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227話 立体映像魔法

 パールがブレスでモンスターも瘴気もぶっ飛ばしたあと、しばらく様子を見て安全を確認して、もとの場所に戻った。

「またゲートを開いても、同じ事になりそうだよな? 結界か何かで対策とか取らないで平気か?」

 俺がパールに聞くと、パールは少し考える素振りを見せる。

「ふむ、ホーリーメタルを粉状にしたものがあったな? それを一握り程貰えるかの」

「一握りと言わず何トンでも使ってくれ」

「なんでも沢山あれば良いとか、大きければ良いという物ではないぞ、この手に納まる程度で十分だ」

 意味深だな。

 思わずパールのささやかな胸に目線が行く。

 パールが手を差し出して来たので、手の上からこぼれ無い程度のホーリーメタル粉をサラサラとアイテムボックスから取り出した。

 パールは先程と同じように小さなゲートを開くと、ゲートに向かってホーリーメタル粉をふーっと吹き掛けた。

 吹き掛けられたホーリーメタル粉がキラキラと日の光を反射しながらゲートに満遍なく広がり、そのまま水平にスッとゲート吸い込まれていった。

「うまくいったようだの、瘴気の侵入だけを抑えられたぞ」

「抑えだけなのか? 向こうで瘴気をぶっ飛ばせば良かったんじゃないか?」

「まだ偵察の段階で派手な行動をおこして、わざわざこゲートの正確な位置を教えてやる必要はなかろう」

 それもそうか……。

 ゲートを開けてしばらくすると、何機かの偵察用ゴーレムが帰還してきた。

「一応警戒しておく……おきます」

 アリーセがゲートに向かって弓を構えて警戒体制をとった。

 微妙に距離を取られているような気がする。

 なんか調子が狂うので、一段落したら今まで通り接してくれるように……、えーと、何すれば良いのだろう? 煽ればいいか?

 とりあえず、今は置いておいて、戻って来た数機の偵察用ゴーレムが持って来てた情報の確認をしよう。

 偵察用のゴーレムは既存であった近くに居るゴーレムとの情報交換機能を利用して偵察した内容の共有を行っており、同じデータを持っているグループ内で所定の場所に戻ってくる物とランダムに別の場所に向かう物を織り交ぜるようにし、帰還場所をわかりにくくしてある。 

 帰還してきたドローン型のゴーレムを一つ持ち上げ、異相結界で作った端末にくっつけると、収集してきた情報が映し出された。

 デフォルトで無線接続が出来るとか、魔法って本当に便利だな。

 まあ、組合る物がこれしかないから、データの暗号化もセキュリティも実装していないので、まだまだ改良の余地だらけだ。

 さらに収集してきたデータは映像のみなのでゆくゆくは音やその他センサー等による様々なデータを収集出来るように仕上げたい。

「お、見えた見えた」

 端末に映し出されたのは、ゴツゴツとした岩場だった。

 そこから視点が登っていくと、幾つもの巨石群が転がる入り組んだ地形の荒野が広がっていた。

「出た先は荒野?か……。 なんか居るな。 あーそっち行かないでくれー」

 映像はチラリと見えた人影を無視して愚直に前進していく。

「自己判断とかさせてないからな……仕方が無い、他の映像を見てみるか」

 順番に映像を確認していくが、ドローン型のゴーレム他のものもチラリと人影が見えては通り過ぎて行ってしまう。

 車両型のゴーレムの映像の方も確認をする。

 視点が低すぎて岩とか、僅かに生えた草等が延々と写っているものばかりだったが、地形の隙間から人の足が見えたりしたので、シェイプシフター共が待ち伏せをしているのかもしれない。

「まどろっこしいの、我に貸せ」

「うわ、なにをす、やめ……」

 パールに強引に偵察用ゴーレムを全部取られた。

 止めてください壊れてしまいます。

「壊しはせぬ。 コレは妙ちくりんな形をしておるがゴーレムなのであろう? であれば、そんな小さな映像を見ておらんで、記録された情報からここに全てを再構築をしてやれば良いだけではないか」

 パールが両腕を規則的に動かしながら戻って来たすべての偵察用ゴーレムに手をかざすと、腕の動きに合わせて青白く発光する軌跡が残っていく。

 最後にズンと足で甲板を踏むと、その足先から風景に先程見ていた荒野が重なっていく。

「うお、何だこの超リアルな立体映像魔法!?」

「最低2点間の情報があれば見えた範囲の構築くらい出来るであろう? これだけ多くの情報があれば正確に構築出来るというものだ。 大体半分ほどの大きさで再現しておいたからの」

 甲板の上に荒野が完全表示されている。

 目の前に現れた岩に触ろうとすると感触はなく、手が突き抜けたので見た目のみ再現されたようだ。

 VRゴーグルの魔道具を作ろうと思っていたのに、あっさりとその上を行かれてしまって少し悔しい……。

「ほれ、アリーセもマルも一緒に調べるが良かろう。 幻のようなものゆえ触れぬからの目で探せ。 端まで行ったら別の場所を映し出すので船から落ちないよう注意するのだぞ」

「えー何これ凄い!」

「もきゅ! きゅ!?(美味しそうな虫がいるの!あ。触れない!?)」

 視覚的に空気や魔力の様子も再現しているということで、立体映像の中をくまなく探していくと、うっすら黒い霧のようなものが見えるエリアがあちこちにあり、そのエリアの周辺に冒険者と思われる武装したヒューマンの集団が待ち伏せする様に潜んでいることがわかった。

 映像だけではシェイプシフターかどうかは判別が出来ないが、黒い霧の中心に居るのはシェイプシフターなんじゃなかろうか?

「ただの待ち伏せか。 辺り一面真っ黒く塗りつぶされてるとか、謎の極彩色空間に出るとか、そういう想像もつかないような状態じゃなくて良かった」

「もきゅ(臭いが無いから探すの大変なの)」

「普通に蹴散らせそうだけど、せっかくなんだ、どの程度の戦力があるのか大体把握しちゃおうぜ」

「もきゅ!(わかったの!)」

 パールに表示場所をずらしてもらいながら、黒い霧と冒険者達の場所を特定していった。

 どうやら、ゲート近辺にはパーティ単位で冒険者が待ち伏せをしているようだとわかった。

 黒い霧纏っているのが、シェイプシフターか別の邪神の手駒で、それ以外は先導されて来たか、報酬が良かったから来たのか、普通のヒューマンのようだった。


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