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89話 教会へ行こう

 車酔いが酷いときに無理やり寝てやり過ごすのと同じように、束の間の睡眠をとった。

 目覚めの気分は最悪だったが、ローコンディションポーションを1本いって気持ちを落ち着かせる。

 ストレスに抜群の効果があるコンディションポーションであるが、普通の状態異常ではないステータスアップ時の苦痛や不快感は軽減してくれないのが恨めしい。


「あいかわらず、この違和感にはすぐは慣れないな、ダンジョンを探しに行くまでに、少しでも動き回って慣らさないと」


 ステータスを変えてすぐなので、手足の長さが変わってしまったかの様な違和感が結構ある。

 運動不足であれば、足がもつれるとか、思った程体が動かないといった事が起こるが、ステータスをアップした場合も似た事が起きる。

 段差を登ろうとして、足が上がらす躓く代わりに、足が上がり過ぎて踏み外すのである。

 つまり、どういうことかと言うと、今俺は白兎亭の食堂に続く階段を、おじいちゃんの様に慎重に下っていたりする。

 普段は全く気にしないが、今は猛烈に手すりが欲しいと思っている。


「あんた何やってんだい?」


 掃除をしていたクーリアおばさんに発見されてしまった。


「あーいや、スタンピードで急激にレベルアップしたせいで、まだ体が馴染んでないですよ、あははは」


「そーいや最後に出てきたデカブツはアンタが倒したって話だったね。まったく人は見かけによらないね」


 自分のレベルを吹聴して回っているわけでは無いので、わりとあっさり信じて貰えたようだ。

 何か余計な事を口走らないように、スタンピードの時のことは、自分からは極力言わないようにしているのも、多分良かったのだろう。


「他の人達って、こういう時とどう対処してるんでしょうかね?」


「そうだねぇ、訓練場で体を動かしまくるのが手っ取り早いけど、酷い場合は教会に行って治療を頼む場合もあるね」


 なんと教会での治療って、そんなのにも対応していたのか。

 何か特別な事をしているのなら、やってもらいに行って、自分でも出来るようにすれば、もっとステータスを気軽に上げられるようぬなるかもしれないな。


「なるほど、それじゃあさっそく教会に行ってみます」


「気をつけて行っといで、知らない人に着いていったりしちゃ駄目だからね」


 子供じゃないのだが、なんとなくクーリアおばさんには言い返しにくいので、お礼を言って教会に向かう。

 そーいや、なんだかんだで、ちっとも教会に行ってなかったな。



 ゆっくり歩く意識をしながら、教会に向うと、ゆっくり歩いたつもりなのに、結構早く教会に着いてしまった。

 まあ、この辺の感覚はステータスアップ前からもあったけど。


 教会につくと、シスター達が一斉に俺の方を注目してきた。

 自意識過剰とかではなく、あからさまにガン見されている。

 ナニコレコワイ。


 以前も対応してくれた年配のシスターが近づいて来て、深々と頭を下げてきた。


「治療途中であるにもかかわらず、暫くお目見えにならなかったようですが、何かこちらに不手際でもありましたでしょうか?」


「え? いえ、治療に不満はまったくありませんでしたし、可能なら毎日でも来たかったくらいですよ。ちょっと忙しかっただけです」


 突然の謝罪に驚いた。 記憶喪失と言うのが嘘なので実際来る必要が無かった事と、なんだかんだで結構忙しかっただけだ。


「そうでしたか、イーリスの治療で何かご不満がおありでしたら、遠慮なさらずに言ってくだされば対応させていただきますので、遠慮なく仰ってください」


「いえいえ、彼女の治療は大変素晴らしいものでした。 本当に忙しかっただけですので、ご安心ください」


 目の前のシスターが、謝罪の言葉を重ねてくるが、来なかっただけであのシスターが咎められるのは流石に可愛そうだ。

 問題ありません本日もお願いします。と、金貨を2枚渡す。

 銀貨で良いらしいけど、ココで前回より少ない金額を出すと、不満があったように見えてしまうので、増やしておく。

 あんなに女神女神言ってたシスターが全く宗教色なく淡々と謝罪を重ねて来て、ちょっと怖かったというわけでは無い。……たぶん。

 高い金額出してるからってあそこまでなるものか?

 1回12万円出して、定期的に来たら月36万円から48万円を出す程度って考えたらそこまででも…………あるな……。

 日本円では考えてみたら、俺は超お得意様じゃねーか。 


 金額を受け取ったシスターが、うやうやしく頭を下げて、案内の者を呼ぶと言い残し何度も頭をペコペコしながら下がっていった。


 前回とは違う若いシスターに案内され、前も見た気がするモサモサな犬っぽい人や、頭に角が生えている牛っぽい人、全身鱗なトカゲっぽい人等の会話を聞きながら奥へと進む。

「今日はあのやろー来てねーな」

「ああ、なんか風邪引いたらしいぞ」

 とか聞こえてくる、風邪引いたんならむしろ来いや……。


 前回と同じ一番奥の突き当りのドアの前でシスターが立ち止まった。


「どうぞ、こちらからお入りください」


 目の前のドアを引いてくれたので、お礼を言って中に入る。

 そこには前回同様に裾の長い白い司祭服を着た金髪でおかっぱの少女が立っていた。

 ゴールデンレトリバーっぽい犬の獣人のイーリスだ。


「お久しぶりです。 ずいぶんと間が空きましたがその後お変わりはありませんか?」


「純粋に忙しかっただけでしたが、ご心配をおかけしました。 記憶の方は、例えば、ポーションについては憶えているけど、魔晶石に関する事だは、ごっそり憶えていないとか、項目毎に抜けているといった感じですね」


 一応、記憶喪失設定は通しておく。


「そうですか、では間も空きましたし、初回よりも少し強めに回復魔法をかけてみましょう」


「ああ、それと、スタンピードで一気にレベルが上がって、あちこち違和感が出てしまったので、そちらの緩和もお願いしたいのですが、大丈夫ですか?」


 記憶喪失は仮病?だが、こっちはガチで辛いからな。


「あ、はい大丈夫です! レベルアップ時の不調や違和感は、酷い人だと寝込む程ですからね。 頭の方が終わりしだい、そちらの治療もさせていただきますね」


 ベッドに寝かされ、目を閉じたイーリスがゴニョゴニョと詠唱か祈りの様なものを唱え始める。

 ぽわぽわとした温かい光が集まって来て、気持ちが楽なったような気がしてくる。


「はい、頭の方は終わりです」


 ん? ずいぶんと物足りないような……。

 あ、首の治療をしてもらってないからか。


「……ありがとうございます」


「では、体の違和感ですが、どの辺りが一番辛いですか?」


「首です」


「首ですか? 大抵みなさん手や足等に症状が出るのですが……」


 おっと、いかん思わず即答してしまった。


「実際のところ全身違和感だらけなんですけど、以前怪我を負っていたのか、首から肩にかけての部分が比較的辛いという事です」


「なるほどわかりました。そういう事でしたら、全身に対してと特に首と肩は重点的にやって行きましょう」


「よろしくお願いします!」


 俺は期待に股間……じゃなかった、胸を膨らませながら、イーリスに身を任せるのだった。

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