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91話 すべらない靴

 教会で身も心もスッキリとしたところで、ドグラスの親父さんの店に足を運ぶ。

 まあ、実はまだ大分体の違和感は残ってたりするが、気持ちが楽になったので大分マシになった気がしないでもない。



 ドグラスの親父さんの店に着くと、髭面のオットー君11歳が店番をしていた。



「いらっしゃい、父さんと母さんは出かけてるよー」



「お、一人で店番とか偉いな」



「まーね」



 一人で店を任された事が嬉しいのか、ちょっと得意げだな。

 靴の話を聞くなら、オットー君でも問題無いか。



「それじゃあ、さっそくオットー君に聞きたいんだが。 早く走るのに足が滑らない靴があるって聞いたんだが、扱ってたりするか?」



「滑らない靴? キャリッジバシリスクの靴のことかな?」



「きゃりっじばしりすく?」



 バシリスクはゲームでもモンスターとして出てきた、爬虫類型のモンスターだ。

 足の生えた蛇としてデザインされていたが、足が生えた時点でプレイヤーからはトカゲ扱いをされていたやつである。



「わりと大人しくて、足が早いから馬の代わりに使われたりもするモンスターだよ」



「へー、そのモンスターの足の皮で作った靴が、キャリッジバシリスクの靴ってことか」



「ちょっと待ってて、持ってくるから」



 どうやら実物の在庫があるようだ。

 オットー君が奥でガサゴソと在庫を漁っている。



「今これしかないや、サイズが合わないと思うけど、買ってくれるなら、調整はできるよ」



「もちろん買うので、商品説明頼めるか?」



「いいよー」



 その前に鑑定もしとこうか。



《品質の良いキャリッジバシリスクの靴》

:年若いキャリッジバシリスクの足の皮を靴底に使用し、僅かに魔力を流す事で生前のキャリッジバシリスクと同様に地面にしっかりと接地が出来る。多少の魔力操作を必要とする為、扱いは少々難しい。



 なるほどな、魔法的な不思議パワーで摩擦を得るようだ。

 磁石みたいにくっつくのか、それともトリモチの様に張り付くのか……。



「この靴は、魔力をほんの少し流すようにすると滑りにくくなるんだ。 限界はあるから、過信は禁物だけどね」



 オットー君が編み上げブーツの様になっている靴の靴底を見せてくれた。

 靴底は、見た感じ蛇腹の様になっていて、蛇腹の方向を角度を変えて幾つかパーツに分けて組み合わせてあるようだ。



「思ったより平らだな」



 触らせてもらうと、一見ツルツルだが、一定方向に対してだけ、目の細かい紙ヤスリの様な抵抗がある。

 とはいえ、これだけではゴム底とあまり変わりがない、まだまだ滑ってしまうだろう。



「すこーしだけ魔力を流してみて。 あ、靴底には触らないようにね」



 言われた通りに靴に魔力を流すと、一瞬で靴底の蛇腹が立ち、尖った棘の様なスパイクが現れた。



「おおう、びっくりした!」



「流す魔力の量である程度棘の長さは調節出来るし、慣れてくると棘の角度も変えられるよ」



 魔法の不思議パワーで地面との結合力がーとかの謎仕様なんだと思ったら、単純にスパイクで物理的に滑らないようにする仕様だった。

 まあ、謎仕様じゃない分、俺にもわかりやすいから良いけど。



「これって、この前に調整してもらった鎧の足にくっつけたり出来るか?」



「1日かかるけど、出来るよー」



「それじゃあ、靴を取ってくるか」



 素材に有機物が使われているのでアイテムボックスに収納出来ないのが困り物だな。

 調整されていない新品ならすぐ出せるのだが、同じものが何個もあっても邪魔なだけだし。



「ああ、そうだ、なにかダンジョンで使いやすい武器は無いか? ハルバードだと、デカ過ぎじゃないかと思ってな」



「うーん、武器に関しては父さんに相談してもらった方が良いかな、お兄さんには頑丈な武器以外売るなって言われてるし」



 ぐぬぬ、親父さんが居なければ、どさくさで売ってもらえるかと思ったのだが、駄目だったか。

 強さだけでみたら、終盤の物を持ってくるのだからゲームで使っていた武器の方が遥かに強いのだが、ドグラスの親父さんの武器は、見た目重視でバランスの悪いゲームの武器よりも、扱いやすさという点では何倍も高く、それでいて十分実用にも耐えるものなのだ。

 実践的なものを何度か経験したとはいえ、経験の少ない身としては、扱いやすい武器というのは非常にありがたい存在だ。

 どんなに強い武器でも当たらなければどうということは無いからである。

 いずれ、オリハルコンとかアダマンタイトとかの素材を渡して専用の日本刀とか太刀とかを打って貰おうと画策はしているが、おめえに打ってやる剣はねえ!ってすげなく断られつづけてる。

 ……いずれ酒で説得してやる。



 戦斧や戦槌は作ってくれるって言ってるが、なんかこう、しっくりこないというか……。

 ただの我侭だけど。

 ダンジョンだと、柄の長い武器は使いにくそうだから、ここはやはり日本刀のような武器が欲しいとは思う。

 小太刀の二刀流とかもカッコイイかもしれない。

 扱いきれるかは別問題ではあるが……。

 コラボ企画とかで、ゲームにも太刀という種別で刀のような物はあったのだが、普通のサイズの刀ではなく、ものすごくでかくて長かった。

 ゲームでは軽々と振り回していたが、実際にあの大きさの金属の塊は重量的に振り回せないだろう。

 砲撃の出来る槍には浪漫を感じないでもなかったが……。



 しかし、ダンジョンで使う武器をどうするかが困ったな。 魔導銃は頼もしい武器だが、威力が強すぎてダンジョンを崩落させてしましそうだし、ハルバードはちょっと長くて狭い場所では使いにくい。

 元ゴブリンの剣だったミスリルの剣もあるが、実験で作ったものだけあって、マシにはなっているが決して扱いやすいわけではない。

 閉所向きの俺でも扱えるような、都合の良い武器はなにか無いものだろうか?



 出会い頭の戦闘にも対応できて、かつ攻撃力も高く、大きさもそこそこで、扱いやすい武器があれば良いのだが。

ガンスは浪漫!

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