少女と青年と河川敷
ほぼセリフばっかですけど、それでもよければ。
夕日が色褪せる河川敷。
青年は学校から帰っている途中だった。
「…?」
青年が見たのは、草の上で座り込んでいる小さな少女。
「こんな時間まで一人で…?」
青年はもしかしてと思い、少女に歩み寄って行った。
そして、少女の隣に立ち、話しかける。
「…まい「まいごじゃないです!」
少女がこちらを向かないまま、予想してたかの様に返す。
「…?」
「だいじょうぶです!」
少女が続けて言う。
「ほっほんとです!」
「ママが、わたしのたんじょうびケーキ、かいにいったから…まいごじゃありません!」
「……」
「わたしのおうち、すぐそこで、まってるんです!ママはおかいもののとき、こことおるから…ほんとです…」
少女はそう言った後、静かになる。
「…」
青年は首に手を当て、しばらく悩んだ後――
「よっと…」
「!?」
少女の隣に座り込んだ。
「…何か」
「…?」
「僕に出来ることは無いですか」
「……!」
少女は青年をじっと見つめる。
「…?」
「…て」
少女は手を青年に差し出してくる。
「…」
青年はその手を受け取り、キュッと握った。
――手を握りあってしばらくしていると――
「…あら?」
「!!!ママ〜!」
少女の母親が来たようだ。
「あらあら、待ちきれなかったのね。すいません、ご心配かけちゃって」
「…いえ、大丈夫です」
青年は軽くおじぎをしてから帰ろうと背を向ける。
「…おにいちゃん!」
「…?」
少女が近づいてくる。
「おにいちゃん、て!」
「え?あ、はい」
「そっちじゃないです!」
「え…あ、左ですか、すいません」
青年は左手を出す。
「んしょ、んしょ…」
「…?」
少女は青年の指にシロツメクサの草で作った指輪を、薬指に作った。
「おにいちゃんは、王子様です!」
「……!?いや、あの…」
「あらあら…♪うちの子をよろしくお願いね?」
「い、いや、あの…!!」
青年は顔を赤らめ、動揺した。
「…えへへ、またあいましょう!」
「は、はい…」
少女は母親と共に帰っていった。
「お、王子様って…まぁ、子供が考える事…だよな」
青年は、しばらくその指輪を見ながら、立っていた。
――――とある部屋――――
「……さん」
「………」
「……いさん」
「………」
「お兄さん!」
「……ん」
青年は目を覚ます。
「…あ、ごめん!ついウトウトとしちゃって…」
「私こそ、すみません…起こしてしまって。私、そろそろ帰りますね。今日はどうも…」
「ありがとうござい「お、送るぞ!!!家まで!!!」
青年は声を大きくして言う。
「ひゃい!?」
「お兄さん、体は大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫」
「だいぶ疲れてるんじゃないですか?」
「本当に大丈夫だよ。さっきはごめん。つい、ウトウトしちゃって…」
「実は全部お母さんに聞いちゃったんです。お兄さんが私の誕生日の為にわざわざ頑張ってくれて」
「……」
「でもおかけで、最高のバースデーになりました。また宝物が増えちゃった!」
少女は笑顔でそう言う。青年もつられて微笑む。
「うん、とてもいい誕生日だった」
二人はしばらく夜道を歩く。少女の家まで歩く。
「……」
少女は青年の顔を見る。
少女は青年に少し、近づく。
「…」
少女は、青年の手に触れようとする。
だが――
「――駄目だ」
青年は苦そうな顔をして言った。
「……っ」
少女は涙目になっていく。
「…ご、ごめんなさ――」
「言うな!」
青年は持っていた鞄から小さな箱を出す。
「両手を!」
「へっ!?」
青年が渡したのは、綺麗にラッピングされた薄い箱だった。
「…俺は大人で、君は学生だ。手を繋いだりするような事はできない」
「…」
「でも、君の誕生日にそばにいて、"おめでとう"と伝えたい。ずっと伝えていきたい!ずっと!」
「……!」
少女はぶわっと大量の涙を流し始めた。
「うわわ!え、えっとその!ごめん!何か変な事を!?」
「いや違うんです。えへへ…」
「嬉しいのと、びっくりしたのと、おかしいのと、色んなのが混ざっちゃって」
「そ、そっか…。あれ?でもおかしいって…?」
「だって…」
少女は手元を見る。青年も見る。
「…?」
「お兄さん、さっき出来ないって言ったのに、凄い力で握ってくるから…えへへ」
青年はプレゼントの上から少女の手を握っていた。
「…!?」