表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/250

幕間 アリーセの回顧録2

 無事街に着くと、イオリは物珍しそうに始終キョロキョロとしていた。

 通用門に案内をして、顔なじみの守衛のスコットさんにイオリの入街審査をお願いした。

 緊張感もないし、商人達の馬車を見て子供みたいにはしゃいでいたイオリなら、街に何か悪意なんて無いだろうから無事に審査は通るだろう。


 審査をしている部屋からスコットさんの叫び声が聞こえたような気もするけど、イオリは無事街に入れた。


 ちょっと時間は遅いけど、冒険者ギルドで素材の換金と突発依頼の事後手続きをしてもらいに行った。

 ギルドに入ったとき、ちょっと恥ずかしい思いをしたけど、それは気にしないようにしよう……。

 私はイオリが絶対に冒険者だと思ったから、登録の照会をしてもらったけど、記録はなかったらしい。

 身分証が無いと不便だろうし、ちょっと思い出せば戦闘も問題なさそうだったから冒険者に推薦した。


 冒険者は誰かが出す依頼によって成り立っている。

 誰も依頼を出さなくなっては困るので信用第一だ。

 そこら辺の浮浪者や年端も行かない子供が冒険者だーと言っていては誰も信用して貰えなくなってしまう。

 だから、冒険者になるにはある程度の戦闘能力と人柄や知識が必要になってくるので、結構面倒くさい試験がある。

 でも、それだと今度は冒険者になれる人が減ってしまうのでDランク以上のランクの冒険者が能力や人柄を保証する紹介制度がある。


 私がCランクに昇格するのに、一人紹介する必要があったからイオリを紹介するのは一石二鳥だった。

 多くは、冒険者になりたい見習いに戦い方や依頼の受け方などを師匠として弟子のように教えて、ある程度一人でも大丈夫になったら紹介をするのだけど、今は師匠の居ない見習いが誰も居なかったから、便乗させてもらった形でもある。


 無事に冒険者登録出来たイオリを、私の取っておきの宿屋『白兎亭』に案内する。

 ここのクーリアおばさんが作る兎のシチューは絶品で、パンもあまり固くなくて美味しい。

 ついた早々にギルドでもからかわれたけどクーリアおばさんにもからかわれた。

 こんな色気も無い、弓を持ってモンスターを追いかけ回してるような私と付き合ってるなんて思われたらイオリに迷惑なんじゃないかと思う。

 

