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7人の僕が世界を作り直すまで  作者: セリシール
3章『二つの黒は一つに成りて』
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3章13話『光、影の操り人形(前編)』

 耐ストレス力との戦闘から5日が立った。

 いつもの如く、ルカはタクトに頼まれた物を製造している。今回使うものは依然のように大掛かりなものでは無いが、細かい作業を必要とするものなのでルカは何日か部屋にこもっている。

 ヒロキとレイナ、それとアリス。この三人は戦闘訓練をしていた。まぁこれといった特殊な事をしている訳ではない。タクトの作ったホログラムと戦闘を繰り広げているだけだ。

 タクトとシュルバ、アルトの三人はハッキングの練習をしている。練習とは言っても、大企業の企業秘密を赤子の手をひねるように抜き去っていっているので間違いなく法に触れる行為だ。


 何故、このような行動をしているのか。

 言うまでもないが、それは次の護り手の存在が大きく関わっている。


 そう、これは耐ストレス力との戦闘のすぐ後、次の護り手を調べていた時の事だ。


「次の護り手は『コミュニケーション力』あたりが来るのかな?」


「えぇ。残る護り手もあと2種です、気を引き締めていきましょう」


「あぁ」


 そんなアテナとの会話を交わした後、タクトはPCをカタカタと叩く。英語や数字が鬼の如く映し出されるスクリーンを流れるように確認していくタクト。

 彼は、決定的な事実に気づいた。


「ねぇ…………これってさ……………」


「……………そういうことに、なりますね」


 スクリーンに映っていたのは護り手の情報。識別番号や身長体重などが書かれる画面だ。

 今までの護り手も同じようにデータが世界のプログラム上にはあった。しかし、今回はそれが特殊になっている。


 護り手のデータが1つだけでは無いのだ。それも2つや3つなんて生易しい数ではない。

 推定10万。データを確認するだけでも3日は掛かるくらいの量だ。

 そしてその10万の護り手の識別番号にはある共通点があった。ある英単語が、識別番号の先頭に必ずくっついていた。


Perseus(ペルセウス)…………」


 お互い、その文字を見て黙り込んでいた。

 つまりは、10万のペルセウスを余すことなく殺し尽くさないと時間軸の破壊が不可能になる。


「これは…………参ったね」


「なんとか、打開策を探さないといけませんね」


「あぁ。この人数を殺し尽くすのは無理だと断言できる」


「兎にも角にも、まずはペルセウスの事を徹底的に調べ上げましょう」


「もちろん、そうするつもりさ」









「どうやらペルセウスは、警視庁の地下に本拠地を構えているようだ」


「となると、日本の警察はペルセウスを黙認している。もしくは警察含め全てペルセウスの可能性もありますね」


「そうなると、厄介な戦闘になるね」


「そうですね」


「それに、どうやらペルセウスはいくら倒しても無限に生み出されるみたいなんだ」


「と、言いますと?」


「ペルセウスの本拠地の監視カメラをハッキングしたんだが、最下層に楯があるんだ。その楯からペルセウスが生まれてくるのを確認した……………」


 アテナはひどく驚いた表情で、らしくない大声でタクトに問う。


「いっ今なんと仰いました?」


「え?だから楯からペルセウスが……………」


「映像、見せていただけます?」


「あぁ、構わないけど」


 タクトはPCのファイルから動画を引っ張りだし、再生した。映像には翠色に縁取られた大きな楯からペルセウスと思われる人間が現れる瞬間が映っていた。


「これは……………『アイギスの楯』………………。オルフェウス……………そういうことだったのですね………………!」


 アテナは歯を食いしばり、悔しそうに画面を睨んだ。


「どういうことなんだ?説明してくれ」


「……………すみません、これは神達の間の話なので人間である貴方にはお話できません」


 アテナは申し訳無さそうにうつむいた。タクトはその様子を見て、これ以上問い詰めることは無かった。


「じゃあせめて、今回の目標を教えてくれ」


 タクトは椅子から立ち上がり、アテナに寄った。


「はい、今回の作戦は楯です。なんとしてでも、あの楯を持ち帰らなければなりません」







 東京都千代田区霞が関。そこに立つ警視庁の建物は風を受けてガラス窓を揺らしていた。


「私だ。通せ」


「はい、どうぞこちらへ」


「お勤めご苦労様」


 男は地下へ向かう階段へと向かっていった。階段の先には鉄の扉が1つ、そこには『Perseus』の文字がある。ここがペルセウスの本拠地なのだ。

 男はノートパソコンを取り出し、扉の横の入力機器にコードを接続した。不慣れな手つきでPCを操作し鉄の扉のロックを解除した。そしてスマホを取り出し耳に当てる。


「こちらアリス、第一層のハッキングに成功。なんてね!」







 しばらくすると、残りのアルタイルが全員現れた。ペルセウスの本拠地には転送装置に対する妨害電波が飛んでいるため扉の前に転移しハッキングにより扉を開ける作戦だ。


 ヒロキは勢い良く扉を蹴飛ばす。音に驚くペルセウス達をレイナは音もなく斬り捨てた。


「さぁ、絶望を始めよう」


 タクトの声と共にアルタイル達は一気に走り出す。前衛に居るヒロキと後衛に付くアリスがペルセウス達を容赦なく斬る。そしてその2人が殺しきれなかったペルセウスを、レイナがフッと現れて殺していった。

 そうやって第二階層、第三階層と着々と下へ進んでいく。








 その頃のアテナだが、彼女は久しぶりに故郷、つまりは神の領域に帰っていた。彼女は故郷を懐かしむこともなく、足早に進んでいく。

 その途中で、何人かの神に出会った。


「おい、貴様止まれ」


 急ぎ足で歩くアテナの前に立ち塞がったのは≪狩猟の神≫アルテミス。彼はアテナを強く睨みこう言った。


「よくノコノコとここに来れたものだな」


「……………申し訳ありませんが、今は貴方と話をしている暇は無いのです」


「ほぅ…………俺と話す事より重要な事とは何だ?」


「………………()()()()の犯人が分かったんですよ」


「なっ……………!今になって5000年前の事件が解決するとでも言うのか?」


「はい。その犯人に今から会いに行くのです。道を開けてくれませんか?」


「………………分かった。ただし条件がある」


「俺も連れて行け、ですか?」


「よくわかってるじゃないか。あの事件の犯人がわかったというのなら、俺もそいつと話したい。それにここに来たということは、犯人は神の中にいるのだろう?だとしたら、そいつにお前と同じ裁きを下す必要がある」


「そうですか、どうぞご勝手に」


 アテナは柔らかく微笑み、また急ぎ足で廊下を歩いていった。











「よし、最下層まであと少しだ」


 第十八階層を突破したアルタイル達は、重い扉をゆっくりと開けた。

 それと同時に、タクトのスマホがなる。


「はい、もしもし。…………………………なるほど、了解した」


 タクトはスマホをポケットにしまい、目の前にいたペルセウスに麻痺毒を打ち、こう告げた。


「団長はどこにいる」


 ペルセウスは苦しそうに目を閉じ、もがいていた。


「あら、お呼びでしょうか」


 聞き覚えのある声だった。タクトの目の前にいた宿命の相手は、ペルセウスの団長だということを証明する首飾りをかけ、仁王立ちしていた。


「私がペルセウス第8代団長、霧島(キリシマ)(アオイ)です」

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