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蛇はどこまでも追いかけてくる  作者: カエル
新種
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 一目惚れ。

 初めて出会った相手を好きになること。


 何故、一目惚れが起きるのか?

 脳が見せる錯覚とする説や、人間は無意識に自分の親(男性なら母親、女性なら父親)と似た顔立ちの人間に恋をしやすく、一目惚れは自分の親と似た相手を見た時になりやすい説など、様々な説がある。


 その中に、こんな説がある。

 人間は、遺伝的に相性の良い相手を見つけた時に一目惚れをする。というものだ。


 単為生殖や分裂による増殖では、親と子(分裂前と分裂後の細胞)の遺伝子は全く同じになる。これは、相手がいなくても増殖できるという利点があるが、欠点もある。

 遺伝子が全く同一の個体ばかりだと、伝染病の流行や環境の急激な変化が起きた時に、それらに対応できる者がおらず絶滅してしまうリスクが高くなる。


 そこで、生物の中に二つの異なる個体の遺伝子を掛け合わせ、子供を作る方法を取るものが現れた。これは、全く別の遺伝子同士を組み合わせることによって、遺伝子を多様化させることが目的だ。

 伝染病の流行や環境の急激な変化が起きても、遺伝子が多様化していれば、どれかの個体がそれらに対応し、生き残ることができる可能性が高くなる。

 単為生殖や分裂に比べ、増殖できるスピードは落ちるが、絶滅のリスクはとても低くなる。


 動物には、本能的に自分と相性の良い遺伝子を見つける能力があり、一目惚れは自分にとって相性の良い遺伝子を見つけた合図だ。というのがこの説だ。


 ただし、全ての人間が一目惚れをするわけではないし、たとえ、一目惚れをした相手と子供を作ったとしても、親より優秀な子供が必ず生まれるということもない。

 仮に人間に、自分と相性の良い遺伝子を見つける能力があったとしても、それは完璧なものではないだろう。


 ただし『新種』ならば分からない。


 人間の何十倍も、何百倍も、何千倍も自分にとって相性の良い遺伝子を見付けるこのできる能力を持つ人間に似た『新種』がもし、誕生したとすれば、その『新種』は人間よりも高確率で優秀な子孫を残すことができるだろう。


                  ***


「管二……さん?」


 雨牛に名前を呼ばれた管二春は「ニヤァ」と口元を歪ませた。


 管二は、黒いネグリジェを着ていた。

 管二が着ているネグリジェは、肩が出ており、胸元も半分ほど露出している。まるで、下着のようなデザインだった。

「どうかな、これ?君のために買ったんだよ?一番セクシーなものを選んだんだ」

 管二は自分の胸を指でなぞる。

「……ッ!」

 あまりの妖艶さに雨牛は思わず息を飲んだ。管二は、雨牛が寝かされているベッドに静かに腰を下ろす。ベッドがギシリと音を立てた。


 管二は手を伸ばし、そっと雨牛の頬に触れた。


「はっ!」

 雨牛は、そこでようやく我に返った。管二のあまりの妖艶さに見惚れてしまっていた。

「管二さん!こ、此処は一体?」

「此処は、私の家だよ。私が君を連れてきたんだ」

「管二さんが?」

 雨牛は思い出す。

(確か、部活が終わって、波布さんを送った後、背後から誰かに何かを嗅がされたんだ。その途端、意識が遠くなって……)

「あ、あれは貴方が!?」

「そうだよ。あれは私」

「い、一体何のつもりですか!?は、外してください!」

 雨牛は手足を動かすが、ロープは外れない。


「怖がらなくていいよ」


 管二は雨牛の顔にスッと自分の顔を近づける。

「大丈夫だから」

 それから、管二は雨牛の唇に自分の唇を重ねた。


「んっ!?」

「んっ、んん!」


 管二の舌が雨牛の口をこじ開け、中に侵入する。雨牛は自分の舌で管二の舌を押し返そうとするが、管二の舌はまるで蛇のように雨牛の舌に絡みつく。

「んーんー」

「うっ、ううん!」

 雨牛は、顔を動かして管二の唇と舌から逃れようとするが、管二は両手で雨牛の頭を両手で挟み、動かないように固定した。

 

