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43話 領主との面会

 ストレスにも効く状態異常に掛からないハイコンディションポーションのお陰か、緊張が完全に無くなったわけでは無さそうだが、冷静な口調で淡々と自分の状況を説明してくれるアリーセだった。

 なかなかのお姫様扱いだった様で、もし素の状態だったら気絶していたんでは無いだろうか?


 ただ、羞恥心にもポーションの効果があるのかアリーセが元々無頓着なのか、詳しい下着の付け方まで追加情報を俺に報告しなくても良いと思う。

 別に夢が詰まっていてくれれば良いので、脇のお肉をブラに詰めるとか俺に説明しなくて良いです。


 確かに、アリーセの胸のボリュームは増している様に思える。ドレスのデザイン的に谷間が見えるので思わずガン見してしまったが、怒られたり恥ずかしがられる事もなく、メイドさん達が如何にしてこの谷間を作りだしたのかを聞かされた。

 まあ、非常に眼福ではあるので目に焼き付けつつ、話は聞き流すようにして夢を壊さない様に努めた。


 もしかして、アリーセは普段ノーブラなのでは? という別の夢のある疑念が湧いてきたあたりで部屋にノックの音が響いた。


「失礼します。 ご準備がお済みになられたようですので、ご案内に上がりました」


 入室の許可を出すとヴァルターさんが入って来た。やっと面会が出来るようだ。


「はい、それではよろしくお願いします」


 アリーセの手を取って、ソファーから立ち上がらせる。

 作法的にやったと言うより、ドレスで動き辛いのか、ふかふかのソファーから立ち上がれずわたわたしていたので手を貸しただけだったりする。


 ヴァルターさんの後に続いて長い廊下を歩いて行く。

 戯れに飾ってある壺や甲冑等を鑑定しながら歩いていたら、柱の影に『偽装扉』とか見えてしまったので、慌てて面白半分に鑑定をするのを止める。

 というか、鑑定でそんなことまでわかってしまったら、隠し通路とか発見し放題になってしまうんじゃなかろうか? セキュリティ上大丈夫なのか心配になるが、俺が心配した所でどうしようもないか。


 立派な服を着て腰に剣を携えた衛兵が二人立っている、一際高級感がある扉がそこにあった。全体に緻密なレリーフが掘られていて触るのが躊躇われるような扉だ。


「アリーセ・ベルガー嬢、イオリ・コスイ殿、ご面会に参りました」


「入れ」


 中から入室の許可が出ると、ヴァルターさんが一歩横に移動し、扉の両サイドに居た衛兵が鏡合わせの様に動いて扉を開いてくれた。


「失礼します」


「あ、し、失礼します」


 扉の前でアリーセと一礼して入室する。

 気分的には完全に就活の時の面接である。

 身の程知らずにも大企業の面接に行って、見事に不採用を食らった時の記憶が蘇る。

 今更だが俺もポーション飲んでおけば良かったかもしれない。


「よく来てくれた。さあ、入ってくれ」


 勝手な想像で、年寄りかおっ渋いさんが出て来ると思っていたが、迎え入れてくれた人物は、金髪サラサラロングヘアーのイケメンだった。歳も20代半ば位では無いだろうか?

 真っ白なスーツが非常によく似合っている。


「本日はお招きに預り大変光栄に存じます」


「あー、そう畏まらくても大丈夫だ。堅苦しい挨拶は抜きにして座ってくれ」


「はい、それでは失礼します」


「し、失礼します」


 深々と頭を下げてから、もとの世界でも座ったことの無いような、ふかふかとしていて、それでいて沈み込み過ぎない絶妙硬さのソファーに腰掛ける。


 座った同時に、ヴァルターさんがいつの間にか煎れたお茶を出してくれる。

 凄い、足音どころかお茶を準備する音すら聞こえなかった。


「改めて、よく来てくれた。私がジークフリード・ローデンヴァルトだ。噂のドラゴンバスター達に会えて嬉しく思う」


「こちらこそ、名領主と名高いジークフリード様にお目もじかない大変光栄に存じます」


「いやいや、そこまで堅苦しいと却って話し辛い。普段通りに……と言うと、私がまたヴァルターに怒られてしまうが、もう少し肩の力を抜いてくれたまえ」


 爽やかな笑顔でそう告げられる。

 いつの間にかジークフリード様の斜め後ろ辺りに控えていたヴァルターさんを見ると、小さく頷いてくれた。

 多分、社交辞令ではなく多少くだけても良いという許可だろう。


「わかりました、それで本日はどういったご用件で我々をお呼びになられたのでしょう?」


「うむ、我が領は国境に面さない国の端であるが、古代の街道を利用した交易路の途中にあるため、そこそこ発展をする事ができた。しかし、交易の要所というだけで、目立った産業も無く資源に恵まれているわけでもない。近場の森や山に強力なモンスターが出ることもない。

 それがすべてでは無いが、そういった事もあり高ランクの冒険者というのは、我が領にはあまり居ないのだ」


 そこで一息おいて、お茶を口に含む。


「平時であればそれほど問題はないのだが、アリーセ嬢はよく知っているだろう? 十数年前に一度程度の割合でモンスターが大発生する『スタンピード』と呼ばれる現象があるのだ」


『スタンピード』という単語を聞いて、アリーセ息を飲むのを感じた。

 この『スタンピード』と呼ばれている現象は、存在しないはずのモンスターが大量発生し、幾日にもわたり次々と街へと押し寄せてくるのだそうだ。


 通常であれば放置されたダンジョンや強力な魔素溜まりという、モンスターが産まれる条件等が揃って引き起こされる現象で、ダンジョンであれば適度にモンスターを倒してしまうか、ダンジョンコアと呼ばれるダンジョンの源を破壊してダンジョンを殺す、魔素溜まりであれば大規模魔法をぶっ放して魔素を散らす等で防げるモノだそうだ。


 しかし、この街で起こる『スタンピード』は原因が解っておらず、発生を止める事が出来ていないと言う事だった。

 領内に未発見のダンジョンか魔素溜まりがあるのだろうと推測はされており、今までも何度か大規模な捜索が行われているが発見された事は無いのだという。

  

「つまりは、有事の際の戦力として使えるかどうかの見極めの為に、我々を呼び出したというわけですか?」


「それも確かにあるんだがね、ドラゴンを倒したというその腕前を私に見せては貰えないか?」


 期待に満ちた子供の様な目で俺とアリーセを見ていたのだった。

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