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32話 軍人じゃないです

 この世界に来て2日目の朝。

 まだ夜も明けきらない頃、ドアをドンドンと叩く音が響く。


「イオリー起きてる~?」


 アリーセが起こしにきたようだ。


「寝てる~」


「起きてるじゃないのよ、先に下に行ってるからね?」


 寝ぼけ眼であいよーと返事を返し、のろのろと支度をする。

 早起きする覚悟はあったが、まさか夜明け前に起こされるとは思わなかった。

 元の世界にいたときの癖で時間を確認しようとして時計がないことに気がつく。

 

「そういえば、一日何時間だとか、一年が何日なのかとか聞いてなったな」


 昨日買った服に着替え洗濯物を籠に入れる。洗濯物は籠に入れて出しておけば洗濯をしておいてくれるはずだ。

 あくびをかみ殺しながら、食堂に向かうと、階段を下りたあたりでアリーセが待っていた。


「遅いわよ。今日は近場だから良いけど、もう少し遠出するときは、出る準備を済ませてもっと早く出るからね、早く起きる癖をつけといた方が良いわよ」


「アイアイマム」


「なにそれ?」


「ん? 軍で上官に言う承知したってこと」


 正確には、承知してその通りに実行しますという意味だ。予断だが、男性には『サー』女性には『マム』をつけるので、女性に『アイアイサー』とか『イエッサー』と言ってはいけない。


「イオリって軍属だったの!?」


「いや、格好つけて言っただけ……」


 どうでもいい会話をしながら、端っこの席に座ると、アリーセも同じ席に着いて一緒に朝ごはんを食べる。

 パンとふかし芋と昨日よりぶっといソーセージ一本にスープと黒パンというメニューだ。

 サラダもほしいところだが十分贅沢な感じだ。

 こんな時間から朝ごはん食えるとかクーリアおばさんも準備大変だな。

 時間の話が出たついでに、暦などの事を聞いたところ、1日は12時間、1月は奇数月が31日、偶数月が30日で、1年は12ヶ月で366日だということだった。

 1日12時間と言っていたが、体感的にもとの世界の1日とそこまで差を感じなかったので、元の世界の2時間分を1時間と言っているだろう。

 時計も存在するが、魔道具で高級品であるらしい。


「それじゃあ、このあとすぐに準備して出発するわよ?」


「アイアイマム」


 一旦部屋に戻り防具を身につけていく、全身甲冑とかだと一人じゃ着れないようだが、冒険者用に出来ているのか、一人でもなんとか着られるようになっている。

 多少手間取ったが、一通りの準備が終わる。

 部屋を出ようとして、ふと思いついてリュックに隠したベルとつきポーチを取り出す。始末に困ったハンターメイルのパーツであるが、これなら単体でも装備が可能そうだったので鎧の上から身につける。

 

 ドラゴンの素材だし、これだけでも結構防御力が上がるのではなかろうか? 解析してみよう。


---------------------------------------

ドラゴンポーチ

防御力 860

強度 758

耐久 780/780

品質 S

---------------------------------------


 うむ、ただのベルトつきポーチなのに防御力高すぎだな。

 ゲームの時の防具を、こうやって分からないように足して行けばバレずに強い装備に出来そうだな。


「垢バンされる訳でもないのに、ゲームのときと同じようにバレないように自重してるとか皮肉な話だな」


 苦笑しながら、アリーセが待つ食堂に向かう。


 食堂まで下りて行くと、アリーセがクーリアおばさんからホットドックを受け取っていた。


「イオリの分もあるからね、じゃあ行こうか」


 クーリアおばさんに行って来ますと挨拶をし、街の通用門に向かう。

 スコットのおっさんは居ない様だったが通用門で冒険者証を見せて通行証を返却する。

 最初の審査やらが何だったのかというくらいあっさりと、街を出ることが出来た。

 そのまま、街道に沿って進んでいく、初めて来たときの道をそのまま戻っていく形だ。

 ちらほらと、他の冒険者達や商人一行らしい馬車なども見かける。


「そういえばアリーセは剣も使えるんだよな?」


「そこまで得意ってわけじゃないけど、矢がなくなった時とか距離を詰められちゃった時に身を守る程度には使えるわね」


「スキルも?」


「残念ながら剣のスキルは使えないわね、弓や野外活動のスキルならいろいろあるけどね」


 マナー違反とかで、教えてもらえないかと思ったが主要なスキルを教えてくれた。

 他にも身体強化系の自己バフ魔法も少し使えると言うことだった。

 アリーセが教えてくれたので、こちらも伝えても問題のなさそうなスキルを教えることにした。


「ノービスにしては戦闘系のスキルが多いわね、それで冒険者じゃなかったっていうのも不思議ね。あ、さっきのアイアイとかいうのもあったし、軍人だったんじゃないの?」


 ノリで答えた返事をここで引っ張ってこられるとは……。どうなんだろう、軍人だった設定は? いや、軍人だとどこかの国の所属ってことになるから警戒されるんじゃなかろうか?


「どうなんだろう分からないな、そんなにお固く見えるか?」


「見えないわね! でも、軍人だからって必ずお固い人ってことは無いでしょ?」


 はぐらかしてはみたが、アリーセはきっとソレダ!とばかりに言ってくる。


「だとしたら、金貨をたくさん持ってる意味が分からないじゃないか」


「潜入とかの作戦行動中だったとか?」


「ほう、つまり俺はどこかの国のスパイと言うことだな? そして資金を持ったまま行方不明になったことで裏切りものとして今頃追っ手が俺の命を狙ってくると!? 元同僚が暗殺者として立ちはだかる、危うしイオリ君! 公演間近、前売り券はS席銀貨1枚、A席銅貨5枚ですってか?」


「なにそれ、面白そうね! そんな演劇があったら見に行くわ!」


 食いつきが良かったので演技がかったしぐさで記憶喪失のCIAの暗殺者が出てくるなんとかアイデンティティーあたりのあらすじを適当に語って聞かせて、この話をうやむやにしてしまおう。







「つ、つづきは!? つづきはどうなるの!?」


 普通に楽しむなよ……。

読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク登録とても嬉しいです!

夏休みおわったし、更新時間を変えるべきでしょうかー?悩みます。

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