 白兎亭をイオリも気に入ってくれたようで、しばらくここに泊まる事にしたようだ。

 洗濯も体を洗うのも毎日すると言ったイオリには少し考えさせられた。

 私も溜めないで毎日洗濯をした方が良いのかもしれない。


 次の日、一緒に朝ごはんを食べていたら、イオリが変わった食べ方をしていた。

 気になったのでちょっと貰ったら、結構美味しかったし、気軽に食べられるので依頼のときに1食分として持っていくのも良いかもしれない。

 パンのおかわりを持って来てくれたクーリアおばさんが、私達の食べ方に気が付いて今度作ってくれる事になったのはとても嬉しい。

 依頼中でも美味しいご飯が食べられるのは良い事だ。


 イオリは平気そうにしているけど、記憶がおかしくなるくらい頭をぶつけているなら、早く医者に診てもらった方が良いと思う。

 私が案内をしても良かったけど、行かなきゃいけない所があるのでクーリアおばさんに事情を説明して、イオリの事を頼んだ。


 私が向かったのは冒険者ギルドだ。

 Cランクへの昇格審査の申請をするために少し面倒くさい手続きがあって、それをやりに来た。

 幾つかの書類を書いて、自分の実績やプロフィールを書いていく。

 これはCランクから指名依頼を受けることが出来るようになるので、ギルドが指名依頼を出す依頼主に見せる為の資料だ。

 紹介したイオリの名前も入っている。

 これは、紹介者が活躍していれば、紹介した私の評価も良くなり、問題を起こせば悪くなるというように、紹介した以上責任を持てと言うことでもある。


 諸々の手続きを済ませてギルドを後にする。審査の結果は1週間くらい後に出るそうだ。


 白兎亭に帰ろうと歩いていたら、教会から出てきたイオリを見つけた。

 手を振ったけど、全然気がついてもらえない、白兎亭に帰るならこちらに来るかと思っていたら、そのままふらりと、何処かに行ってしまうので、追いかける。


「早々に、市場とか覗いて金銭感覚を覚えなければいかんな」


「そうね、それは大事だわ」


 何か最もな事を言って居たので同意しておいたら、凄く驚かれた。

 教会で回復魔法をかけてもらったようだけど、あまり効果は無かったようだった。


 そのままの足で、イオリの装備を揃えに行った。

 なかなか良さそうな装備を揃えられたと思うけど、イオリがアイテムボックスからお酒を取り出したのには驚いた。

 お酒はアイテムボックスには収納が出来ないはずだからだ。


 問い詰めてみたら、何か特別なスキルのようだった。そうすると水がアイテムボックスに入ると言うのも、そのスキルの効果で私には出来ないのかと残念に思っていたら、水はアイテムボックスに入る! と、水がどういう物なのか延々と解説をされた。

 さっぱり分からなかったけど……。


 また次の日、イオリと川の少し上流あたりでアイテムボックスに水を入れる練習にやってきた。

 今度こそ出来る気がする。水の中の砂粒とか余計なものを入れないように意識すれば良いはず。


 あともう少しで水が入ったと思う辺りでスキルの確認をしていたイオリが居る辺りで、何やら破裂音のような風切り音のような大きな音が聞こえた。

 何事かと思って、イオリの所へ駆けつけると、ヨロヨロと立ち上がろうとしているイオリと穴が空いた木が見えた。

 イオリのスキルで木に穴を空けたんだろうか?

 この木は確か武器などにも使われる、とても堅いアイヒエの木だと思う。

 穴の向こう側を見てみると、元が何であったか分からない程にひしゃげてしまった剣が落ちていた。

 折れるとか曲がるなど生ぬるいとばかりに、原型が全く分からない。

 イオリは失敗したって言っていたけど、どんな力を加えたらドワーフが鍛えた剣がこんな事になるのか全く分からなかった。

 相当強いスキルだと思っていたら、自分にも少なく無いダメージがあるらしい。

 代償がある強力なスキルなんて、伝説の勇者みたいだ。

 イオリは絶対違うって否定をしていたけど、ノービスなのに魔法まで使えるし可能性はあるんじゃないかな。大きな魔晶石を9個も持ってるし。

 あれだけ魔晶石なんて戦争でもお目に掛からない。

 数値で分かる鑑定にも驚いた。

 正確にわかるなら、粗悪品を掴まされることも無さそうだ。

 私の事まで見れるみたいで、ちょっと恥ずかしくて思わず手が出ちゃったけど、自分がどれだけの強さなのか分かるなら、詳しく聞いておけば良かったかもしれない。


 イオリに魔法の使い方のコツを分かりやすく教えていたら、何か大きな物がこちらに向かって飛んでくる事に気が付いた。

 何か分からないけど、大きくて飛んでいるって時点でまともにやり合えるようなモンスターじゃない。

 急いで身を潜めて、様子を伺っていると真っ黒なドラゴンが舞い降りてきた。

 イオリが鑑定してくれたけど、絶望的な気持ちになった。

 上位竜であっても十分絶望的だけど、古龍と知ってはほんの僅かな希望すら見いだせなかった。

 強がって、イオリに逃げるように言っては見たけど怖くてたまらなかった。

 だけどイオリは冷静になんとかしようとしていた。

 古龍と交渉しようとするなんて、誰が考えつくだろう?


 とうとう見つかってしまって古龍と対峙した時、私は怖くて言葉も出なかったのに、イオリは古龍と会話をしていた。どうしてそんなに冷静でいられるのだろう?


 だけどそんなイオリに古龍が怒って腕を振り上げた。


「イオリ、危ない!」


 考えるよりも先に体が動いた。

 突き飛ばしたイオリの驚いた顔がなんだか物凄くゆっくりに見えた。

 次の瞬間、私は痛みと衝撃で、ああ、死んだなって何処か他人事の様に思った。





 意識が戻ったとき、どこも痛くないし怪我も何処にも無かった。

 もしかして夢でも見たのかと思ったけど、倒れた古龍の前で途方に暮れているイオリを見た時に、イオリが助けてくれたんだって分かった。



 まだはっきりとしない意識の中で、凄いノービスも居たもんだなって思ったんだ。

明日から新章に入ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