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83話 疑惑

 はい、というわけで、最近すっかり馴染みになってしまった領主の館に来ております。

 今日はアリーセも居るので、正面から入らせていただいております。

 ああ、アリーセはすでにハイコンディションポーション煽り済みとなっており、例によってお召し換えにドナドナされて行きました。

 あと今回は俺もハイコンディションポーションをキメさせてもらいました。


 なんで敬語かって? いまアリーセを待ってるところだけど、なぜか猫分多めの獣人、副ギルマスのパトリックさんもココに居て、絶賛OHANASHI中だからだよ!


「君が最後に使った魔道具、あれは都市防衛魔道具の、あーなんと言ったかな? ともかく、あれは王族や領主等が所持し、都市に設置されている魔道具だったはずだ。なぜ君という個人が所持をしているのかね?」


 パトリックさんもあの長い名前は憶えていないようだな。

 それはまあ置いといて、副とは言えギルマスともなると、流石にアレが何だったか知っているのか……。


「それに関しては、ジークフリード様がいるところで、一緒にご説明しますので」


 思わず、表情が堅くなる。

 あと、ちゃんと床に正座している。


「あー、いや別に咎めるつもりは無いので、そこは安心してくれたまえ。 間違いなくあれがなければ大きな被害が出ていただろうからね」


「そうですか、それでパトリックさんはなぜここに?」


「君達はうちのギルドの冒険者だからね、責任者として来ているんだよ」


 うわ、それってクライアントのところに上司同伴で謝罪に行くアレか!?

 いや、俺営業でも管理職でもなかったから、そういう経験は無いけど……。


「それと、コレだな」


 パトリックさんが、ゴトリと水晶玉の付いた箱を取り出した。

 また、水晶玉って事は、手を置いてあれやこれする魔道具だな。


「これはギルドの備品で、入場門にある悪意を調べる魔道具の上位版だ。 君と話している限りおそらく問題は無いと思うが、この国で悪意をもって活動をしていないかを調べさせてもらう。 まあ、どちらかといえば、なんやかんや言ってくる者を黙らせるための措置だな」


「なるほど、どういう仕組みなんですかね、これって」


「気にするのは、そこなのかね?」


「え? 悪意なんて感情じゃないですか、そんな曖昧なものを手を置いただけで感知するなんて、どんなロジックを使っているのか普通気になりませんか?」


 脳波を測るとかでなし、感情なんてその都度変わるようなもので、どうして判別出来るのかが気になって仕方がない。


「いや、普通は自分にそれが使われるとなったら、なにも悪い事をしていないものでも不安を感じたり、食事が不味かったから、あそこは不味いと言いふらしたと言う程度でも悪意に入って咎められるんじゃないかとか、そういう方だと思うが……」


「なるんですか?」


 上位版って言ってたし、領主の所で使おうって言うのに、その程度の性能の物は持ってこないだろう。


「もちろんそうはならないが、娘も同じような事を聞いてきたのでな、技術者寄りなのかと、勝手に納得をしていたところだ」


 あの猫耳娘と一緒にされるのは些か心外だが、錬金術師としての腕は確かだからなぁ。


「では、先に済ましてしまおう、ここに手を置いてくれたまえ」


 隠し事はともかく、別に悪い事は考えてないので、わっしと水晶玉を掴む。


「あれ? 反応しませんよ?」


「いや、これで良い、いまから幾つか質問をするからあまり深く考えず、正直に答えてくれたまえ」


 なんか、それもとの世界の嘘発見器の手順じゃなかったか?

 嘘発見器だと、色々考えてきた設定が暴かれてしまうんじゃ……。

 パトリックさんの糸目が開かれ、鋭い目付きでこちらを見据えてくる。

 まあ猫なんで、鋭いっていってもなんかちょっと凛々しい程度なんだけど。


「では、最初の質問だ」


 ここまで来ると逃げられんよな、場合によっちゃ覚悟を決めないといかんかもしれない。


「君は娘と付き合っているのかね?」


「ねーよ! って、なんの質問だよ!」


 あ、思わず素で突っ込んでしまった。


「ふむ、では今後そういった関係になる予定は?」


「ねーよ! しかもこっちのツッコミ無視かい!」


 俺の覚悟を返せ。


「そうか、良いだろう私は全面的に君を信頼しよう」


「え? 質問それだけ? 悪意云々の話はどこいったんだよ!」


 この猫親ばかなのか!!


「あるのかね? 悪意が」


「その質問は、娘さんに対して!? 国とか街に対して!?」


 これは確かに、あのワトスンの父親だな。


 その後も、ぶっちゃけどうでも良い質問を幾つかされているうちに、アリーセがやって来た。


「あれ? パトリックさんも一緒なの……ですか?」


「ほほう、ずいぶんと綺麗になったね。私がここに居るのは、冒険者である君達の責任者として来ているんだよ」


「うへ、それでなにか評価に響いたりは?」


「それは無いし、咎める為に来たのではない。 街だけでなく他の冒険者達の命も救ってくれたようなものだからね」


 パトリックさんは俺に質問を投げかけていたときの表情とは違い、糸目に戻って穏やかそうな顔になった。


「それで、真面目な話、審査?結果はあんなのだけで良いんですか?」


「あんなのではないよ? とても重要な事だ」


 めっちゃ私的な事しか聞いてねーだろ!?


「なになに? なんの話?」


「いやなに、俺に国を害する意図があるのかどうかを調べるんだと思ったんだが……」


 アリーセがいない間に何があったのかを説明する。

 質問の内容も含めてだ。


「なるほど、パトリックさん、娘の立場では干渉しすぎる父親ってすごくウザい思います」


「ぐはっ!!」


 アリーセが放った1言でパトリックさんが想像を絶するダメージを食らったようで、ノックアウトされてしまった。


 パトリックさん……。

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