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212話 空中戦

「もっきゅー(ターゲットはっしゃー)」


 俺の背中に装備しているグレネードランチャーから、ターゲット用にしている煙幕ポーションの瓶をマルが先程からばら撒いている。

 目的地に向いながら、飛行中の攻撃練習をしているというわけである。

 攻撃練習は俺もしておいた方が良いだろうという事で、アリーセと交互に行っている。 

 

「ちぃ、2個外したな」


「撃ち漏らしは貰うわね!」


 俺が撃ち漏らして見えなくなっていくターゲットをロングレンジ使用の魔導銃でアリーセがいとも簡単にに撃ち抜いていく。

 豆粒より小さく見えるターゲットに、よくもまあ普段使い慣れない魔導銃を使ってヒットさせられるものだと感心する。


「もう、特性を掴んだのかよ!」


「そうね、魔導銃の弾道は真っ直ぐ飛ぶけど徐々に失速するって感じで合ってるかしらー!?」


「風属性だとそうみたいだな。 水属性や土属性はある程度真っ直ぐ飛んだあと落ちていくし火は失速に連れて上昇するぞ! 着弾した場合はどれも爆発するって思っておけば大体合ってる。 距離が離れれば、その分だけ風とか自転影響なんかを受けるのは矢と一緒だ!」


「なるほど属性で違うのね!」


 ジェットパックの音や風切り音があるので、どうしても大声での会話になるな。

 イヤホンサイズの小型の無線機的な魔道具を作らんと不便だな。

 細かいことを言えば、それぞれの属性と環境によって反応は様々なのだが、着弾地点が酷いことになるという点は変わらない。


「こ、コリオリの力とか言ってたやつだっけ!?」


「その通り!」


「それってココでも一緒なわけ!?」


「正直わからん!」


 惑星の自転方向や速度が地球と同じ稼働かもわからないし、そもそも北半球に居るのか南半球に居るのかもわからない。

 ついで言うと、惑星なのかどうかも怪しい所である。


「意味ないじゃないの!? もう良いわ、どうせ計算式聞いてもわからないし、撃って確かめるから! マル、ターゲットお願いね!」


「もきゅ!(あいあいまむ!)」


 マルが適当に俺の背中からターゲットを射出して、アリーセがあっちこっち飛び回ってせいぜい10cm程度しかないターゲットを魔導銃で次々と撃ち抜いていく。

 正直練習の必要なんてあるのか? と思わんでもないが、やりたいと言うのならやらせておこう。


 ……

 …………

 ………………

「飛んでるだけでやることが無くて暇だな。……よしアリーセに悪戯しよう」


「もきゅ!?(ご主人、そこまでいくと流石に病気!?)」


 チートツールを起動して、アリーセが使っている魔導銃と魔石弾の品質をあげ、何度か実験してうまいことサイズの組み合わせが良くなった数値に攻撃力を上げる。

 アリーセが魔導銃のトリガー指をかけたところで、コードを実行する。


「えっ!? っきゃあ!」


 魔導銃の銃身が一回り大きくなり、風の属性弾が視認が容易なほどにまで圧縮され甲高い音を立てて発射された。

 ターゲットに接触したと同時に圧縮された空気が一気に解放され近くのターゲットも巻き込み風が渦を巻いた。


「ふむ、渦の巻き方を見るに北半球か……」


「ちょ、ちょっと! どうなってるのよコレ!?」


「さあ? 変なとこ触ったんじゃないのか

? パワーアップボタンとか、リミッター解除的なボタンとかー」


 俺がチートツールを使ったことには気が付いて居ないようなので、しらばっくれてみる。


「ええ? 何にもしてないけど……」


「魔道具壊した人の8割位は、そう言うのです」


 あからさまに「腑に落ちない!」という顔をしながら、アンチマテリアルライフル化した魔導銃をアイテムボックスに収納して、スタンダードタイプの魔導銃を取り出す。

 悪戯バレなかったみたいだが切り替え早いな。


「使えなくは無いけど、やっぱり仕組みのよく分からない物より、使い慣れた弓の方が良いわね……」


 ブツブツと、何やら良いながらも銃床もないスタンダードタイプの魔導銃でもターゲットを1つも外さずに撃ち落としていく。

 何がそんなに不満なんだろうか?


「もきゅ!(なんか来るの!)」


「イオリ! 推定大きな蚊、数多数、前方下側の浮島あたりから!」


 アリーセの魔導銃を再びパワーアップさせてやろうとタイミングを測っていたら、前方の浮島からブワッと蚊の様な虫の群れが飛び出してきた。

 ココに居るのは虫ばかりなのか?


