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24話 夜勤の食事事情改善

 朝食を終え、アリーセはクーリアおばさんと何やら話しをしたあと、用事を済ませてくると白兎亭を出ていった。

 残された俺は、この後どうしようかと食堂でくつろぎながら考えていると、朝のラッシュが終わったのかクーリアおばさんがお盆を持ってこちらにやってきた。


「話は聞いたよ、あんた大変だったんだねぇ」


 お盆にはお茶らしきものが入った金属製のコップが2つ乗っており、自分と俺の所に置いた。

 これって、まあ話に付き合えやってヤツだよな?


「え、ええ。あ、お茶ありがとうございます」


「無事で良かったで、良いのかねぇ? 転移事故なんて滅多には起きないって言うのに、頭までぶつけて記憶が無くなるなんて、そうそう無いよ?」


「アリーセが偶然通りがからなかったら死んでたと思います。命が助かっただけでも、幸運だったと思うことにしてます」


 貰ったお茶は、渋みの少ない紅茶の様なお茶で飲みやすかった。

 個人的には氷を入れてアイスティにして飲みたい所だ。


「そうかい、前向きなのは良い事だと思うよ。落ち込んでたって何が変わるってもんじゃないからね。あたしも昔は冒険者だったんだけどね、主人に先立たれてからこの店を……」


 これ、やっぱり長くなるやつだ。

 クーリアおばさんの話は、ご主人との馴れ初めから、白兎亭をオープンするまでの苦労話、苦労が祟ってご主人が亡くなり一人でこの白兎亭を盛り立てて来たお話をとくとくと語ってくれた。

 その間、俺は「そうですね」「わかります」「それは大変でしたね」を繰り返すマシーンと化していた。


 たっぷり2時間ほど経っただろうか? 誰かが食事をしたいとやってきてくれたおかげでクーリアおばさんの話がやっと終わる。


「おう、クーリア、まだ朝飯って食えるか?」


「ああ、大丈夫だよ! なんだいスコット、夜勤明けかい? すぐ作るから適当に座って待ってな」


 やって来たのは昨日の入街審査をしてもらったスコットだった。どうやらクーリアおばさんと馴染みのようだ。


「おう、昨日の記憶喪失のあんちゃんじゃねーか、ちゃんと医者にゃあ行ったか?」


「これから行こうとしてた所ですよ。まあクーリアおばさんの話に捕まっちゃったので行くのが遅れてますが」


 実際に行く気は無いのでこう言って誤魔化しておく。もちろん最後の方は小声で。


「ああ、なるほどな。そいつは仕方がね~やな」


 スコットは苦笑しながら、俺と同じテーブルに付く。


「まあ、こっちの事情も話したんでその流れでって感じです」


 肩をすくめてみせる。


「それじゃあ、時間食ったついでだ、あんちゃんがこの街で安全に過ごすための3つのことを教えてやる」


 ほう、それは助かるな。よろしくお願いしますと、先を促す。


「まず一つは、東の道が白い区画には近づくな。お貴族様達の住居があるからな、不用意に入り込むと面倒くさいことになる」


 確かにそんなセレブなところには近寄らないのが良いだろう。アリーセやおっさんが取り乱すくらい、明確な身分差があるなら尚更だ。


「二つ目は、西の外れの方にある貧民街にも近づくな。あんちゃんみたいにボーっとしたやつだと、あっという間に身ぐるみ剥がれるぞ? もしどうしても行くなら剣くらいは見せびらかすように持ってけ」


 何それ怖い。

 スラムというやつか、よっぽど理由がない限りはそこにも近づかないようにしよう。


「3つ目、こいつは街の外だが魔術ギルドと錬金術ギルドの研究棟にも近づくな。あそこは変人ばかりだし、たまに爆発が起こるからな」


 爆発すんのかよ危ねーな! 魔術師ギルドはまあ良いとして、錬金術ギルドか……。

 携行水とかいう推定蒸留水を高値で販売しているところだったな。普通の水をアイテムボックスに収納できるって知られたら面倒なことになりそうだから、関わらないようにしよう。


「あいよ、お待ちどう。今日は試作メニューだから感想をくれたらサービスするよ!」


 おっさんと話していたら、クーリアおばさんが黒パンホットドッグを持ってきた。

 さっそく作ってみたようだ。


「なんだこりゃ? パンにソーセージを挟んでんのか?」


「持ち運べて良いだろ? そこのイオリに教えてもらった他所の国の食べ方さ」


「ほう、そりゃ面白い」


 おっさんはガブリと黒パンホットドッグにかぶりつく。

 

「おお、こうやって一緒に食うのも美味いな、それにこれなら持ち運べるから夜勤に行くときに持って行きてぇな。夜中腹が減っても何処も店なんかやってないからな。街中だっていうのに毎回干し肉やパンにチーズをかじるだけってのも侘びしいもんなんだぜ?」


「そうかい、それじゃあ夜にいくつか作って置いとくから勝手に持ってっておくれ、お代は詰め所の方にツケとくから」


「本当か!? そいつは助かる!」


 ものすごく嬉しそうだ、というかお弁当的な物って無いのか? パンに挟むだけだし、似たようなものはもとの世界でも普通に紀元前からあったって聞いたことあるんだが?


「お弁当的なものって無いんですか?」


「「ベントウ?」」


 なんかおっさんとクーリアおばさんの声がハモった。


「日帰りとか保存食にするまでもない程度の期間用に、持ち運べるようにした料理のことです」


「ああ、あるっちゃあるが、そんなのカミさんが居る奴らしか食えねぇよ」


 つまり、あるけど奥さんとかが作ってくれる物しかなくて、売ってる物が無いってことか。


「そうだねえ、売りに出すって言っても、籠とか入れ物をそんなにいっぱい用意できないし返ってくるかも分からないから、一緒に売るとなると随分と高くなっちまうしね」


 なるほど、使い捨ての容器とかが無いから売値が高くなりすぎちゃうのか。


「その点、こいつなら適当な袋でも持っていけそうだろ」


「なら木材を薄く削って紙状にしたものとか、大きめの葉っぱとかに包んだらどうですか?」


 ん? なんか二人して鳩が豆鉄砲食らった様な顔してこっち見てるな。


「……クーリア、お貴族様じゃないとは言っているが、このあんちゃんは俺の読みだと良い所の坊っちゃんだと思うぜ。インテリだし振る舞いもしっかりしているからな」


 振る舞いは新人講習の賜物です。インテリってそんな素振りも話も何もしてないはずなんだが、どこからそんな話がでたのか

 それと得意げに言ってるが読みも何も多分所持金知ってるから言ってるよな、このおっさんは。


 あ、でもささやかながら、俺SUGEEが出来たのか?

読んでいただきありがとうございます。


食べ物の描写が難しいです。

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