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7人の僕が世界を作り直すまで  作者: セリシール
2章『踊れや英雄、唄えや歯車』
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2章6話『欲深き(中編)』

「一体、どうしたんですか?長旅でお疲れなのでしょうか」


 乙姫は冷汗を少しかきながらシュルバに言う。


「残念ですが、貴方が偽物であることはバレバレなんですよ。大人しく、白状したらいかがですか?」


 シュルバは手を横にやり、呆れたように笑いながら乙姫にそう返す。


「証拠でも…………あるのですか?」


「証拠…………かぁ…………………」


 そこまで考えていなかったシュルバはうーん、と顎に手を置き考える。


「あるとしたら……………」


 シュルバは指でちょいちょいと乙姫を含む4人を呼び、廊下に出る。


「私の予想があってるなら多分この奥に………」


 シュルバは廊下の先にある大きな扉を指差した。

 乙姫はシュルバに対して、


「そこは王の間ですが、それが何か?」


 乙姫はまだ冷汗をかいている。


「失礼ですが、この部屋に隠し部屋などはありませんよね?」


「……………ありません」


 シュルバの体内に気持ちの悪い何かが走る。

 シュルバはにやりと笑い、扉を力いっぱい押した。


 扉の先にはレッドカーペットと赤い豪華な玉座が置いてある。

 中でも目を引くのは、大きな不気味な青さの時計だった。


 今回の歯車、『海の歯車』は恐らくここに使われているのだろう。


 シュルバはアリスを呼んで、2人だけで玉座へと向かった。

 その途中でシュルバはアリスに向かってこんなことを呟いていた。


「私の能力、わかったかも知れない」


 シュルバはにこりと笑う。

 その笑い方は、アリスから見ると狂気的にも感じられた。


 玉座に辿り着いたシュルバ達に向かって乙姫が叫ぶ。


「どうしたんですか。そんな所、何もありませんよ?」


 またもやシュルバの体内に気持ち悪い何かが走る。シュルバはその時点で2つの事を確信していた。




 船内。


 アルトが、ずっと気になっていた事をタクトに向かって尋ねる。


「なぁ、シュルバの能力って一体何なんだ?」


 タクトは腕を組みながら答える。


「彼女の能力か…………名付けるなら『推理』だね」



「私は他人の嘘を聞くと、体に違和感が走る能力。つまり、他人の嘘を見抜く事が出来る能力なんだと思う」


 シュルバはアリスに向かってそう言う。

 そして、その場にいる全員に向かって叫ぶ。


「私が考えるに、本物の乙姫様は……………」


 シュルバはズバッと人差し指を下に向ける。


「この下にいます」


 シュルバがそう言うと、アリスは玉座を蹴り飛ばした。玉座が外れると同時に、ガコンと言う重い音がなる。

 次の瞬間、玉座のあった場所の下に穴が空きそこから光が漏れ出した。


 シュルバ達4人はその穴に入る。


 穴の中は小さな工場のように機械が並べられており、真ん中には特殊そうな機械が設置されていた。


 その機械たちの端には、本物の乙姫が今にも死に耐えそうな顔で電撃を喰らっている。


「これでもまだ、証拠が無いと言えますか?偽物の"乙姫様♪」


 偽物の乙姫は苦虫を噛み潰す顔をしてシュルバを睨みつける。


「どうして、本物の乙姫がここにいると分かった……………」


 さっきとは声色が変わった偽物の乙姫がシュルバに歩み寄り、顔を近づけて叫ぶ。


「うーん、イチから説明すると面倒くさくなりますけど………まぁいいでしょう」


 シュルバは人差し指を口に当て、小さくウインクしてから解説を始める。


「まず最初に、貴方が乙姫って聞いた時点で何だか嫌な感じがしたんです」


「私は他人の嘘を聞くと嫌な感じがする体質なのでとりあえず貴方が乙姫では無いことは明らかでした」


「では、本物の乙姫はどこにいるのか?」


「まず乙姫を閉じ込める以上、外部の人間が入ってきて乙姫を発見されては困りますよね?故に外部の人間が近づきがたい場所に閉じ込めるのが自然と考えます。そう考えると、一番安全なのは王の間でしょうね」


