61話 魔導銃
なんだろうな、武器屋に行ったときもそうだったけど、男の子としては銃とかちょっとワクワクしてしまうな。
「買う前に試し撃ちとかしても構わないか?」
「そんな事したら、弾薬代でお店が潰れちゃうよ」
「そりゃ売れないわけだな」
保守的とか関係なく、ちゃんと使えるかどうかも分からない武器に、大枚を叩く冒険者が居るとは思えない。
自分の命がかかっているからだ。
「じゃあ弾薬代払うから射たせてくれ、流石にまともに弾が出なかったら要らないからな」
「うちの魔道具は、もし動かなかったらちゃんと無償修理するし、在庫があれば交換だってするよ?」
安心ですよ?と行ってくるが、そういう問題ではない。
「他の魔道具はともかく、武器はいざ使おうって時に使えなかったら命に関わるだろう? 見た事もない武器で試しに使って見ることも出来なかったら、信頼性が無いだろ? それなら使い慣れた武器を買うってもんだ」
「なるほどー、それでうちの店の武器はさっぱり売れないのかー。どうして誰も教えてくれないんだろう?」
それって、ここで売ってる武器って使い方が特殊だったり、燃費が悪い武器ばっかりってことなのか?
「いやそれ客は普通教えてれないだろ?」
「なんで?」
ワトスンが耳をパタパタさせながら首を右にかしげたり、左にかしげたりしている。
くっそう、その耳触りたいぞ。
「客は品物買いに来たんであって、何かを教えに来たわけじゃないからな」
「そーなのかー」
そう言いつつも、まだ納得はしていないようで耳が寝ている。
「そういう情報だってタダじゃ無いんだぞ? タダじゃない物を欲しいとも言っていないやつにホイホイ渡す奴なんて居ないだろ? 解るかねワトスン君?」
「それじゃあ僕はお兄さんにお金を払わないといけないの!? 今あんまり持ち合わせないんだけど」
「財布しまえ。 なんで、その話だけで金出す気になっちゃってんだよ!? 詐欺とかにあったら一発で引っかかりそうだな!」
この子の将来が、パパは心配です。
「あーそれねー、お父さんにもよく言われてるよ」
「よく言われてるなら治そうな?」
「大丈夫! 僕意外と腹黒いからそういうのには騙されたことないよ!」
「自分で腹黒いとか言うなし」
なんというか、自由な奴とでも表現すれば良いのか、話していてツッコミが追いつかない……。
「まあ、良いか、話が進まいので試し撃ちしても良いのか駄目なのか決めてくれないか?」
「えー、ここで撃たれても困るんだけど?」
「ここで作ってるんだろ? 動作確認とかで撃てる場所とかあるのかと思ったんだが……」
魔道具は自分で作ったというような事を言っていたが、ただの店番なんじゃないかと思ってしまう。
会話からは、とてもちゃんとした魔道具を作れるようには思えないいんだよな……。
「それ作った時、動作確認で撃ってみたら工房がメチャクチャになっちゃったんだよね」
室内でぶっ放したんかい。 いや元の世界にも室内射撃場とかあるだろうけど場所を食うので普通は外でやるものだろう。
「だから、撃つならどっか外でやってきてほしいかな」
「どっかってどこだよ、持ち逃げされたらどうする気なんだよ」
「え、持ち逃げするの!?」
「しねーよ!」
あったばかりの俺を信用しているのか、盗むとかそういう観点が無いのか判断に苦しむ……。
「あーもう良いや、それ買うから売ってくれ……」
「どの給湯器?」
「給湯器じゃねーよ! なんでこの話の流れで給湯器買う話になるんだよ!?」
ワトスンが顎に手を当てて考える素振りをする。
って、ここで何か考えるところがあったか?
「……ランプの方だった?」
「ランプも要らねーよ! どう考えても魔導銃を買うながれだろ!?」
なんで心底意外ですって顔してんだよ。
値段はもう聞いているから、さっさと支払いをしてしまうことにした。
「こいつの……魔導銃の使い方を教えてくれ」
また給湯器とか言われないように指示代名詞をなるべく使わないようにしよう。
だからなんで不思議そうな顔をするんだ?
「本当に買うの? まあ良いけど、使い方はね……」
使い方は先込め式の単発銃と似ていて、この銃用に加工された魔石を棒で突めこんで引き金を引けば発射されるという仕組みのようだ。
発火するクズ魔石を詰め込んで金属の弾を詰め込んでそれを発射することも出来るそうだが、まっすぐ弾が飛ばないということだった。
弾がまっすぐ飛ばないのは単純に銃身の精度と旋条が無いせいだろうとは予測が出来るが、その話はまた今度で良いだろう。
早く魔導銃を撃ってみたいというのが大きいことは否定しない。
「不具合とかあったら持ってきてね」
「ああ、わかった。 さっそく撃ちに行ってくるけど、また来るからその時は他の魔道具も見せてくれ」
やたらと給湯器を薦めてくるワトスンを振り切って、店を後にする。
もうすぐ日が暮れる時間だけど、ちょっと撃って帰ってくるくらいなら問題なかろうと、街の外へ向かった。
作者はリアルでコレと似た会話をしたことがあります……。




