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235話夜通し歩こう

 アリーセに手を引かれて、真っ暗な森の中を進むんで行く。

 一応、夜目はある程度効くと思っていたのだが、こうも真っ暗だと何も見えない。

 空を見上げれば、うっすら星明りのある夜空が木々の隙間から見えはするが、光源とするにはあまりにも心許ない。


「2歩先に段差、登り約10cm。 その先3歩くぼみ深さ3cmで12歩分の幅」


 アリーセが俺の手を引きながら、足元情報を教えてくれるのだが、それでもちょくちょく躓いたりする。


「流石に明かりをつけたいのだが……」


「自分に補助魔法をかけて暗闇でも見通せるようにすれば良かろうと思うがの」


「ああ、なるほど。 それもそうだな」


 魔道具に頼り切ってて魔法の万能性を忘れてしまうな。

 正直いうと制御だなんだと面倒くさいとも感じている。 魔道具なら使うだけだし、物が手元に残るから手間も少ないのだ。

 魔道具の使用は禁止されているから、面倒くさいが、魔法を構築していくことにする。

 ぶっ放せばいいだけの攻撃魔法と比べて、補助魔法は難易度が跳ね上がる。

 何しろやり過ぎたら命に関わるからな。 慎重にイメージをせねなるまい。

 えーと、エルフはたしか赤外線が見えるんだったよな? 知覚出来る光の波長を広げれば良いのかな?

 いや、赤外線だと結局こっちからも赤外線を当ててやらないと、人やモンスターとか体温のあるものは見えても岩とか木はよく見えないか……。

 そうすると、目に入ってくる光を増幅させてやるほうが無難かな?

 えーと、確か入って来る光子を光電陰極にぶつけて、はじき出されて飛び出た電子に電圧をかけて電子の勢いを強くして、またその電子を電極にぶつけてってのを繰り返して、電子運動で起る電磁波をスクリーンに投影するんだったかな?

 以前戦争シミュレーションゲームを仕事で作っていたときに、資料集めで無駄に調べていたのを憶えていて良かった。

 流石に詳しい装置の内容までは知らないが、仕組みがわかれば魔法で再現出来るだろう。

 投影スクリーン自体は兜の中投影すれば光もそんなに漏れないし、直接体に魔法を使わないから失敗しても安心だ。


「マジックスターライトスコープ!」


 お、実物は知らないが、ちゃんと緑がかったゲームでお馴染みの画像っぽく見えるぞ。


「なんか、目が光って不気味なんだけど……」


「目立つ?」


「それなりに。 もし遠目に見えたら、モンスターか何かかと間違えて、そこに矢を叩き込むわね。 人の目は光らないけど、アンデット系とか目が光るモンスターは結構居るからね」


「なにそれ怖い」


 慌てて兜のバイザー部分に板を張り付けて下ろし、光が漏れないようにする。


「コレでどう?」


「それなら大丈夫ね」


「ずいぶん回りくどい魔法だの? 目玉の能力を上げれば良かろうに」


「目直接いじるというのには、ちょっと抵抗感があったんだよ……失敗して失明とか嫌だろ」


 投影式なら、スクリーンの上限を決めて置けばそれ以上の明るさにはならないが、映画館とかから野外に出ただけで、結構眩しくて目が痛いというのに、目玉そのものの能力を上げちゃうと、ライトの魔法が目の前に出ただけで目をやられてしまいそうな気がするしな。


「ほう、それはよく考えたの。 散々光と音の魔法を使っていた甲斐があったという事かの」


 パールが珍しく褒めてくれた。


「我の全力のブレスをくらっても平気そうな顔しておる癖に意気地のない、とも思ったがの」


「流石にブレスは即死するわい!」


「ブレスはともかく、光と音で怯ませるフラッシュバンの魔法とか言ったっけ? 確かに今あれを急に使われたら戦闘どころじゃないわね」


「殺傷力はあんまり無いから、モンスター相手だと普通に破片入にして爆発させた方が早いけどな」


 元ネタになったやつも非殺傷兵器の代表みたいな扱いになってるしな。


「もきゅ(殺傷力が低いからこそ、スキルで危険感知され難いって利点もあるの)」


「そうだの、あれは完全に初見殺しだの。 単純であるが故に我々ドラゴンにも効果が見込めるであろうの」


 そういうもんか。 と納得しておく。

 マル以外からは、あんまり褒めれたり肯定されないので、ちょっと嬉しかったりする。

 足取りも軽く、森を進んで行く。

 無事戻ったら、魔道具の高効率化の研究をしたいな。

 



「もきゅ!(この辺なの!)」


 マルが、直径2mくらいで切り株みたいな形をした岩の真ん中あたりをペシペシ叩いている。

 岩のまわりには1アップしそうな大きさのキノコが、まるで椅子の様に生えているようだ。

 明るい時間に見たらメルヘンチックな雰囲気だったのだろうが、あいにくと俺の視界は緑と黒の世界である。


「ふむ、眷属どもの襲撃は無かったようだの」


「パールやアリーセにシェイプシフターが勝てるとは思えないしな。 まともな神経してたら普通に襲撃しては来ないだろ」


 搦め手を狙って出待ちしていた位だ、邪神の使徒のクセにその辺りをしっかり見極める頭がありやがる。


「小賢しいマネをしてくるやつ等だからの、なにか仕掛けてくるのでは無いかと思ったのだがの」


「周囲にモンスターや他の生き物の気配は感じないわね」


「もきゅ(何か居たような匂いもないよー)」


 マルが犬のように辺りをふんふんと嗅ぎ回り、しゅたっと立ってから報告してくれた。

 アリーセもマルも揃って何も居ないというのなら、本当に居ないと考えて良いだろう。


「まあ、明かりも付けずに夜の森の中を脇目も振らずにココまで来たからな。 まだ追いついて来てないだけっていう可能性もあるから、さっさとちょっかい出される前に、おさらばしようぜ」


「もとよりそのつもりだの。 ほれ、全員その岩の真ん中に集まれ。 ここのポイントは少々範囲が狭いようだからの」


 平らな岩の真ん中に全員で立つが、パールがもっと寄れというので、背中合わせにぎゅうぎゅうと押し合うように中心部に立つ。


「準備は良いか?」


「良いわよ」


「もぎゅ(だいじょぶ)」


「マルが潰れてしまう、俺も微妙に体勢が辛いから早くやってくれ」


「あいわかった、では行くぞ」


 背中合わせなので見えないが、パールがごそごそと動いたかと思うと、下りのエレベーターに乗っている時のような軽い浮遊感を感じ、ゆっくりと岩の中に沈んでいく。


「もぎょ!(何か来るの!)」


「ぬ!? 我の魔法に干渉だと!?」

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