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71話 アリーセ強化週間その2

「あははははははははははは、何これ凄ーい!」


 テンションが上がりすぎてキャラの変わってしまっているアリーセが、森の少し拓けた場所を荒野に変える作業に勤しんでいる。


 おや? なんだかデジャヴが……。


「イオリこの弓売って!」


「どうせ、タダで良いって言っても受け取らないんだろ?」


「当たり前じゃない、何年掛かっても払うわよ!?」


 そこまでか。 相場もわからんが、金銭を貰うつもりが無いからどうしようか悩むな。


「それで、一旦その話は置いておいて、それぞれの弓の感想は?」


「神龍弓は怖いくらいの勢いで矢が飛ぶけど私には弦が固いわ、アルテミックボウは取り回しも良いし引きやすいけど良くも悪くも短弓ね飛距離が出しにくいわ、ガーンデーヴァは何か勝手に矢にエンチャントが乗るみたいで凄く強そうだけど調節が難しいわね、異界の化合弓は引く力は弱いのに凄く強く矢が飛んで驚いたけど引き心地が特殊で連射はしにくい感じね」


 まくしたてるように、アリーセが感想を言ってくる。

 それぞれ癖があるようだが、俺からしてみるとどれも使いこなしているようにしか見えない。


「なるほど参考になる。 アリーセはどの弓が気に入ったんだ」


「全部良いと思うけど、強いて言うなら異界の化合弓かしら? こんな滑車がついた弓なんて初めて見たけど、これは良いわね。 引いた状態で保持し易いから狙いがつけやすいわ」


 アリーセはコンパウンドボウがお気にめしたようだ。


「それじゃあ、ソイツをメインにしばらく実戦でも使ってみてくれよ、それで使用感の報告書を提出してくれ」


 そう言った俺にアリーセがジト目を向けてくる。


「そうやって、実質タダで渡そうとしてるでしょ?」


 バレバレか。 しかし俺も引き下がるつもりは無い。


「使った際は必ず詳細な報告書を出して貰うから問題ないだろ、使用状況、天気、温度、距離、風向き、射角など、アリーセの弓の技術の分析に関する事も書いてもらうからな」


「対価として冒険者にとっては命の技術を聞き出そうって言うのね?」


「まあ、アリーセそれだけの価値があると思うならで構わないから、何か他の条件でも……」


「わかったわ、正直全然対価には足りないと思うから、やっぱり追加で今ある全財産渡すわ」


「全財産渡して生活どうすんだよ、ご利用は計画的に!」


 小一時間ほど、渡す、要らんの問答を繰り返し、今後の依頼の報酬から半分貰っていくと言うことで俺が折れた。

 なんというかアリーセは頑固者だ。

それじゃあ、魔導銃の他の属性弾も試射しようと思ったところで、アリーセが真剣な顔になり弓を構えた。


「感じからして推定トロール、前方2体、まだ射線は通らないけど確実にこちらに来てるわ」


「これだけバカバカやってたら寄ってくるか……」


 俺も水の属性弾を装填した魔導銃を構える。


「イオリのそれ素材が取れなくなるから、使わないでくれると嬉しいかな」


「なん……だと……!?」


 まさかの戦力外通告である。 早急に改造が必要だな。

 アリーセはトロールの姿がチラリと見えた瞬間に化合弓から矢を放った。

 矢は山なりではなく直線に近い軌道で飛びトロールの額を撃ち抜いた。

 まだ、そこそこ距離があるがズズんとトロールが倒れる音が聞こえた。

 どうやら素材採取を優先して貫通の矢を使用したようだ。

 トロールがもう動かない事を少し待って確認をしているとアリーセが弓を下ろした。

 2体言っていたはずだがもう一体は逃げたのだろうか?


「矢も弓も凄いわね、わざと弾かれやすい辺りを狙ったんだけど、矢が突き抜けていったわ。 貫通のエンチャントがかかっている矢よりも何倍も貫通力があるみたい」


「もう一体はどうなった?」


「両方倒したわよ? ほらあそこ」


 アリーセが指を指す方向を見るがよく見えないので、ああ、あれかーと適当に見えたフリをしておいた。

 いつの間に2射したのだろう。


 一緒に倒したトロールを確認しに行くと、さっき俺が爆散させてしまったトロールと同じような見た目のトロールが2体うつ伏せに倒れていた。

 アリーセは油断なく弓を構えた状態で、軽く蹴っ飛ばし死んでいるかどうかを確認していった。

 間違いなく2体とも死んでいる事を確認したところで、警戒を解いた。

 アリーセがモンスター避けの香を焚いて、嬉々として解体作業に入るが、剥ぎ取り用のナイフがなかなか皮膚を通らないようだった。


「イオリ手伝ってよ」


「いや、解体方法とか知らんし……」


「Cランクにもなって解体も出来ないとか笑われるわよ?」


「まだ(仮)だし、冒険者になってからまだ一ヶ月ちょっとしか経ってないし」


 全裸でゴブリンの巣にいた事はあるが、依頼は討伐系をぜんぜんやってないし無茶振りも良いところである。


「じゃあ、教えてあげるから、ここ押さえててー」


 急に得意げな顔で説明が始まった。 いきなりトロールとか難易度高くないか?


「サイズは違うけど基本は一緒だから良く見ててね、ここからナイフをぐっと入れて、このあたりまで来たらぐぐっと力をいれて……」


 ぐが多いな。 実演付きじゃなかったらまったくわからないところだった。 

 しかし、ふと解体に関して忌避感とか気持ち悪さとかをあまり感じていない自分に違和感を覚えた。

 思い返せば解体だけでなく、モンスターに向かって平然と魔導銃を向けていた。

 モンスターとか現実味がなくてゲームの感覚のままなのか、それともステータスの精神が上がっているからか……。

 モンスターじゃなくて盗賊とか出てきたら、また違うのだろうか?



 まぁ、今は特に困ってないから考えても仕方がないか。

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