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211話 また髪の話ししてる

 誤解によって食らう制裁と、やらかしてしまった自覚があるときの制裁では食らったときの気持ちが大分違うなぁ、等と他人事のように思いながら意識を手放した。

 俺の中で耐性系のスキルの評価は低い、苦しみが長く続いてしまうからだ。

 どうせ即座に回復をするのだから、ドMでもない限り、わざわざ我慢する必要は無いのではなかろうか?

 まあ、敵の目の前で気絶するとか、普通に考えれば死亡フラグなんだろうけど……。

 これが「耐性」ではなく「無効」や「吸収」であればまた違って来るかもしれないが「物理吸収」とか殴られたら気持ち良くなるというのだろうか?

 もしそうなら、アリーセから食らう技の数々はご褒美ということに!?

 ……いや、よそう、変態に片足を突っ込みたいわけではないんだ、ただでさえ感情に制限食らった状態だというのに、そっち方向に目覚めてしまったら、もとに戻れたときにイロイロとヤバイ事ぐらいは理解出来る。

 どれくらいやばいのかって聞かれたら、うまく説明が出来ないのだが……。


 それはさておき、何時ものようにアリーセに意識を刈り取られたわけだが、覚悟が出来ていた事と抵抗らしい抵抗をしなかった為か、小一時間程で意識が戻ったようだ。

 マルがそう言っていたから間違いない。


「あれ、もう起きたの?」


 アリーセの声にビクリと体が跳ねる。

 ステータスに表示されないバッドステータスを心に刻み込まれているようだ。


「とりあえず、パールから聞いてきた情報を伝えるわね」


 なんで、何事もなかったかのように話が進められるんだろう?

 俺の心に別方向の恐怖心というバッドステータスが付加された気がした。


「まず、今いるココは、神様が作り掛けの世界ということらしいわ」


「作り掛けって、どういうことだってばよ?」


 答えや結論を先に言ってくれるのは助かるが、その後の補足説明も無いのは困る。


「難しいことや、神様の考えなんてわからないけど、そう言われたからそうなんでしょ。 とにかく、理由は知らないけど早く移動した方がいいって事だけは確かみたいよ? 指示のあったポイントまで、速やかに到達した方がいいわ」


「そんな急がないといけない状況で落とされた俺がいるんですが?」


「私だってそんな状況なのに、盛大な焚き火に囲まれて死に掛けたわよ! 細かいこと気にしてると禿るわよ!?」


「ま、まだ禿げてネーし!? フサフサだし!?」


「そー言ってた私のお父さんも自分でよく見えないツムジのあたりから徐々に……」


「あーあー聞きたくない聞きたくない、魔法の力でなんとかなるんだきっとー」


「もきゅ?(移動しないの?)」


「そ、そーだね、髪の考えなんてわからないもんな、考えたって仕方がないから早く移動しようか!」


「髪じゃ無くて神じゃないの?」


 翻訳されているわけだから、日本語で音が同じでもアリーセには別の意味で聞こえているから、ダジャレとか同音異義語などは意味が通じない。

 俺は気にしていない!と言いつつ、無意識で神と髪を入れ替えて喋ったわけだ。

 つまり、自分自身で気にしている、意識をしてしまったと認めてしまったわけであるコンチクショー。

 いや、だって誰だって禿げたくないだろ!?

 男子たるもの気にしないでは居られないだろ!?


