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26話 何か柔らか物が顔に

※一番下に自作のイラストがありますのでイメージ等固定されたくない方はご注意ください。

「では、こちらをお納めください」


 渡し方の作法とかあったりするのかわからんが、袋から旧王国金貨1枚を手渡す。


「貴殿のご信仰に深く感謝を」


 また深々と頭を下げられた。良かったの悪かったのかがよく分からないが、おっさんも別にニヤニヤしてるだけだから大丈夫だったと思いたい。


「案内のものが参りますので、しばしの間お待ちいただきますようお願いいたします」


 そう言って渡した金貨をうやうやしく掲げながら下がっていったので、今のうちにおっさんをを問い詰めとこう


「先に相場とか教えておいてくれれば良かったのに」


「いやいや、あんちゃんなら大丈夫だと思ったからよ。ま、俺らは一番出しても銀貨1枚が関の山だけどな、あのばーさんのあんな態度初めて見たぜ」


「完全に出しすぎじゃねーか!」


 なんだよ、異世界の医療費安いのかよ!


「そうは言うが、あんちゃんはあれくらい出しても構わないと思ったんだろ? そこは女神様への気持ちの問題だと思うぜ。それにあれだけ出しとけば、相当しっかり診てくれるはずだ」


 そいつはやらかしたな! 適当なヤブ医者で良かったのに。


「お待たせしました。こちらへどうぞ」


 重ねて文句を言おうとした所で、若いシスターが迎えに来てしまった。

 おっさんにさっさと行けとジェスチャーをされて、仕方なくシスターについていく。

 おのれおっさんめ。後でみてろよ。


「俺はこれで帰るが、一人で帰れるな?」


 だから子供じゃないって言うのに……。

 俺は何も言わず手を上げて応える。

 別に格好つけたわけではなく、さっきからおっさんの声が大きいせいで礼拝かなんかに来ている人達に睨まれていて、居た堪れないくなったからである。

 逃げるようにシスターの後に続いて奥へと進んでいく。

 奥に進むと、診療に来ているのかがちらほらと人が居る。いろんな種族を普通に見かけるので、ここの教会は種族差別的なことはしていないようだ。

普通の人間も居るが、どこに目があるの?ってくらいモサモサな犬っぽい人や、頭に角が生えている牛っぽい人、全身鱗なトカゲっぽい人等、実に異世界情緒にあふれている。

 もれなく、なんとなくヨボヨボしているので年寄りばかりなのだろう。

 「最近あのじーさん来てないな?」「体調でも悪いんじゃないか?」などの会話が聞こえてくる。

 老人ジョークだろうか? そんな会話などを通りすがりに聞きながら、どんどん奥へと進んでいく。

 どこまで行くのかと不安になってきたあたりで、突き当りのドアの前でシスターが立ち止まった。


「どうぞ、こちらからお入りください」


 目の前のドアを引いてくれたので、お礼を言って中に入ると、裾の長い白い司祭服を着た金髪でおかっぱの少女が立っていた。

 背の高い帽子を被っているので、それの飾りかと思ったが、髪と同じ色の垂れ耳がある。

 ゴールデンレトリバーみたいな犬の獣人なのだろう。

 何より特徴的なのは、ゆったりとした司祭服の上からでもわかる胸であろう。

 ギルドの受付嬢のエマといい勝負だ。


「はじめまして、本日診療を担当する、イーリス・ユンカーと申します」


「あ、どうぞ宜しくお願いします」


 ペコリとお辞儀をするイーリスと名乗った少女に、こちらもつられて頭を下げる。

 なんだろう、診療室だからそんなに広く無い部屋で簡易ベッドがあるのは当たり前なんだけど、コスプレっぽい女の子が居るだけで、いかがわしいお店に感じてしまうのは……。

 いや、行ったことはないけど。


「簡単にはご事情を伺っていますが、詳しくお聞きしても良いでしょうか?」


「あ、はい、えーとですね……」


 異世界だけに魔法とかスキルとかで診療するんだろうけど、これだけ若い子ならなんとか誤魔化せるだろうか?

 と期待を込めて、今まで騙って来た記憶喪失設定を話す。


「それはお気の毒に、それでは頭をぶつけたと言う事ですので頭と、念の為首にも回復の魔法を掛けさせて頂きます」


 治療は予想通り魔法で行うようだ。


「ですが外傷は治せても、人の記憶と言うものはその存在が曖昧で、日々移ろい行く物なのです。その為命の女神様のご加護を以てしても記憶の回復をお約束が出来ません」


 それは何よりです。

 非常に申し訳なさそうにしているが、こちらとしては好都合である。

 魔法があるせいか問診的な事はしても診察の様な事はしないようなので、バレる心配は無さそうだ。

 承知した旨を伝え喜んで治療を受ける事にする。

 診察魔法とか無くて良かった。


「それでは、そちらのベッドに仰向けに寝てください」


 言われた通りにベッドに横になると、イーリスはよいしょと、ベッドの頭側に丸椅子を持ってきて腰掛ける。

 気分的には接骨院かなんかに来た気分になってきた。


「これから頭と首に回復の魔法を掛けていきます。抵抗をされますと効き目が弱くなってしまいますので目を瞑って楽にしてください。心に命の女神様の身姿を描くと深く落ち着きますよ」


 イーリスは俺の頭に手をかざし目を瞑って何やらゴニョゴニョと言い出した。

 女神様の身姿とか知らないし、目を閉じてと言われたが、何気に初めて見る魔法であるので無論ガン見である。


 温かい光がぽわぽわとイーリスの手に集まって来ているのが見える。

 解析ツールで調べてみたくなったが、もしウインドウが自分以外にも見えてしまっていたら厄介なので、不用意に使うことができない。

 いずれチートツールや解析ツールのウインドウが、他人にも見えてしまうのか検証しないといけないだろう。

 どうやって検証するのか何も思いついていないが……。


のさっ


 仕方が無いので普通の鑑定で何か情報が出るか試そうとしたところで突然視界が塞がった。

 ベッドは少し高い感じで、イーリスが座っている椅子は低い丸椅子だった。

 俺の首に手をかざす為にはどうしても乗り出して前屈みにならざるを得ない。

 つまり何が言いたいかと言うと……。


 顔に胸が乗ってますがなぁぁぁぁぁっ!



挿絵(By みてみん)

ユニーク2500pvありがとうございます!

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