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7人の僕が世界を作り直すまで  作者: セリシール
4章『崩れゆく柱』
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4章7話『氷漬けの1回目』

「よしっ!全員揃ったね♪」


 早朝、最高管理室に集められたクロノス含め計7人。それぞれ緊張した様子でなんだかぎこちない。


「今回行く時間軸は『フランス革命』」


 フランス革命。

 名前こそ有名なため知っている人は多いかと思われるが、その内容について詳しく理解できているだろうか。簡単に説明をさせてもらおう。


 1780年代のフランスでは国民の身分が、上から聖職者、貴族、平民の3つに別れており聖職者と貴族については免税などの特権が与えられていた。

 そんな中、1783年にアイスランドのラキ火山が噴火。その噴煙による日照不足で作物が育たず主食のパンの値段が大きく上がり、フランスの財政は大打撃を受けた。

 そこで国王であったルイ16世は今まで税金を徴収してこなかった聖職者や貴族からも税を徴収しようと考える。しかし、当然ながら聖職者や貴族達はそれに猛反発。それどころか、それに賛成していた平民に圧力をかける為軍隊を集結する事を強要。平民と軍隊間の緊張は高まっていった。

 そして遂に平民の怒りは爆発。バスティーユ牢獄の襲撃をきっかけにフランス革命が始まろうとしていた。

 それを聞いたオーストリアと当時プロイセンと名乗っていたドイツはフランスの革命が成ってしまうと不都合だったため、フランスの革命政府に対して「ルイ16世の地位を守らないのなら戦争を始める」と告げる。

 実際には革命政府が何をしても戦争を起こすつもりは無かったが、革命政府はこれを間に受けてしまい、オーストリアに宣戦布告。それを受けたプロイセンもフランスに宣戦布告し、後にフランス革命戦争と呼ばれる戦いが始まった。

 フランスの兵士は貴族だった為、平民の為に戦う気にはなれないと終始やる気が無かった。そのため各国に呼び掛けて義勇団を集め戦争を行っていった。

 にも関わらず、フランス軍は連戦連敗。それを不審に思った平民はルイ16世とマリーアントワネットが敵国に情報を流していることを突き止め、王族をタンブル塔に幽閉した。

 こうしてフランスの王権は停止。

 そして1793年、ルイ16世とマリーアントワネットの処刑が行われ、フランス革命は幕を閉じた。


「他にも人権宣言とかベルサイユ宮殿への行進とかいろいろあるけど…………重要な所はそのくらいかな」


「で、今回はどうするつもりだ?」


「そこの説明を今からしていくね。まずフランス革命の時間軸を壊す上で一番手っ取り早いのはルイ16世の処刑を防ぐ事…………と思いがちだけど、殺気に溢れたあの時代で処刑を防ごうとしてみなよ、間違いなく私達も処刑対象になる。かといって処刑が行われる前に私達がルイ16世を殺しても、革命が起きるタイミングがズレるだけだから意味はない」


「じゃあ……………どうするんだ……………?」


「私が目をつけたのは処刑が行われるずっと前、バスティーユ牢獄の襲撃だよ。あの頃の平民は怒り狂っていた。故に明確な指揮官がいるわけでもなく怒りに任せてがむしゃらに戦っていただけ。言うならば数の暴力なんだよ。だから冷静な判断ができる私達がそこにいけば…………」


