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蛇はどこまでも追いかけてくる  作者: カエル
第二章 胡蝶の夢
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またしても

 僕を部屋の中に招き入れると、彼女は飲み物を持って来ると言って、部屋を出て行った。一人残された僕は、意味もなくキョロキョロと部屋の中を見る。

 彼女の部屋はきちんと整理整頓がされており、下にはゴミ一つ落ちていない。

 カーテンの色はピンクで、ベッドにはクマのぬいぐるみなんかも置いてある。

 部屋中からする良い匂いに胸をドキドキさせていると、ジュースが入ったコップを二つお盆に乗せた彼女が戻ってきた。僕は慌てて姿勢を正す。

 彼女は僕の前にコップを一つ置いた。

「どうぞ」

「ありがとう」

 お礼を言って、ジュースを飲む。ジュースはとても甘かった。


「……えっと」

「……」

「……あの」

「……」

 会話はちっとも弾まなかった。僕は初めて入る女の子の部屋に緊張して、うまく話せない。彼女も彼女で顔を真っ赤にして俯いている。

「えっと……じゃ、じゃあ、僕、もう帰るね!」

 僕は勢いよく立ち上がると、そのまま部屋を出ようとした。


 その時、頭がグラリとした。


「あ、あれ?」

 意識が遠のき、その場に倒れそうになる。そんな、僕を彼女が支えた。彼女は僕をベッドまで運ぶと、優しい動作でベッドに寝かせた。

「あ、ありがとう」

 ベッドに横になった僕は、彼女に礼を言うのが精一杯だった。体は動かず、意識が遠い。そんな僕を彼女は上から覗き込む。そして……。

「え?……ちょっ……ちょっと!」

 突然、彼女が寝ている僕に覆いかぶさってきた。反射的に押し返そうとしたが、体が全く動かない。

 彼女の胸が僕の体で押しつぶされているのが分かる。足と足が絡み合い、首筋に彼女の吐息が掛かる。

「な……なにを……や、やめ……くっ」

 首筋に温かいものが触れた。すぐにそれが彼女の唇だと分かった。彼女は何度も何度も僕の首筋にキスをしてくる。

「うっ……くっ」

 彼女の唇が首筋に触れる度、体中に電流が走る。何とか、やめさせようとするけど、やはり体は全く動かない。まるで、薬でも飲んだかのように……。

(ま、まさか)

 僕は先程飲んだジュースを見る。そういえば、あのジュース、妙に甘かった。

(まさか、あの中に何か……くっ!)

 彼女が僕の体を両手でまさぐり始めた。服越しでも彼女の手の動きがはっきりと分かる。その間も彼女は、首筋へのキスをやめない。

「や、やめて……本当に……もう……やめて」

 体が動かない僕は必死に、彼女にやめるよう懇願する。でも、彼女がやめる気配は一向にない。

 やがて、彼女は僕の服を脱がせ始めた。上着のボタンを全て外され、肌が現れる。彼女の手が直接、僕の肌に触れた。

「あっ!」

 服の上から触られた時の何倍もの電流が体中を走る。彼女は悶える僕をじっと見ると、おもむろに自分の服にも手を掛けた。

 服がはだけ、黒い下着と大きな胸があらわになる。彼女は僕の手を取ると、自分の胸に押し付けた。彼女の胸が僕の手で押しつぶされ、形を変える。

「やめて……放して……お、お願い」

 体中が熱い。このままじゃ、まずい。僕は力の限り、大声で叫ぼうとした。

「やめ……うぐっ!」

 僕の叫びを彼女はキスで黙らせた。まるでむさぼる様に、彼女は僕の唇に押し付けている自分の唇を動かした。


「ずっと、こうしたかった」


 僕の唇から自分の唇を離すと、彼女は僕の耳元でささいた。

「雨牛君」

 凄まじい色気あふれる声で彼女は僕の名前を呼んだ。僕は自分の中の理性が壊れる音を聞いた。

 理性が壊れる音を聞いた瞬間、僕は抵抗するのをやめた。

「雨牛君」

 彼女がまた、僕の名前を再び呼んだ。僕は、それに応えようと彼女の名前を呼ぶ。


「胡蝶さん」


 僕が名前を呼ぶと胡蝶さんは幸せそうにほほ笑んだ。


***


 ピピピピピピピピピ。

 けたたましい音と共に目が覚める。僕は鳴り続ける目覚まし時計をゆっくりと止めた。

「また……か」

 それから、両手で頭を押さえる。

「うああああああああああああああ!」

 胡蝶さんと、またしてもあんなことをする夢を見てしまった。激しい罪悪感が僕を襲う。だけど、胡蝶さんに触れられた時感じた電流のような感覚や、彼女の胸の感触、そしてキスされた時の激しい快感。それらがまだ体に残っていた。


 僕は体中の火照りが鎮まるまで、しばらくベッドから出ることが出来なかった。


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