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208話 消火活動?

 火元から風上に一時撤退して、赤々と燃え広がる火を見つめ、どうしたものか考えて居ると、もうもうと上がる煙の向こうで、異変を察知したらしい虫のモンスターが次々に飛び立って逃げて行く様子が見えた。


「うわ、流石に火元に突っ込んでくるようなのがいなくて良かったケド、あんなに虫が居たのかよ……」


 煙の隙間から見える大小様々な虫を見て思わず顔をしかめる。

 結果的に効率良く安全の確保が出来たとも言えるが、別の危険を自ら作り出したとも言える。


「もきゅん?(別の所に行く?)」


「うーん、もう少し燃やしといて虫が居なくなった頃合いを見て消火活動をしよう。 燻煙をしたってことで……」


「もきゅ(ご飯いなくなっちゃうの)」


「た、食べるものはちゃんとあるから大丈夫だ!」


 お腹が空いたのかマルがそんな事を言い出した。

 流石にあの虫を食べるのは最後の手段にしたい。

 高級ペットフードをアイテムボックスから取り出してマルにあげておくと、頬袋がいっぱいになる迄詰め込んでいた。


「もひゅー(ありあとー)」


 もきゅもきゅとほっぺたが膨らんで行くのが面白くて限界まであげてしまって、非常に喋りにくそうにしているが、嬉しそうなので良しとする。


「丸裸になるまで待つのもアレだから、そろそろ消火活動に入るか」


「もき!(わはった!)」


 水を撒き散らす前に、まだ燃えていない木々をツムガリで伐採して延焼を防ぐ。

 面白いくらい簡単に木が倒れていく。 神の加護というか力は非常識なものだな、等と考えながら燃えるものの無いエリアを帯状に広げていく。

 切り倒した丸太を放り投げようと思ったが、良く育った丸太の方が鎧を着た俺よりも重いらしく、持ち上げるだけならともかく数m位しか投げられなかったので、適度に分割をしてポンポンと投げていく。

 この木は後で拠点の材料にでも使おう。


 ある程度で見切りをつけて、消火活動を開始する。

 今度は属性を間違えないようにせねば……。


「マル、水属性弾、ショットシェルで火に向かって制圧射撃だ。 反動に注意しろよ?」


「もき! もきゅー!(ふぁいやはー! うわー!)」


 ほっぺたパンパンのマルが元気に返事をして、魔導銃を連射する。

 火や風と比べて、水と土は発射するものの質量が大きいため反動が強くなってしまう。 その為マルが1発ごとに、仰け反って後に転がってしまう。


「もき! もきゅー! もきゅもきゅ……。 もき! もきゅー! もきゅもきゅ……」


 だんだん慣れて来たのか、撃っては転がり撃っては転がりを繰り返してうまいこと水の散弾を撃ち出していく。

 転がる度に少しずつ頬袋の中身が飛び出しているが……。


 俺の方は俺の方で、肩のグレネードに水の魔石爆弾を装填、片膝をついて発射をして水圧が高めの散水を開始する。


「全然消えんな……」


 焚き火やボヤ程度であったらともかく、消防隊員でも何でもない俺には火災時の効率の良い散水の方法などわからないので、効果がイマイチに感じる。


「まる、どう思う?」


「もきゅーん……もきゅ!(えーと……魔法!)」


「そうか魔法か……」


 まともにというか、無難に魔法を成功させたことって滅多に無いんだよな……。

  散水を続けたまま、適当な弱い魔法の杖をアイテムボックスから取り出して、魔法のイメージを固めていく。

 えーと、火を消すんだから冷却と窒息だよな? 二酸化炭素の泡で火を消す消化器があったような記憶があるな。

 二酸化炭素、界面活性剤、水でいいかな?