「それでも竜宮城側の人間が乙姫を発見する可能性も残ってます。その対策に玉座の仕掛けです。竜宮城側の人間なら乙姫を慕っているはずなので、間違っても玉座が定位置からズレるような事はしないでしょう。それを考えた貴方は乙姫を玉座の真下のここに閉じ込めたのでしょうね。最初は確証がありませんでしたが、貴女に確認したら見事に違和感を放ってくれたんで、それが嘘だとは筒抜けでした。要するにですね…………」


 シュルバは煽るように言った。


「貴方が下手な発言をしたから乙姫の居場所がバレた。そういう事ですね」


 シュルバは偽物の乙姫を指差して、貴方の負けですと宣言し、勝ち誇った顔をする。


「………………………っ!」


 偽物の乙姫は腹が立って仕方がないようで、自分の首を掻きむしりながらシュルバを睨んだ。


「じゃあ、この機械はなんなの?」


 アリスはシュルバに問う。

 シュルバはそれを聞いて少し機械を見渡す。


 本物の乙姫のいる檻から伸びるコードは特殊そうな機械にぶつかり、何かが詰められた小さな瓶が作り出され、黒い箱のような物に収納されて蓋を閉められている。その箱を最後に一回大きく振って完成の様だ。

 機械は時折プシューだの、ギギギギギだの色々な音を出して動き続けている。


「なるほど、こうやって作られてるんだ」


 シュルバは全てを察したかのように腕を組みコクコクと頷いた。


「何か分かったの?」


 シュルバはアリスに向かって眩しいほどの笑顔をぶつけて偽物の乙姫に向かって言う。


「これ、玉手箱製造機ですね?」


 偽物の乙姫はギシシシッと歯軋りをする。

 頭には血管が浮かび、手と額は冷汗でびしょ濡れになっているように見えた。

 あからさまな図星の反応だ。


「おおかた、本物の乙姫から若さのエネルギーを抜き取って、それをこのアンチエネルギー製造機にかけて瓶詰めしそれを玉手箱の外装に入れたあと玉手箱を振る事で中の瓶を割りアンチ若さエネルギーを箱の中に充満させている。と、言ったところでしょうか」


 偽物の乙姫はまたもやギシシシッと歯軋りをする。


「いや、それだけでは無いですね」


「恐らくこの竜宮城は、地上の世界と比べて時間の流れが大きく遅くなっているのでは?それを制御しているのは王の間にあった大きな青い時計ですね」


「この機械の終着地点は恐らくあの青い時計。貴方はあの青い時計で玉手箱を弄って開けた時にちょうど経過した分だけ歳を取るようにしているのですね」


 偽物の乙姫は不愉快極まりない様だ。

 あからさまに表情を歪めている。


「と、なると……………」


 シュルバはあることに気が付いた。


「貴方とあの亀、そしてあわよくばあの子供達は全員貴方と繋がっていたと言うことになりますね」


 偽物の乙姫はあまりの怒りに壁を拳で破壊してしまった。

 アリスはひゃっとシュルバに抱きつく。


「貴様…………一体何者だ!!?」


 シュルバはアリスを抱きながら、笑顔で答えた。


「ただの"探偵"ですよ♪」


 そこまで聞くと、偽物の乙姫は突然叫び出した。


「調子に乗るな愚民ども!こうなったら本物の乙姫もろとも貴様らを殺してやる!」


 偽物の乙姫は檻の方を向く。


「なっ……………!」


 そこには本物の乙姫の影も形も無かった。


「貴様…………!」


 偽物の乙姫がシュルバの方を振り向く。


 シュルバは本物の乙姫を抱きかかえて偽物の乙姫に笑顔で手を振っていた。

≪NGシーン≫


偽物の乙姫はあまりの怒りに壁を拳で破壊してしまった。


乙姫「21歳☆」


シュルバ「かっこいい………www」


アリス「2人とも何してんの?」

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