「バスティーユ牢獄の襲撃は失敗に終わり、革命が起きることは無い、と」


 アルトの言葉にシュルバは大きく頷いた。


「でもさ、バスティーユ牢獄?ってとこの襲撃ってかなり大規模なものだったんでしょ?アリス達7人だけで大丈夫なの?」


「もちろん、それに関しても手を打ってあるわ♪」


 シュルバはアリスに向けてウインクをした。


「じゃあ皆、これを」


 シュルバが取り出したのは銀色のアタッシュケース、それも1個や2個ではない。合計7つのアタッシュケースがシュルバの目の前の机の上に置かれた。

 シュルバはそれを一つ一つ丁寧に全員に渡していく。アルトは警戒しながらもそのアタッシュケースの鍵を外し上部を押し上げる。

 中にはサバイバルナイフと手榴弾、それとアサルトライフルが銃弾もセットで入っていた。


「これは?」


「ルカちゃんに頼んで作ってもらった装備一式。こないだの戦闘は核兵器を使ったから要らなかったけど、今後戦闘が多くなってくるからある程度の武器は揃えておこうと思ってね。人によって中身は変えてあるよ。接近戦が主となるアリスちゃんとレイナちゃんはサブマシンガン、刀がメインになってくるヒロキは砥石と護身用のハンドガン、あまり前線に出ないアルトとルカちゃんはアサルトライフルと手榴弾、そして私はAMR(アンチマテリアル)ライフルと投げナイフ。後は近接用に1人1本サバイバルナイフ、包帯とか傷薬とかは2段目に入ってるから、各自ちゃんと持っておいてね」


 レイナはサバイバルナイフを振り回しながらいった。


「このナイフ……………かなり上質な物だな………………私が暗殺に使っていたものよりも切れ味が良い………………」


 レイナは武器とか刃物とかになると目をキラキラさせて喜びだす。暗殺者ならではの趣味だ。


「レイナが興奮するほど上質な刃物を今渡したと言うことは、次の戦いは相当大変なものになるのか?」


「まぁ大変っちゃ大変なんだけど、数はいるけどひとりひとりはそんなに強くないわけ。だからいい練習になるかな〜って。私達は7柱を1人殺してる訳だから7柱側もかなり警戒してきてるはず。だとしたら、今のうちに装備を整えておいて7柱戦に備えて置こうかなって」


「なるほどな。だとしたら、『善は急げ』。さっさとバスティーユ牢獄に行こうぜ」


 ヒロキがクロノスにワープホールの展開を依頼しているのを、シュルバは止めた。


「待って、まだ準備ができてない」


「準備?まだ何かあるのか?」


「えぇ。だから少し待ってて」


 そう言うとシュルバは別室へと向かった。


「また何か武器を持ってくるのでしょうか?」


「これ以上の装備が必要だとは思えないが」


「どっちみちシュルバおねーちゃんがいないとルカたちはなにもできないから、いまはシュルバおねーちゃんをまつしかないよ」


「そうだね、とりあえず今はシュルバっちを待とうか」


 最高管理室にいる7人は各々椅子に座ったり床に座ったりしてシュルバの帰りを待った。

 その沈黙を破ったのはアリスだった。


「しっかしさ〜、シュルバっちも変わったよね〜」


 全員がアリスの方を向く。


「確かに、な。前までは臆病で大人しいイメージだったけど今じゃテンション高いサイコパスだもんな」


「ホント。俺もアルトと同じで大人しめな人だと思ってたけど、今じゃその大人しめという概念はどこへやら」


「タクトが死んだショックからか…………それともタクトの左腕の影響か………………」


「いや、そんなんじゃない」


 アルトがいつもより低いトーンで言った。


「見たんだよ、タクトが死んだ日の夜シュルバが最高管理室のPCを弄ってる所を」


「それが、彼女の性格とどう関係してるんだ?」


「前までのシュルバは確かに大人しかったが、今みたいな明るい顔も見え隠れしていた。前にタクトが言ってたんだ、シュルバは1回目の人生では暗く大人しい人間だったけど、タクトが作り出した2回目の人生では明るく活発な性格だったって。つまり前までのシュルバはこの2つの人生の影響を受けて性格が不安定だったんじゃないか…………と、思ったんだ」


「それで俺はシュルバの目を盗んでPCの中を見た。そしたらさ、1回目の人生の世界線が凍結されていたんだ。つまりシュルバは…………」


 ここまで言った所で、シュルバが戻ってきた。


「おっまたせ〜♪」


 突然のシュルバの帰還にドキリとしたが、最高管理室の扉が厚いだけあってなんとかバレずに済んだようだ。


「じゃあ、行くか」


 アルトだけがシュルバの真実を最後まで知った状況で、アルタイル達はワープホールに飛び込んだ。

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