 フッ素とか炭酸水素ナトリウムとか硫酸アルミニウムとかあった気がするが、化学物質を使うのは一応やめておこう。

 配分わからないし……。

 界面活性剤は無添加石鹸で良いか、確か砂糖を混ぜると泡が丈夫になるはずだ。


「よし、コレで行こう。 順次供給で砂糖入り石鹸水を二酸化炭素で泡にして1MPaで噴射……。 そぉれカーボンディオキサイドバブルショット!」


 適当極まりない魔法を構築して発動させる。

 魔力を絞り消費させ続けて発動させるようにして、断続的に泡を噴射する。


「うーむ、さっきよりマシだけどもっと広域にやらないと焼け石に水だな」


「もきゅ?(雨は?)」


「大雨とか津波とかも考えたんだが、大量の水で地盤が緩んで浮島崩壊とかになりそうな予感がしてな……」


 この浮島が岩石だけであれば問題ないが、足元は土である。 せっかくバランスの良さそうな浮島を見つけたのに、土を押し流してしまって変形させてしまったら意味がない。


「仕方ない、爆破して吹き飛ばそう」


「もきゅ?(地面に穴あくの?)」


「いや、地上で爆破すれば爆風や衝撃波は地面にぶつかれば横に広がるから大丈夫だ」


 地面をえぐるには、爆発物を埋める必要があるのだとマルに説明する。

 いちいち「なるほどー」と聞いてくれるので、説明にも力が入るな。


「それに、吹き出した石油に引火したときダイナマイトで消火する事ができるんだよ。

 中途半端に空気を送ると、酸素が供給されれ激しく燃えてしまうが、衝撃波が出るほどの勢いがあれば消火することができるというわけだな」


 マルに爆発の仕組みや吹き飛ばす事の正当性を掻い摘んで説明しながら、風と水の魔石を使った、複合属性魔石爆弾を作る。

 作ると言っても、ベースとなる起爆装置があるので、ぶっちゃけ魔石を押し込むだけで完成だ。


「マル、グレネードランチャーに詰めてどんどん撃つから、リロードを頼めるか?」


「もきゅ!(いいよ!)」


 マルが背中によじ登ったのを確認して、絶賛燃焼中の木々に向かって撃ち込んでいく。

 着弾と同時に急激に膨張する水分を含んだ空気が白煙を上げ、木ごと火を吹き飛ばしてゆく。


「うむ、成功だ。 グレネードランチャーは万能だな」


 ほぼ更地になって行くが、まあ良いだろう。

 マルがリロードしてくれるので、移動しながらグレネードランチャーで「消火弾(仮)」を撃ち込み消火をしていく。

 マル用に盾付きの銃座を作って背負っても良いかもしれないな。

 銃座には重機関銃でも設置すれば、重量稼げて死角もカバー出来るので一石二鳥じゃないか。

 拠点を作ったら、早速作ろう、そうしよう。


 火事と爆発を背景に、鼻歌を歌いながら破壊活動……じゃなかった、消火活動を続けていると、浮島の中央付近に泉が湧いていた。

 水の透明度や周りの雰囲気を想像するに、かなり綺麗な場所だったのだと思われる。

 今は一面焼け野原で泉にも灰や炭化した木が沢山浮かんでいて見る影もないが……。


「もきゅ(ご主人、あそこに何か浮いてるの)」


「何かってなんだ? 焼けた丸太とかじゃないのか?」


 マルがちっちゃい指で指し示す方をよく見てみると、浮かんでいる丸太に何かが引っかかっている。


「って、人じゃねーか! 助けるぞマル!」


 慌てて泉の中にザブザブと入って、救出に向かって、そのまま沈んでいった。


「ぶっはぁっ! 思ったより深い!」


 がっちりと鎧を着たままで浮かぶ筈もなく沈んでいき、密閉されているわけでもないので浸水して溺れかけて急いで岸に戻った。

 以前エーリカに掛けてもらった水中呼吸の魔法があるが、俺自身がいまいち水から直に呼吸をするという仕組みに納得がいっていないので、現状すぐに使うことが出来ない。

 素直に鎧を脱がないと駄目か……。

 ああそうか、兜の中にアイテムボックスから空気を取り出せばいけるか。


「よしもう一回行くぞ!」


「もっきゅー(ご主人、そっちからロープ引っ張ってー)」


「え? マル?」


 マルの声が聞こえた方を見てみると、俺が溺れているうちにさっさと救出に向かっていたらしく、浮かんでいた人が引っかかっている丸太にロープを結んで俺にちっちゃな手を一生懸命振っていた。


「……えー、あー、うん、引っ張るからしっかり掴まるんだぞー」


「もっきゅー(はーい)」


 まあ、あれだ、こういうのには向き不向きってやつがあるよな、うん。


 ロープをたぐり寄せてみると、後ろ向きではあるが引っかかっている人物の容姿がはっきりと見えてきた。

 煤けてはいるがたぶん白かシルバーブロンドの髪に赤い鎧を纏った女性だろう。


「どっかで見たようなー? ってアリーセじゃねーか!? なんでこんな所に!?」

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