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66話 嘘と真実

 アリーセが、何やら息巻いて依頼を受ける旨をエマに告げ、俺らは俺が初めてこの世界に来たときに居た森を担当する事になった。


「基本的に人為的に起こす事は不可能な異変を探索及び調査をしていただきますが、精査はこちらで行いますので些細な事と思われる象でも報告をしていただけると助かります」


「わかったわ、他に何か注意点はある?」


「そうですね、異変を引き起こしたのは自分だとか、この世の終わりだ等の妄言や、いたずらに不安を煽るような自称凄腕の魔法使いや預言者がすでにチラホラと出てきています。 そちらの類の対応は、街の衛兵の担当ですので捕縛やこちらへの報告は不要です」


 そんなのが居るのかよ、ますます俺がやったって言い難いじゃないか……。

 というか、そもそも言ったところでおかしな人扱いされて信じてもらえないということか?


 何やら大事になってしまったので、数日程度続けて調査をする為の準備をしてくるというアリーセと一旦別れ、俺は重い足取りでギルドを後にした。

 後でせめてアリーセには、本当の事を伝えておかねばなるまい。


 一通りの準備を終え、街の外へと向かうと、通用門で何やら騒ぎがあった。


「世界の終わりがくるぞぉー! この世の終わりだぁー!」


「あーわかったわかった。 続きはあっちで聞くからおとなしくしろ。 おい、さっさと連れてけ」


 スコットのおっさん達に、ボロボロの服を着た終末を叫ぶじーさんが取り押さえられて何処かに連行されていった。


「おう、イオリじゃねえか、ここんところ昼過ぎだとか夕方ばっかりに街を出てたのに、今日は珍しく早いじゃねーか」


「今日は依頼だ。 守衛って門番だけかと思ったら、あーいう仕事もやるんだな」


「まぁな、最近の異変続きで変なのが湧いて出てきやがるからな」


「異変か……。 実はあれ全部俺がやったんだよ」


 あ、ずっとそのことを考えていたせいでポロリと自白をしてしまった。


「はっはっは、冗談は顔だけにしとけ。 昨日も二人ばかり捕まえたから自称凄腕の魔法使いやらは間に合ってんぞ? そもそもお前はすでに領主様んとこで家庭教師やってんだから、取り入るのにそんな話をでっち上げる必用ねーじゃねーか、もうちょっと捻らんとウケないぞ?」


 まるで信じてない上に、冗談としてのダメ出しまでされてしまった。

「異変を自分がやったって言うと捕まったりするのか?」


「そりゃおめえ、そういう騙りをする連中はあわよくばお貴族様に取り入って金をせしめようって食い詰め者か、どっか頭がおかしい奴らだからな、問題起こす前にとっ捕まえておくに越したことはねぇんだよ」


 すでに領主のところに家庭教師に行っていて、そこそこ金を持っていることを知っているスコットのおっさんには、そういう理由で冗談と受けとられたようだ。

 まぁ、いろいろ騙ってるのは今更なので、しらばっくれておいた方が良さそうだな……。


「そうか、実は俺、極東のさる王国の王子でさ~」


「数々のご無礼、すみませんでございます!」


「冗談だっつの!! そっちは真に受けんのかよ!!」


 ものすごい勢いで頭を下げられた。 土下座に移行しそうなスコットおっさんを必死に宥める羽目になった。


「心臓に悪い冗談はやめてくれ。 一定以上の身分だって言われても信じられる要素が多すぎるんだよ」


「そうなのか?」


「……そういう無自覚なところがすでにそうなんだよ」


 本当のことは全然信じてもらえないが、真実が一切含まれない完全なる嘘は信じられてしまうとか何なんだろうなこの状況は。


 そうこうしているうちに準備を終えたアリーセがやってきた。


「ん? どうしたの?」


「いやなに、イオリが王族だとか信憑性のある冗談抜かすから心臓に悪いって話をしてたとこだ」


「あー、イオリはご領主様とも普通に会話してたし、本当に冗談なのかを疑っちゃうわよね」


「絶対無いから安心しろ!」


 不毛そうなので、さっさと森に向かうことにする。

 すっかり歩き慣れた道になってしまった森まで続く道をアリーセと二人で歩く。

 だんだん人がまばらになり、森にたどり着く頃には俺とアリーセだけになる。

 

 一応アリーセには今回の騒動が全部俺のせいだと伝えておいた方が良いだろうな。

 まぁ、ドラゴンの件が俺のせいなのは知っているわけだし、うすうす気がついている可能性もあるだろう。


「あのさ、アリーセ気がついているかもしれないけど……」


「うん、分かってるわイオリ」


 なんだ分かってたのか、心配するまでもなかったようだ。

 しかし、分かってて依頼を受けたのはなんでだろうな?

 楽に依頼料が入るからか?


「まだ遠いけど推定ゴブリン、総数15、前方で待ち伏せしているっぽいわね」


「そっちかよ!」


「ん? 何の話……。 あっこっちか、何か大きなのが居るみたいね、ゴブリンに気を取られて気が付かなかったわ。 結構遠いのによく気がついたわね? こういう時は、モンスターの種類、数、方向、進行状況って順で報告し合うと良いわよ、順番は多少前後しても構わないけど、この場合だと、不確定大型モンスター、総数1、左前方遠距離、こちらには気がついていないって感じね」


「え? あ、ああ、わかった」


 間が悪くモンスターと遭遇してしまったようだ。 気持ちを切り替えて戦闘に備えよう。


「ゴブリンの方はこちらに気がついていて待ち伏せしているっぽいけど、大型のモンスターの方はこちらに気がついているような動きじゃないわね。 ゴブリンとの戦闘中に乱入されて両方同時に相手するとなると厄介だから一旦下がって様子をみた方が良さそうね」


「わかった。 でも下がったらゴブリンは追いかけてきたりしないのか?」


「待ち伏せしているってことは、数から考えても多分頭のいい指揮が出来るゴブリンチーフあたりが居るはずよ、探りにくるとは思うけど、闇雲に追いかけてくるということは無いと思うわ」


 ゴブリンの癖に知恵が回るとか、特別なやつが居るようだ。

 ゴブリンチーフといえば、この世界で初めて倒したモンスターだったな、あの時はやばかったけど、今ならそんなに手間取らないで倒せるんじゃないかと思う。

 実際に戦闘で使うのは初めてだが一応ハルバードをアイテムボックスから取り出して、いつでも戦闘に入れるように準備だけしつつ、アリーセの支持に従ってゆっくりと後退していく。


「このまま、ゴブリンが動かなければ、ゴブリンが待ち伏せしているあたりに大型モンスターが接触しそうね。 ゴブリンの仲間ってことは無いと思うから勝手に潰し合ってくれると助かるわね」


「モンスター同士って仲悪いのか?」


「仲が悪いというか、種族が違えば普通は協力関係にはならないわね。 むしろ弱いモンスターは強いモンスターに、強いモンスターはより強いモンスターに食われるものよ」


 モンスターの世界は弱肉強食の世界のようだ。 モンスターに転生とかしなくて良かった。

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