「……こ、細かいことをきにするな! 禿るぞ!?」


「明らかにそれを気にしてるのはイオリよね?」


「あーもー、あー言えばこー言う!!」


「え、それもイオリじゃ……」


「さあ、アリーセ! 君の分のジェットパックだ、さっさと移動しようじゃないか!」


 話を切り上げてジェットパックをアリーセに渡し、さっさと出発をることにする。

 途中でエネルギー切れとか起きても困るので、魔晶石駆動のジェットパックだ。

 常識的な速度で普通に飛んでいる分には、数十年飛んでいられるのであんしんだ。

 ジェットパックには左右2箇所のノズルから水を空気噴射して飛んでいる。

 万が一片方のノズルがやられても、魔晶石パワーならスロットルを少し増やすだけで片方でも飛行が可能だ。

 バランスに関しては、アリーセならスキルで補えるからなんとかなる……はずだ。


「まあ、今に始まった話じゃない……か……。 で、これ妙な武装ついてたり、爆発したりはしない?」


「ウニョウニョから逃げる時に複数の魔晶石を突っ込んだけど問題無く使えたから大丈夫だ」


「ウニョウニョ? まあ、爆発しないなら良いわ、空飛ぶの楽しいしね」


「飛んでる最中にモンスター襲われるかもしれないから、武装はした方がいい気がするんだが?」


 ジェットパックのスロットルは手で握る必要があるので、飛んでいる最中は最低でも片手が塞がった状態となってしまう。

 つまりアリーセが得意な弓が使えないのだ。


「うーん、それじゃあ片手で扱える魔導銃で一番強い奴を貸してくれる?」


「銃ってな、威力が上がれば反動も強くなるし、精度を上げれば長く重くなっていくもんだから使い手や状態に合わせて使い分ける必要があるんだよ。 だから一概にどれが最強っいうのは無いんだ。 だから、40mm無反動砲あたりが今週のオスス……」


「ワトスンが作った弾倉付きの魔導銃で良いわ!」


「グレネードラン……」


「ワトスンが作った魔導銃で!」


 浪漫わからんやっちゃな。

 頑なにグレネードランチャーや無反動砲を受け取らないので、仕方なくベースとして使っていたワトスン制作のスタンダード仕様魔導銃と無難な風の魔石弾を詰めたマガジンを幾つか渡す。


「装弾数は1マガジンにつき20発。他の魔導銃とも互換性があるから一応他のタイプの魔導銃も渡しておくな」


「わかったわ、ありがとう」


 アリーセはアイテムボックスが使えるので、気兼ね無く荷物を渡せる。

 重くて取り回しは悪いが、銃身を伸ばして銃床をつけた精度重視のロングレンジモデルと、銃身を短く切り詰め軽く小さくした取り回し重視のコンパクトモデルを取り出して渡す。

 どれもワトスンが作った物なので、本体部分に装飾がされ、全体的に曲線で構成された美しいデザインの魔導銃だ。

 余談であるが、火と水の混合魔石弾を使用するとお湯が出る。


「マルに教えるのに何回か使ったことあるけど、飛んでる状態でうまく使えるかしら?」


「ココで試すなり練習するなりしてけば良いんじゃないか?」


「道すがらで良いわ、駄目なら他の手段を考えるから」


「了解。 で、どっちに行けば良いんだ」


「もきゅ(あっち)」


 マルとアリーセが同時に同じ方向を指差した。


「……なんか目印でもあるのか?」


「もきゅ(なんとなくわかるの)」


「なんなくわかるのよ。 パールがかけてくれた魔法の効果だと思うわ」


 魔法じゃなくて、加護とかいうヤツの効果じゃねーかな……。

 俺のは変な称号ばかりなのにな。


「じゃーマル、背中に乗って方向指示してくれ」


「もきゅ(わかったの)」


「そんな重そうな格好で飛んで大丈夫なの?」


「大丈夫だ問題無い」


 魔晶石ドライブ(今命名した)ならば、今のフルアーマー状態でも十分に飛行が可能だ。

 まあ、重い分だけ慣性が強くなって小回りが効かない代わりに真っ直ぐ飛ぶならば安定性はむしろ高い。


「準備は良い? それじゃあいくわよ」


「あいあいまむ」


「もきゅ!(あそこのちょっと大きな浮島の方向に飛ぶと良いの)」


「あいよー」


 俺とアリーセは、ゆっくりと浮島を飛び立った。

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