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204話 じゃあゴーレムを作ればいいじゃない

「マル、三角形の面積の求め方」


「もきゅ(底辺かける高さ割る2なの)」


「円の面積」


「もきゅん(rの二乗かけるパイなの)」


「え、算数じゃなくて数学の方だと……!? え、えーと、木の根元から直角に伸ばした線の長さが、木の頂点から30度に伸ばした線が交わる所までで1だったとき、木の高さはいくつでしょう?」


「もきゅ!(るーと3なの!)」


「1から100までの数を足すと……」


「もきゅー(101かける100割る2で5050)」


 なんか、やっぱりマルは賢いってレベルを通り過ぎてないか?

 知恵と知識は違うが、ステータス的にも知力も、一般人より高いからな。

 俺がこの世界に来たばかりの頃なんか……、いやいいか言わんでも。


「もきゅーん?(ご主人が子供達に教えてた事でしょ?)」


「いや、確かに戯れに王都で教えたけど、食いついて来たのコリンナ様と学園長くらいだったろ……」


 というわけで、自分の体のチェックや慣らしも大方終えて、だいたい2週間くらいの時間が過ぎた。  外では30分程度時間しか経っていないっぽいのだが正直実感はない。


 せっかく何もないだだっ広い空間があるのに、魔晶石の実験禁止を食らっているので暇に明かしてマルに座学を教えていた。

 結果、元の世界の中学生程度には知能がありそうだとわかった。

 こちらの世界基準だと教授とか先生と呼ばれる人達と同等だとも言える。

 まあ、こちらの世界だと学問も魔法絡みになってる部分が大きいので、一概には言い切れない部分も大きいのだが、読み書き計算が出来るので事務仕事や金銭出入の管理くらいなら人並み以上でこなせてしまうと思われる。




「というわけで、優秀なマル君にはゴーレム作りの助手をしてもらう」


「もきゅっ(らじゃ)」


 魔晶石使った実験ができない以上、もうコレをやるしかない!

 錬金術や加工に必要なスキルのレベルも上げたので、ワトスンに頼らずともパーツが作成出来るようになった。

 ただ、デザインのセンスや、職人的な感覚は別の問題なので、ワトスンの作る魔道具と比べると、大分無骨だったり大きくなってしまいがちである。


「スキルレベルが上がってよく分かったが、ゴーレムは効率という面で様々な問題を抱えている。 まず、制御装置となるコアへのプログラムの書き込み方法が、手書きや呪文形式の口頭入力だ。 かなりの量の命令文を必要とするので、非常に時間がかかるうえミスも出やすく、量産が難しい」


「もっきゅ(ご主人言ってた、らっぷとっぷってヤツを作れば良いと思うの)」


「良いアイディアだ。 完全再現したい気持ちに駈られるが、グッと我慢してまずはゴーレムのプログラミングとコアへの入出力用に限定して作ろうか」


 1から全て作る必要はないので、手始めに作る本格的な魔道具には良さそうだ。

 記録用の魔道具等、既存の魔道具の組み合わせで作っていく。


「見せてもらおう、スキルレベルMAXの実力とやらを」


 両手をパンと合わせてから、地面に手をついてワトスンがよくやるように、うねうねと真鍮を動かして形を作っていく。

 ちなみに手の動作は気分だけの問題で、鼻をほじりながらでも問題はないし素材も真鍮である必要はない。

 全てはノリと気分と勢いだ。


「入力装置は、やっぱり使い慣れたキーボードとマウスが良いよな。 フリック入力苦手だし……」


 魔法という不思議パワーがあるので、集積回路を組み合わせた複雑な基盤や配線が不要でこういう物が作れてしまうというのは、非常に楽だ。

 魔法の仕組みを紐解いて行けば、非常に複雑な、あれやこれやがあるという事はエーリカから教わったが、それを知らなくとも過不足なく使えるという、非常に楽しい仕様なのだ。

 これはもう使い倒すしかない。

 まあ、作っている最中にどうするか迷ったりすると、その迷い再現されてしまうので歪になったり、まともに動かなかったりするので、イメージ固めは重要だ。


 メインにゴーレムのコアを利用する。

 コアはハードディスク付でCPUとメモリとマザーボード的な働きをするものとして使えるからだ。

 今回はゴーレムを制御する為のベースとなるプログラム的な物が既に書き込まれているタイプの物を使用した。

 まあ、これしか手に入らなかったとも言うが、チーツールで品質は最高のものになっている。

 魔石がバッテリー、モニターっぽい水晶の付いた魔道具はけっこう多いから、モニターはこれらから流用。

 同じく入力装置も基部を流用しよう。

 電気の代わりに魔力が流れるわけだから、ミスリルで配線を作るか。

 強すぎる魔力負荷がかかったときの為に、ヒューズと抵抗器も着けておくか。

 コマンドはエルフナイズされてて分かりにくいから、対応表を作って、慣れた命令文に書き換えておくか。


「よっし出来た。 とりあえずゴーレムプロ100とでも呼ぼうか。 うむ、業務用っぽくて良いな。 では動作テストだ、スクリーン、テキスト、ダブルコーテーション、はろーわーるど……。 実行!」