「う、うううん、うううん」

「……うぐっ、うっ」

「ぷはぁ」

 管二の唇が離れた。細い唾液が糸を引く。

「はぁ、はぁ……な、何をす、するんですか」

 ようやく解放された雨牛の呼吸は荒い。そんな雨牛を見て管二は「ニヤァ」と不気味に笑う。

「あの時の続きだよ」

 そう言うと、管二はまたしても雨牛の顔に唇を寄せた。

「くっ!」

 雨牛は、管二の唇が届く前に顔を動かす。今度は顔を大きく逸らすことができた。しかし、管二は所構わず雨牛にキスをしてくる。

 頬、耳、首、肩……管二は雨牛の肌に唇を付け、舌を這わせる。

「や、やめてください!」

 両手両足を縛られ、抵抗できない雨牛は必死に管二に懇願する。しかし、管二は雨牛の耳にフッと息を掛け、甘く囁いた。

「気持ちいい?」

「――ッ!」

 ゾクリとする声。全身に電流が走る。

「気持ちいい?ねぇ、気持ちいい?」

 管二は何度も雨牛の耳に息を吹きかけ、甘い声で囁く。さらに、管二は自分の胸を雨牛の体にギュと押し付けた。大きく柔らかな胸が雨牛の体で押し潰される。

「や、やめて……やめてく……れ」

「嘘。本当は、やめて欲しくなんてないんでしょ?」

「ち、違……ぐっ!」

 管二は雨牛に密着させた体を動かし始めた。その動きに合わせて、管二の胸が雨牛の体を責める。その度に、雨牛の体は熱くなっていく。

「やめ、やめて……お、お願いです。やめてください!」

「ふふっ」

 管二は上半身を起こし、馬乗りの体勢になる。そして、おもむろに雨牛の右腕のロープを外し始めた。

「……?」

 解放してくれるのだろうか?ほんの一瞬、期待がかすめる。

 しかし、その期待は淡くも打ち砕かれた。

 管二は自由になった雨牛の右手を掴むと、強引に自分の胸に押し付けたのだ。


 雨牛の右手が管二の胸を潰す。柔らかく、温かい感触が右手に広がった。


「また、触られちゃった」

 管二は頬を赤らめる。

「どう?久しぶりの私の胸……大きくて、柔らかいでしょ?」

 車の中で服の上から胸を触らせてきた時とは違い、今の管二は胸が半分ほど露出している格好をしている。そのため、露出している部分にも右手が触れることになる。

 あの時よりも、倍以上の感触が手に伝わる。

「は、離して、離してください!やめて!」

「ふふっ、ダメ」

 雨牛は必死に管二の胸から手をどけようとする。しかし、管二は離すどころか、さらに強く、雨牛の手を自分の胸に押し付けた。

「んっ」

「くっ!」

 管二は雨牛の手を動かし始める。雨牛の手の動きに合わせて管二の胸が形を変えていく。

「くっ、うっ、くっ!」

 手から伝わる感触が脳に届き、本能を刺激する。頭は拒否しているのに、体が反応してしまう。

「あはっ!」

 雨牛の体の変化に気づいた管二は、「ニヤァ」と楽しそうに笑う。

 管二は、再び雨牛の右手をロープで縛ると、そのまま雨牛に覆い被さる。今度は縛っている雨牛の足に自分の足を絡めた。

「はぁ、はぁ……や、やめて、や、やめろ」

 懇願を無視し、管二は雨牛の上着のボタンを一つずつ外し始める。

「やめて、やめて……くれ」

 管二が全てのボタンを外し終えると、雨牛の上半身の素肌が露わとなった。

 管二は露わとなった雨牛の上半身をスゥと撫でる。直接肌を撫でられ、雨牛の全身がビクリと跳ねた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、やめて……やめてくれ」

「やめて欲しいの?でも……」

 管二はむき出しになった雨牛の上半身にキスをし、舌を這いまわす。その度に雨牛の体はビクッと反応した。

「体はもっとして欲しいって言ってるよ?」

「ち、ちが……うっ!」

 何度もキスを落としながら、管二は囁く。強すぎる刺激を受け続けた雨牛の肉体から、次第に抵抗する力が抜けていく。

「私、欲しいものがあるの」

「……えっ?」

「私ね……」

 雨牛の耳に口を寄せ、管二は囁く。


「君との子供が欲しいの」


 管二の言葉に雨牛は目を見開いた。

「こ、子供?」

「そう、君との子供」

 管二は雨牛の首筋にキスをし、舐め回わす。

「私と交わっていいのは優秀な遺伝子を持つ人間だけ。今まで見つからなかったけど……やっと見つけた」

 管二は雨牛の目を覗き込む。


「それが、君」


 管二は雨牛の耳たぶを甘噛みした。

「ぐっ!」

「最初に会った時から、君のことが忘れらないの。一目見た瞬間、君のことが好きになった。これは、きっと君が私に相応しい優秀な遺伝子を持っている証拠」

「な、何を言って……ぼ、僕は優秀なんかじゃ……うっ!」

「自信を持って。貴方の中には極上の遺伝子が埋まっている。貴方はそれに気づいていないだけ」

「そ、そんなもの……僕には……くっ、うっ!」

 話をしながらも、管二は雨牛の体に触れ続ける。管二は、トロンとした目を雨牛に向けた。


「私は……君との子供が欲しい。だから、頂戴……」


 管二は「ニヤァ」と不気味に笑う。


「君の遺伝子を」 


 管二は、雨牛の下半身に手を伸ばし、ズボンのベルトを掴む。それから、ゆっくりとベルトを外し始めた。

「や、やめろ。やめてくれ!やめろおおおおおおおおお!」

 雨牛がどんなに叫んでも、管二は手を止めない。ガチャガチャとズボンのベルトが外されていく。


(誰か、誰か助けてええええええええええ!)


 助けを求める雨牛の脳裏に一人の少女が浮かんだ。雨牛はその少女に助けを求めようとする。しかし……。

「うわああああああああああ!」

 直後に襲ってきた凄まじい刺激により、少女の姿は雨牛の頭から泡のように消えた。


 それから数時間、部屋の中には雨牛の悲鳴と満足そうに笑い続ける管二の声。

 そして、ギシギシとベットが軋む音だけが響き続けた。

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