「どう見ても有効的って感じは無いわね、仕掛けてくるわ! イオリは接近された時に爆発物で攻撃しないようにね!」


「前向きに善処する!」


「もきゅもきゅっ!(ご主人! 実弾! 実弾ちょーだい!)」


 マルがつい今しがたまでターゲット用にポーションを発射していたグレネードランチャーをぺしぺし叩いて実弾を要求してくる。

 実弾と言っても、グレネードランチャー用の物理的なグレネードは用意していないので、いずれかの属性の魔石弾である。

 周りに何も無いので、アイテムボックスから火の魔石弾をチョイスしてマルに渡すと、背中のマルがもきゅもきゅ良いながら慌ただしく魔石弾をグレネードランチャーに装填していく。

 装填の手間を考えると本気でベルト糾弾式にも対応出来るようにした方がいいかもしれないな。


「アリーセ! マルが先制グレネードで焼き払う、下がってくれ!」


「りょー……かいっ!」


 少し先行して飛んでいたアリーセが、スロットルを切ってジェットパックを停止させ、その場で水泳のターンの様にくるりと身を翻し、再びジェットパックのスロットルを吹かして一瞬で俺のすぐ横まで戻ってきた。

 ターンをしてこちらに向って来たはずなのに、すれ違ったアリーセの方を見たら既に俺と並走していた。

 脅威の身体能力だな。


「マル! 比較物が無いから近そうに見えるけど、結構距離が離れてるわ、私が合図したら群れの下の方を狙って撃って徐々に狙いを上に上げていって! イオリは今の高度と速度を維持!」


「もきゅ!(あいあいまむ!)」


「あいあいまむ!」


 こういう場面でのアリーセは非常に頼もしいな。


「カウント! 3、2、1、今!」


「もっきゅーっ!(てーっ)」


「た~まや~」


 もし地上だったら軽く地形変わるかな? というくらいマルがグレネードを撃ちまくる。

 蚊柱のようになってこちらに迫ってくる蚊の群れの下部で火柱が上がり、焼かれた蚊の燃えカスが次々と落ちていく。

 一発目で蚊の群れは散り散りになり、続くグレネードの着弾でみるみるうちに数を減らしていく。


「逃げていくのも居るけど、大分こっちに向って来るわね。 マル、そろそろこっちが危ないから攻撃停止して」


「もきゅ(はーい)」


「こういうモンスターには弓を使いたいんだけど仕方がないわね……。 イオリは爆発禁止で右側をお願いね!」


「任された!」


 アリーセが魔導銃を撃ちながら体を傾けて俺から離れていく。

 撃ち尽くしたところで空になった弾倉を捨てて、アイテムボックスから直接再装填をして、またすぐに撃ち始める。

 つか、そこまで使いこなしておいて何が不満なんだろうか?


「まあいいや、俺も攻撃しよう……ってでけえな、この蚊!?」


 比較対象が無かったので良くわからなかったが、近くで見ると本体が1m位ある。

 これだけデカいと羽も結構大きくて、全長では2m以上もありそうだ。

 はっきり言ってキモい。


「あ、そうだ鑑定と解析しとこう」



《パラアルボピクトス》

:大きな蚊モンスター。 獰猛な肉食性のモンスターで群れを作り他の生き物を捕食する。

成長が早く、しばしば爆発的増える。


------------------------------------------------------------

名前:なし

種族:パラアルボピクトス

年齢:1歳

レベル:32


HP:658/658

MP:127/127

スタミナ:674/598


筋力:265

敏捷:322

知力:60

器用:324

体力:626

魔力:74

頑健:467

精神:28


物理攻撃力:367

魔法攻撃力:24

物理防御力:249

魔法防御力:32


称号:群れる者


スキル

 パッシブ:群体行動 LV3


 アクティブ:捕食 LV 4

      :飛行 LV 3


各種コード     

 ・

 ・

 ・

-----------------------------------------------------------


 数が居なければ対したことは無さそうだが、飛行のスキルのコードだけ保存してこう。

 引き続き範囲攻撃でなんとかしたいところだが、大分バラけてしまっているので、効率を考えたら大爆発させる必要があるから微妙だな。

 自爆したら俺はともかくマルがヤバイし……。


「仕方がない地道に狩るか」


 散弾仕様にした土の属性魔石弾を装填済みの魔導銃をアイテムボックスから取り出し、攻撃を開始する。

 遠距離攻撃のスキルは持っていないようなので、一方的に攻撃が出来るが、思ったよりも速度が出ていたせいでバラバラになった虫の破片がビシビシネチャネチャとぶつかってきた。


「もきゅ! もきゅきゅきゅ!(えい、えい、とおー!)」


 背中の上でマルが飛んできた破片をパンチやキックで弾き飛ばしている。

 マルもなかなかやるものだ。 弾いた破片の半分以上俺にぶつかっている点を除けばだが……。


「上の方に居るのは、通り過ぎてから撃った方が良さそうだな」


「もきゅ(そうして)」


 狙いもそこそこに撃ちまくる。 弾が無くなったらアイテムボックス内の装填済みの魔導銃にまるごと交換して、間を空ける事なくドンドンと撃っていく。

 トリガーハッピーってやつだな。

 100匹位撃ち落としたあたりで受け持ち側の掃討が終わったアリーセが加勢に加わった。


「なんか、出てきた量の割にあっという間に終わったな」


「先制攻撃で半分以上一方的にやっつけたからね。 だけど、ここだとみーんな落っこちて行っちゃうから素材回収ってわけにも行かないのが残念ね」


「もきゅ……(あれはマズそうだったの……)」


「そ、そうか……」


 虫の美味しそうとかマズそうとかの基準はわからないが、マル的には要らないモンスターだったようだ。


「こんな地面の少ない所からは早くおさらばしたい。 問題が無ければさっさと行こうぜ」


「もきゅ(れっつごお)」

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