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28話 冒険者の金銭感覚

 店内は所狭しと様々な種類の武器と防具が置いてある。

 大雑把に向かって右が武器、左が防具と別れているようだ。

 奥にカウンターがあり、そこに髭もじゃの厳ついおっさんが座っている。


「こんにちはオットー、親父さんは居る?」


「ああ居るよ、工房に入ってるけど、もう少ししたらご飯食べに出てくると思うよ」


 見た目と裏腹に声が若いのは、きっとドワーフだからだろう。多分おっさんに見えても20代のお兄さんとかだったりするのではなかろうか?


「それじゃあ、親父さんを待ってる間にこっちのイオリに何か良さそうな防具を見繕ってくれない?」


「アリーセ姉ちゃん、悪いけど僕はまだ父さんみたいに見ただけで相性の良い装備なんて選べないよ?」


 アリーセ姉ちゃんだと? もしや十代半ばだったりするのだろうか? いや、流石に十代半ばは無いか、スコットのおっさんが俺の事を「あんちゃん」と呼ぶのと同じ感じだろう。


「オットー、あなたそろそろ成人するんでしょ? そろそろフィッティング位出来るんじゃないの?」


 この髭面で未成年かよ! まぁ、ドワーフなら仕方が無いか、まだ想定の範囲だ。


「アリーセ姉ちゃん、僕まだ11だよ? やっとお金の計算が出来る様になって店番が出来るようになったばっかりなんだけど」


 11歳かよ! 未成年どころの騒ぎじゃなかった。


「でも、ドワーフは12歳でお酒解禁でしょ? お酒解禁なら、もう一人前ってことじゃない」


 やはりドワーフのようだ。12歳でアルコール摂取とか、流石ドワーフだと言わざるをえない。

 

「うーん、そっちのお兄さんが良いなら、僕が良いと思う物を出すよ」


 どうせなら親父さんとやらに選んで欲しい気もするが、アリーセが薦めるなら任せてみるか。


「じゃあ、頼む」


「わかったよ、何か希望とかはある?」


「そうだな、動きがあまり制限されない方が良いかな? あと、滑り止めのスパイクのついた靴があれば欲しい」


 全力疾走しようとすると、今のステータスでも足が滑ってしまうから、最低限滑らない靴は必須だと思う。


「わかったよ、予算はどのくらい?」


「予算は気にしなくて良いわ、一番良いなと思う物を選んでみて」


 どの程度が駆け出し冒険者としておかしくない予算かを考えていたら、アリーセに口を挟まれた。

 選んでもらうだけならタダだからっとりあえず一番良いのを見ておこうってことだろうか?


「それなら、これと、これと……」


 オットー君がひょいひょいと、防具を選んでいく。

 考える素振りが全くないが、大丈夫なのだろうか?


「こんな所でどうかな?」


 頭から足先まで一式揃えられた防具は、皮ベースで金属のフレームで補強がされている物だった。

 解析ツールで色々比較してみたいが、鑑定だけで我慢しておこう。


質の良いレザーキャップ

ジャイアントトードの皮の帽子。鉄板で補強がされている。防水性に優れる


質の良いハードレザーアーマー

硬質なアルマベアーの皮を使った鎧。鉄のフレームで補強がされている。


質の良いレザーグローブ

アルマベアー甲殻を利用した肘までを守るグローブ。


質の良い山岳ブーツ

柔軟性に富んだホーンラビットの皮使った、山岳用のスパイク付きのブーツ


 見たところ、どれも品質が良い物のようだ。11歳とは言え流石はドワーフと言ったところなのだろう、俺の素人目にはすべて良い物じゃないかと思える。

 まあ、値段の高い順って可能性もあるが。


「へえ、良さそうじゃない、イオリ着てみたら?」


「そうだな、着てみたら合わないとかありそうだしな」


「それじゃあ、着るのを手伝うよ」


 流石に鎧などゲームでしか着たことが無かったので、オットー君に手伝ってもらいながら、鎧を身に着けていく。

 鎧は、誂えたかのようにピッタリで何ら変わりがないはずなのに、自分が強くなった気がするから不思議である。


「どこか動きにくい所とかある?」


「いや、びっくりするくらいピッタリだ」


 体を捻ってみたり、軽く飛び跳ねたりしてみるが、吸い付くように体に馴染んでいる。中々やるなオットー君11歳。

 あ、でも、これたぶん駆け出し冒険者がぽんぽん買うような奴じゃないよな?


「アリーセ、なりたての冒険者が買えるやつじゃないだろこれ? 金銭感覚をしっかりしようってのに、なんというか、どうなんだ?」


「何言ってるのよ、自分の命を守ろうってものに出し渋っても良いことなんかないわよ?」


 なるほど、言われてみれば確かにそうだ。冒険者の金銭感覚では、装備品には金をかけるのが当たり前ってことなのだろう。

 そういうことなら、装備品に関しては悩まなくて良さそうだな。

 

「おう、アリーセじゃねーか。なんだ、婿でも紹介しに来たのか?」


「ち、違うわよ! 昨日冒険者になったイオリの装備品を揃える必要があるから、ここに連れてきただけよ!」


 なんか、オットー君を何倍も厳つくしたようなおっさんが出てきた、腕とかアリーセのウエストくらいあるんじゃないかってくらいあるし、手も人の頭くらいデカい。

 この人に比べれば、確かにオットー君は子供だな。


「よう坊主、儂はドグラスだ。うちのちび助の見立てはどうだ? こいつは自信が無いのが難だが見立ては確かだ、儂が保証してやるから気に入ったんならツケといてやるからもってけや!」


 いきなり初対面の俺にいきなりツケで持ってけとか豪快だな。


「いやいや、ちゃんとお支払いしますから!」


「おいおい、持ってけって言ってんだからもってけや、駆け出しがすぐ払える金額じゃねーんだからよ」


「父さん、合わせて1万4千ナールだよ?さすがに手付金くらいは貰わないと駄目だよ」


「アリーセの連れなら大丈夫だ、それに合わせて1万4千ナールの手付たって駆け出しにゃあ厳しいだろ」


 いや、この親父さんそんな高額商品をツケで持ってけとか、アリーセ効果すごすぎだろ。

読んでいただきありがとうございます。


ドワーフは子供にも髭があるようです。

じゃあ、ドワーフの女性は?

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