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50話 試供品です

可能な限り毎日更新の予定ですが、時間は不定期とさせて下さい。

 俺とアリーセは『結界の間』と呼ばれる窓の無い部屋に通された。

 暗さを緩和する為か、それとも別の意味があるのか、部屋は白を基調とした明るい印象だった。

 天井から下がっているシンプルなシャンデリアからは、ロウソク等とは違う昼白色の明かりがついている。

 特徴的なのは、部屋の4隅に青白く輝く鉱石のような物が真鍮製の燭台に設置されている事だろう。

 これが結界なのだろうか?

 鑑定してみよう。


《ちいさな結界石》

:結界の礎として使う鉱石。内包された魔力により結界を維持する。

魔力を込めることで再度使用することも出来る。


---------------------------------------

青の結界石(小) 

消費アイテム

2時間程度内側に有るものを隠蔽する効果がある。


品質 B


コード

……

---------------------------------------


 これは盗聴防止とかそういう感じの物っぽいな。


「この部屋は、音や魔力、スキルの効果などを遮断することが出来る部屋でございます」


 ヴァルターさんがお茶を淹れてくれながら部屋の説明をしてくれた。

 予想通り密談等に使われる部屋のようだ。


「では、さっそくだが……」


 ここまで徹底して外部からのアプローチをシャットアウトした部屋でしなければならない話とは何だろうか?

 少し緊張してきた。


「先程のポーションを頂こうじゃないか」


 そっちが先かい!

 しかもためらう事なくキュッと一気に飲んでるし。


「覚悟していたほど酷い味では無いな。 おおっこれは凄い! ここ数年間ずっと悩んでいた頭痛と胃の不快感、耳鳴りと目のかすみに鼻詰まり、腰痛に肩こり、全身の虚脱感が一気に無くなったぞ!」


 どんだけ体調不良患ってんだよこのイケメンは! 現代人か!?


「このポーションは後いくつある? 全部買うぞ!」


「ジークフリード様、差し出がましいようですが、それ程の効果のあるポーションを購入出来るような予算はございません」


「な!? いやしかしこれは素晴らしいポーションだぞ!? このポーションを作成出来る薬師を東方より招くというのはどうだ!?」


「残念ですが、そのような予算もございません」


 ジークフリード様がこの世の終わりみたいな顔をしている。

 このポーションならノービスが覚えるスキルの【ポーション作成LV1】で材料さえあればチートツールを使うまでもなく作れてしまう程度だったりする。

 問題はその材料がこの世界にもあるかどうかが分からないことか。


「あの、そのポーションは自分で作成したものですし原材料もそれほど高いものでは無いので、気に入って頂けたのなら試供品として10本ほどお渡ししておきますけど?」


 金髪のイケメンが絶望的な顔をしているのを見ていると、何だか切ない気分になってきて、ついそんな事を言ってしまった。


「なんだと!? ヴァルター! イオリを薬師としても雇うべきじゃないか?」


 我が意を得たりとばかりに俺の雇用を薦めるジークフリード様だったが、ヴァルターさんは首を振っている。


「心中お察しいたしますが、家庭教師の費用捻出だけでも少々厳しい状況でしたので、これ以上は無理でございます」


「あ、いえ、別にその程度ならば家庭教師ついででも……」


 と言うか、金貰ってもコレ以上増えないから、そんな状況で捻出されても、こちらの胃がやられてポーションのお世話になってしまう。


「それはいかんぞ! 労働や物に対し対価を払うというのは法で定められている事だ。権力者が率先して法を破るなどあってはならんのだ」


 うーん、理想はそうかもしれないが、普通権力者って清濁合わせ持つものじゃないのか?

 つまり真面目過ぎて苦労しているわけか。

 人としては好感が持てるが、政治面で考えると頼りないとも言えるな。


 でもまあ、個人的にこういう人物は嫌いでは無い。


「では、対価としましてココで得られるモノで構いませんので東方の諸国の情報を頂けないでしょうか?」


「東方の情報を伝えるのはやぶさかではないが、それでは対価とはならぬであろう?」


「そんな事はありません。 自分にとってその情報は千金を積んでも欲しいモノでございます。 むしろこちらが対価を払わねばならないと思うくらいです」


 ひとまず20本の【ローコンディションポーション】を取り出して並べる。


「そういう事であれば、私は構わないが……」


「イオリ殿のお気遣いに感謝をいたします」


 戸惑っているジークフリード様をよそに、ヴァルターさんが深々と頭を下げてくる。



「それで、この部屋に来た本来のご用件は何でしょうか?」


 ポーションはついでの話で、対価がどうこうという話は他でも出来る。

 本題に入って貰おう。


「そうだな、ポーションについては一旦置いて本題に入ろう」


 ジークフリード様はお茶を一口飲むと、こう切り出して来た。


「イオリは、大粒の魔晶石をいくつも所持しているとか?」


「はい、確かにいくつか所持しております」


 カンストで999999個程な!

 しかし、魔晶石か……。

 戦争で使ったり、大掛かりな魔道具に使用するとは聞いているが、ゲームのとき1個120円くらいの魔晶石は、この世界じゃ『神の使徒』なんて称号を持ったエンシェントドラゴンが探しに来るほどのものだ。


 ここはやっぱり売れとか譲れという流れだろうか?


「そうか、寄こせなどとは言う気はないので、結界石が耐えられないので1つだけ見せてもらっても良いか?」


 そういえば、あのドラゴンは魔晶石の魔力かなにかを感じてやってきたのだったな、それで『結界の間』に来たのか。

 ん? そんな素振りとか無かったと思うが、ドラゴンがやってきたのが俺のせいだってバレてるのか?

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