わせるためにここに来たんだよ?」


「うぅ………でも…………」


「それにレイナちゃんが可愛い服着てるとこアルトが見たら、アルト、レイナちゃんの事もっと好きになってくれるかもよー?」


「ぅぅ………………」


 レイナは顔を真っ赤にして2人がレイナの為に選んだ服の入った買い物かごを受け取り、試着室へ入る。


「うぅ………恥ずかしぃ…………」


 試着室から出てきたレイナは鈍色の肩出しトップスの裾を押さえ、恥ずかしそうな目で2人を見る。その2人はレイナの表情を見てニヤニヤしている。


「今のままでも十分可愛いけど、やっぱりこれが邪魔かな♪」


 シュルバはレイナに近づき、マスクを外す。


「ちょっ………シュルバ、それはダメ………!」


「なんでさー、プルンプルンの可愛い唇してんじゃない、羨ましいわ全く♪」


「〜〜〜〜!」


 レイナは手で顔を覆い隠す。


















「あっあの……………」


「ん?どうしたレイ…………おぉ」


 帰宅後、レイナは先程購入した服を着てアルトの部屋を訪れた。もちろんマスクも外して、だ。


「えっと…………その…………」


 レイナは斜め下を見ながら、小さく言った。


「どう…………かな…………?」


 アルトは今まで見たことのないレイナの様子に困惑しながらも、フッと笑って返した。


「よく似合ってるよ」


「………………ありがとう」


 レイナはアルトに近づき、彼の胸に顔をうずめた。

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