64話 魔改造
結論から言えばこの魔導銃はこのままでは、とてもじゃないが武器としては使えない。
水属性弾は勢いよく水の塊が発射されるが、5mもしないうちに広がって霧散してしまう。 消火活動をするのには使えるかもしれない。
風属性弾は空気の塊が勢い良く飛ぶだけで、これは10m近くまで飛んでいるようだが、距離に比例して弱くなっていき最後は木の葉が舞う程度すら力を失っていた。
ゴミや枯れ葉などを吹き飛ばすブロウガンとしては使えるかもしれない。
土属性弾は多少マシでビー玉程の石が複数拡散して発射されたが、ショットガンのような指向性のある拡散では無く、一応前方には飛んでくれるので自分の方まで飛んでくると言うことはなかったが、四方八方に飛んでしまうので狙った場所には1つの石も飛んでいかなかった。取り囲まれた時に使えば前方向だけ、攻撃出来るかもしれない。使える場面が限定的すぎるし、スキルか魔法を使った方が早い。
まさに発展途上の武器といえるが、ワトスンは新しい武器だと言っていた。最初にできた物がこれであるなら、むしろ構造などはほぼ完成しているという点では驚異的だ。
鑑定をしてみよう。
《魔導銃》
:鉄とミスリルで作られた魔石を飛ばす魔道具の試作品
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試験作成された魔導銃
攻撃力 3
補正 ー126
射程 3
強度 230
耐久 147/204
使用可能弾 専用
品質 C
各種コード
………
……
…
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「攻撃力3って……しかもマイナスが着いてるパラメーターがあるだと?」
そこでふとゲームの時の事を思い出す。
俺は殆ど使用していなかったが、ゲームでは弓等の武器の攻撃力は本体で叩いた時の攻撃力で、矢の方に攻撃力が設定されていた。
矢の攻撃力に弓の補正をつけたものが、矢を射った際の最終的な攻撃力となっていたのである。
弾丸の方も見てみよう。
《加工された魔石》
:球状に加工をされた火の魔石
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火属性弾 規格外専用弾
攻撃力 283
属性 火
品質 C
各種コード
………
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やっぱり弾の方に攻撃力があった。
魔導銃の方にマイナス補正があるってことは、威力が半分くらいになってしまうんだな。
しかし規格外ときたか。
当然、試作品で手作りなら規格などあるわけもない。
この規格というのは、存在していたか記憶は無いが、おそらくゲームであった銃の規格だろう。
「ふっふっふ、これは改造しない手はないな」
チートツールを起動して、解析ツールの方の表示からコードを打ち込んでいく。
「コピペしてぇな本当に」
コードにはゲームにあった物は短く、ゲームに無かったこの世界の物はやけに長いという傾向があって、解析ツールからチートツールにコピーすることができないので、目で見てチートツールの方に書き写す必要があるのだ。
一文字でも間違えると効果が無いから、打ち込みミスが無いかチェックもしていかないとダメなので、さらに時間がかかる。
この手間のせいで気軽に改造出来ないのが難点だな。
アイテムボックスに入る物限定だが、ただ数を増やすだけならば、アイテムボックス内の個数の部分だけいじれば良いだけなので、一応先に魔導銃を複製しておく。
コード作成にそれなりの時間がかかったが、以前剣を改造した時と同様に数値を変えると、魔導銃の大きさや材質が変わっていく。
攻撃力と強度や耐久を上げていたら、銃身が肉厚になって銃口が塞がっていき、ただの鈍器になってしまったのは予想外だった。
銃として使えなければ意味がないので、数値を一旦元に戻し、補正と射程、品質を上げることを優先する。
補正と射程を上げると銃身が、長くなっていき、品質を上げると少し短くなった。
おそらく品質が上がると銃身の精度が良くなるからだろう。
あまり長いと取り回しが悪くなってしまうので、銃身が30センチ程度くらいまでにしておく。
強度と耐久は上げすぎると鈍器化して弾が撃てなくなるので、材質が変わるだけで済む程度に抑える。
限界を見極め満足行くまで数値をいじりまわし、こんな物かと妥協した頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
「まあ、こんな所か。 先込め式なのは仕方が無いとしても後で銃床はつけた方が良さそうだな」
全長40センチ程度の、見た目はカリビアンな海賊が持っていそうな銃に仕上がった。
あれよりはちょっと長いか?
もう真っ暗だがこのまま試してから帰ろう。
《魔導銃》
:アダマンタイトとオリハルコンの合金で作られた魔石を飛ばす魔道具
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単発式魔導銃
攻撃力 12
補正 +570
射程 360
強度 1480
耐久 1670/1670
使用可能弾 専用
品質 S
各種コード
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……
…
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弾丸の方は数値を変えるとサイズが変わってしまって使えなくなるので、品質を上げるだけに留めた。
まずは通常弾からだ。
クズ魔石を銃口から詰め込み弾丸を装填する。
一度も命中しなかったので、置きっぱなしになっている的に向かって狙いをつける。
引き金を引いたとほぼ同時に銃口から一瞬火が吹き出し、10m先の的が弾ける。
「おー、ちゃんと当たるようになったし、威力もありそうだな!」
思っていたよりは反動も少なく10mの距離でしっかり命中させられたので、そこからさらに10m程の離れ目算で20mくらいの距離から再び撃ってみると、この距離でもしっかり命中した。
徐々に距離を離していくと、40m程度までなら十分命中する事がわかった。
「照準器が何も無いとこの辺が限界か、簡易的な照準器と銃床つけたら、もっと遠くても大丈夫そうだな」
銃自体の精度が上がってもライフリングと呼ばれる弾丸に横回転を与えジャイロ効果によって弾丸を安定させる仕組みが無く、弾丸もボール状のものでは、飛距離も名中精度にも限界はあるが、現状ではこれが限界だろう。
続いて本命の魔石弾を試そう。
魔石が高価だから金属弾を飛ばせるようにもしたんだとは思うが、魔石弾の場合、魔石弾単体で発射可能なのだから弾倉をつけて連発させるのも難しくない気がするな。
「せめて後方装填式じゃないと弾込めが面倒くさいな」
初期型の改良品に期待し過ぎても仕方が無いので、サクッと魔石弾の試射をしてしまおう。
品質をSにして、宝石のようにキラキラとしている火の魔石弾を装填し40mくらいの距離から的を狙う。
予想外の反動等に注意して、慎重に引き金を引く。
次の瞬間、目の前が炎で覆い尽くされる。
体中に炎の熱を感じたところで急速に炎が遠ざかり、炎が直径1m程の火球であったと気が付いた。
火球はあっという間にまっすぐ的に着弾し、轟音とともに火柱が上がる。
火柱の高さは軽く50mを越え、40m程度の距離では肌を焼く熱と明るさで、まるで天まで達しているかのような錯覚を受ける。
とりあえず俺は、その場から脱兎の如く逃げる事にした。




