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55話 燃焼について

可能な限り毎日更新頑張りますが

時間は不定期とさせていただいております。

「私の目がぁぁぁ」


「魔力を込めすぎですわ! 早く消してくださいまし!」


 杖の先端にある精霊石とかいう宝石っぽい所が、目を閉じても無駄なくらい発光している。

 そして、消したいのはヤマヤマだが、杖をコンデンサーに見立てしまったので杖に溜まった電気がまだ残っていてすぐに消すことができない。

 スイッチを忘れてしまったな……。


「消せないのならアイテムボックスに杖をしまえば良いですわ!」


「わ、わかった」


 すぐにアイテムボックスに杖を収納して事なきを得る。

 杖が金属製で良かった。


「一体どれだけ魔力を込めたんですの!?」


「1万ミリアンペア、パーアワー位?」


「意味がわかりませんわ!」


「確かに、コンデンサーはファラドで示すのが正しいもんな」


「だから言っている意味がわかりませんわ!」


 初めてまともに魔法を使ったんだから多少は大目に見てほしい。

 ぶっ飛んだりしなかったし。


「普通は明るくするのに苦労するのに、目が眩むほどとは恐れ入りましたわ」


「いやスマン、電圧を考慮してなかった」


 変換効率がどのくらいかわからないが、魔力を電気に変換すると想像以上に高電圧になるようだ。

 省エネのイメージでLEDを想像してしまったが、わざわざ難しい事を考えずに、普通のフィラメント電球で考えた方が楽だったかもしれない。


「もう1回発動体無しでチャレンジしてみよう」


「いえ、コリンナ様がみえたようです。 ここまでですわね」


 修練場の扉が開きメイドさんとコリンナ様が入って来た。

 エーリカがコリンナ様の方に向かって行くので、斜め後ろ位についていく。


「おはようございます。 エーリカ先生、イオリ先生」


 カーテシーで挨拶をされた。いやカーテシーがどのようなものか知らないけど。

 こちらは普通に頭を下げて挨拶を返す。


「最初は私の授業から始めさせて頂きますわ」


「はい、よろしくお願いします」


 では、どのような感じで授業がされているのか、見学させてもらおう。


 なんとなく修練場だし的に向かってパカスカ攻撃魔法をぶっ放すのかと思っていたのだが、テーブルセットにメイドさんとがお茶やお菓子を用意してくれて、お茶会みたいな雰囲気になっている。

 女性だけの席に混ざってしまったような居心地の悪さを感じてしまうな……。


「では、イオリさんもいらっしゃるので、少し復習をさせていただきますわ。 私の流派は魔法現象を精霊が起こしていると捉えて魔法を行使致しますが、エルフ等が使う精霊魔法とは異なります」


 エーリカは4大元素を元に光と闇を足した6属性の精霊がこの世の現象を起こしていると捉えて魔法を行使しているらしい。

 しかし、エルフは精霊が実際に見えるという話だが、人間には見えないそうなので、精霊の見えるエルフから話を聞いて、精霊がそこに居ると頭で想像をすることで現象を捉えているらしい。


 精霊が居るとか、とてもファンタジーっぽくて素晴らしいのに科学や物理法則も適応されているとか理不尽だな。

 摩擦とか慣性とか熱とか魔法や精霊の不思議パワーでなんとかしてくれれば良いのに。

 というかあれか? 酸素が無いと火の精霊は存在出来なくなったりするのか?


「では、ご自分でやりやすいもので良いですから、魔法を発動させてくださいませ」


「は、はい」


 コリンナ様が緊張した様子で小さな銀のワンド持って修練場の外に面している縁に立つ。

 ワンドを前に突き出して、詠唱の様なものをゴニョゴニョと唱えている。

 小声で良く聞こえないが、火の精霊にお願いをするような詠唱のようだ。


「ティンダー!」


 現象を確定する為に魔法名を叫ぶが、何かが起こったという様子はない。

 エーリカによると【ティンダー】はごく初歩の発火の魔法だそうだ。


「ティンダー! ティンダー! てぃんだあぁっ!」


 何も起こらないのでムキになって魔法名を叫ぶが、やはり何も起こらない。


「なあ、エーリカ先生、もしかしてコリンナ様は魔法が使えないのか?」


 小さな声でエーリカに聞いてみる。

 俺みたいに使い方が良くわからなくて発動しないのか、それとも、まったく才能が無いのかで随分と話は変わってくる。

 もし、才能が全く無いのならば無理にやらせるのは酷な話なんじゃないかと思う。


「発動しない、という意味では使えませんけど、才能の有無でいえば間違いなく使えるはずですわ」


「それじゃあ何が問題なんだ?」


「魔力を何に変化させるのかがわからないのです!」


 コリンナ様が戻ってきて会話に参加してきた。


「今の魔法も、目に見えない火の精霊の何に魔力を変化させれば火がつくのかが分からないのです。 そもそも火の精霊が何で出来ているのかも分かりません。 他の方法でも結局魔力をなにに変えれば良いのかが分からなくて、上手く行かないんです。 きっと私がバカだから……」


 コリンナ様はそういうとうつ向いてしまった。

 エーリカが一生懸命に慰めつつ、精霊の存在とか自然界での働きなんてものを説明している。

 俺が試した【ライト】の魔法も、電圧を指定していないのに電気のイメージでも光ったわけだから、多分魔法ってやつはもっともっと大雑把でも発動するんだと思う。

 だから発動できないということは、難しく考えすぎてイメージが出来ていないか、魔力を変化させた先に具体的な何かがあると思っているんじゃなかろうか?


「コリンナ様、火が燃えるのに必要な物が何か分かりますか?」


「え? えと、十分な数の火の精霊です」


 エーリカが正解!とばかりに頷いているが、ここは少しファンタジーを忘れてもらおう。


「一般的にはそう言われているのかもしれませんが、現実に起こっている現象から見ると違います」


「「えっ?」」


エーリカとコリンナ様の声が重なった。 よしここからは俺のターンだな。


「火が燃えるのに必要なものは3つ、『燃えるもの』と『温度』と『酸素』です」


 俺はアイテムボックスからアリーセに水についての解説をするために用意してあった家具アイテムの黒板とチョークを取り出し、でかでかと『燃えるもの』『温度』『酸素』と書き、その上に『火』と書いた。


「この内、酸素は今我々が吸っている空気中に2割ほど含まれています。 なので、魔力で用意すべきものは残りの2つ『燃えるもの』と『熱』です。 一度火がついてしまえば、連鎖反応によって燃え続けるので『熱』は最初の一瞬だけで構いません」


 俺は板書をしながら火、すなわち燃焼という現象についてとくとくと説明を始めた。

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