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53話 家庭教師に行こう

可能な限り毎日更新頑張りますが

時間は不定期とさせていただいております。

 翌朝、何だか顔の赤いアリーセと一緒に黒パンのサンドイッチで朝食をとる。

 ホットドッグを真似する所が増えてきたら、クーリアおばさんがサンドイッチやハンバーガーのような物も提供を始めたので、売れ行きは減るどころか増えているという事だ。


 朝食を食べたら、アリーセと別れ領主の館に行く準備をする。

 まあ準備と言っても着替えるだけだ。


 見た目装備の服だが普段着ている古着と比べると大分きっちりしている。

 それでも領主の館で着せられた服に比べればずいぶんと楽なのは、おそらく生地の厚さとか重さのせいだろう。

 こちらの世界で見た服はどれも生地が厚めで重みがある。

 昨日着させられた服も厚手のカーテンのような分厚い生地で出来ていたので結構動きにくさを感じたが、俺が今着ている服は比較的薄手の生地で出来ていて立っているときに服の抵抗を感じない。

 もともと、3Dで体に合わせて作成されている服なので完璧な立体裁断がされているようなものだからだろう、元の世界でもこんなにぴったりな服というのには出会ったことがない。

 ただ、あくまで立ってじっとしている時に限った話なので、動いても吸い付くようにピッタリとした鎧を選べるドワーフ(オットー君11歳)の目というものは相当にすごいのだろう。

 いつか自重無しの素材を渡してオーダーメイドの装備を作ってもらいたいものだ。


 大分スタイリッシュになっているが、一応三銃士をイメージした服なので羽の付いた豪華な帽子もセットでついている。 被っていくことにはしたが帽子は流石にちょっと重い。

 ゲームではこういった重さを感じなかったので、装備によっては重すぎて装備するのが辛いような物も結構あると思う。


「うわ、誰かと思った」


 着替えて食堂に下りていったら、まだ食堂にいたアリーセに開口一番そう言われた。


「良いだろ? 昨日着せられた服より楽なんだ、アリーセから見てなんか変なところとか無いか?」


 この世界的におかしい部分とか、変な意味に取られる部分がないかをアリーセに見てもらう。


「大丈夫だと思うけど、お貴族様が見てどう思うかなんて流石に分からないわね。 おばさんが意外と詳しいからおばさんにも聞いてみたら良いんじゃない?」


「意外とは余計だよ!」


 おっと、クーリアおばさんがサンドイッチの包みをもってやってきていた。 いやーあははと取り繕うアリーセに、お昼のお弁当であろうその包みを渡してから俺を足先から頭の天辺まで眺めてきた。


「ふむ、なかなか男前に決っているじゃないか、でも腰の短剣は外して普通の剣にしときなよ。 普通の剣なら護身用って扱いになるけど、隠せるサイズの武器を身に着けていくと暗殺を疑われちまうからね」


 アイテムボックがあるので別に短剣じゃなくても隠せてしまうのだが、アイテムボックスは誰にでも使えるわけではないので、なるほど、と納得をする。

 デザインでついていた短剣を外して、以前ゴブリンの剣から作ったミスリル合金の剣をアイテムボックスから取り出して腰に下げる。


 余談だが、剣を使用初日に壊したので改めて買おうとドグラスの親父さんのところに行ったら、おめーに扱える剣なんざねーよ、斧か鎚でも使ってろ! と剣の販売を拒否られてしまったのだ。

 一応、頑丈そうなごっつい、ハルバードという斧と槍を足したような武器をタダでくれたけど、扱い方が難しくて力任せに振り回すことしか出来ていない。

 剣術のスキルのように、スキルをチートツールで身につけてしまえば良いのだろうが、槍なのか斧なのか分類がよくわからなくて一旦保留にしていたりする。

 ゲームにもあったはずの武器だが、全然使っていなかった系統の武器なので分類をよく憶えていないのである。


 不用意にスキルを使って、ぶっ飛んだり、転んで顔面強打したりしたりするので、痛い思いをする覚悟が出来ないというだけでもあるが……。


「それから、帽子は顔が見えるように被りな。 視界が悪くなるのに顔を隠すってのは怪しいからね、貴族街じゃ衛兵捕まえにやってきて面倒くさいことになるんだよ」


 と、クーリアおばさんに帽子を被り直させられたりボタンを一番上まで止められたりと、服装を整えられた。

 最後にばちーんと背中を叩かれて、さあ張り切って言ってきな!と送り出された。

 ちょっと、元の世界の自分の母親を思い出してしまった。 全然似てたりはしないのだが……。


 街に出ると、視線を感じる。

 下町で派手な格好をしていたら俺でも見るだろうから仕方がないか。 市場を抜けて教会を過ぎると、貴族街が見えてくる。

 全体の敷地としては広いが、住んでいる貴族はそう多くはないらしい。 物理的に一軒一軒が大きく、広い庭もあるからということだ。


 下町と貴族街は明確に別れており、柵や壁こそ無いが道を挟んで急激に街並みが変わる。

 通りにはチリひとつ落ちていないし、舗装された地面も目が痛いくらい真っ白である。


 貴族街に入り領主の館に向かって歩いていると、二人組の衛兵がこちらにやってきた。

 門に居る守衛と比べると服装が随分と立派だ。


「ここに如何なる要件でまいられた? そちらの身分と目的を伺いたい」


 それなりの格好をしているおかげか、随分と丁寧に対応してくれている。


「ランクC冒険者、イオリコスイです。 本日よりしばしの間ご領主様の館で家庭教師として務めることになりました」


 アイテムボックスから通行証を取り出して見せながら名乗る。


「確認した、コリンナ様の新しい家庭教師が来るという話は聞いている。 行っていいぞ」


 どうやら、見回りの衛兵にもちゃんと話が通っているようだ。 領主の館に到着するまでに8回ほど似たようなやり取りをしたが、すんなりと通してくれた。 日頃からそんなに警備する必要があるのだろうか? とも思わなくもない。


 領主の館に到着したら門前に居る衛兵に裏に回るように指示された。 どうやら使用人用の出入り口があるらしい。


 領主の館の広い敷地をぐるりと回り込んで、裏道のような所に出る。 この辺は掃除こそされているが別に地面が白かったりはしないようだ。


 当然だが裏口にも衛兵が立っていて、家庭教師に来た旨を伝えると中に通された。

 入った先は使用人の控室のような所だったが、勝手がわからずキョロキョロしていたらすぐに若いメイドさんが迎えに来てくれた。

 武器を預けるように言われたので腰の剣を外して渡す。

 安全のためなのは分かるけどアイテムボックス持ちに対しては意味が無いような気がするが、形式だけのものなのだろうか?


 昨日実演を見せた、修練場に通されるとコリンナ様はまだ居ないようだがエーリカはすでに来ていた。


「遅かったですわね?」


「ああ、すまん。 来る途中に何度も衛兵に呼び止められてな」


「そうでしたの。 そのうち顔を憶えられればそういったコトもなくなりますわよ」


「だといいな」


 遅いと言われたが庶民が時計を持っているわけでも無し、朝食後になんて大雑把な時間指定しかされてないから、どの位で遅いという扱いになるのかよくわからない。


「そうそう、事情はうかがってますわ。 コリンナ様の授業まではまだ時間があるので、それまでの間でしたら疑問点にお答えいたしますわよ?」


「なにとぞよろしくお願いします!エーリカ先生!」


 これで魔法がちゃんと使えるようになったら良いな!

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