 エンターキーをターンと勢い良く叩いて実行する。


「おおスキルとか魔法すげぇ、適当に作ったのにちゃんと使えたぞ」


 無事、水晶モニターには[helloWorld]と表示されている。

 

「もきゅ!(ご主人! ソレやりたいの!)」


「ん? マルもゴーレム作ってみたいのか? ……ふむ、それは面白いな。 よし、マル用に小さいキーボード作ってやろう。 本体の各パーツは規格化して組み換え可能にするつもりだから、何種類かつくるつもりだ、リクエストやアイディアがあったら言ってくれ」


「もっきゅー(わーい)」


 マルの手の大きさに合わせたキーボードを作ってやり、ゴーレムプロ100をアイテムボックスとチートツールで複製して渡してやると、たどたどしくカチャカチャとキーボードをひとしきり叩いて、エンターキーだけ ターン! と勢いをつけて叩いていた。

 まさかなーと思いつつ、マルのゴーレムプロ100の画面を覗くと、意味不明に文字が打ち込まれていたので、適当にカチャカチャやって遊んでいるだけのようだ。

 コマンドがそんなに多くないので、比較的簡単な部類のプログラムになるが、流石のマルもプログラムを組むのは難しいようだ。


「もきゅーん?(なにも起こらないの?)」


 もきゅーん?もきゅーん?と首を傾げているマルに、コレがどういうものなのかを教えてやる。


「マル、これは決まったルールに従って入力をしないと駄目なんだよ、マシン語……ゴーレム語? の翻訳機みたいなものなんだ。 だから、ココにはゴーレムがわかるように入力してやる必要があって……」


「もきゅもきゅ(ふんふん)」


 マルにプログラムの基本を教えていて、なぜこの世界でゴーレムがあまり発達しなかったのかが、何となく分かった。

 魔法は、イメージしたことが具現化する。 つまりある程度は思った通りに作用するのだ。

 しかしゴーレムの場合思った通りには動かない。 プログラムを書いた通りに動くのだ。

 元の世界であれば、プログラムした通りにしか動かないというのはあたり前であるし気まぐれに動かれては困る。

 しかし魔法があるこの世界では、思った通りにも勝手にも動かないと言うのは、むしろ不思議なことなのだろう。

 適当にモンスターとっ捕まえて使い魔にしたり奴隸を買った方が手っ取り早いってわけだ。

 使い魔や奴隸なら「あのりんごを取ってこい」って言うだけで済むが、ゴーレムだとある程度自動化されたコマンドがあると言っても、対象を設定、大きさ10cm以上15cm以下の赤いもの、対象までの距離を測定……、と、まあ、細かく指示してやらねばならないのだ。

 もちろん毎回そこまで指示していられないので、「歩く」とか「立ち上がる」とか予めプログラムした内容を呼び出して使うわけだが、毎回忠実にその動きを再現するので、応用が効かない。

 つまり半端なプログラムだと平らな地面は歩けても段差があったら転んでしまうのだから、それらを想定してプログラムを組まなければならないのだ。

 魔道具も使い方が限定されているからこそ、そこまでの面倒はないが、普通の魔法と比べれば、相当マゾい作業が必要となる。

 錬金術師ギルドが変人の集まり、という扱いを受けているのは、何も爆発ばかりしているからというだけでは無かったということだな。

 ……変態ばっかりなのは、純然たる事実だか……。 元気かな、ゴーレムの彼女を作るって言ってた彼は……。


「まあいいや、考えたらキリがない。 動作確認用に小さいゴーレムを作っておこう」


 物理演算シュミレーターを作りたいところだが、流石に無理なので、ミニチュアで実験することにする。


「あ、やばい。これ楽しいぞ」


 プラモデルとかを作ったことはあるが、組むだけで満足していた。

 それが、完全にオリジナルのフィギュアが好きな素材で、簡単に作れてしまうのだ。

 しかもそれが動くとか、楽しくない訳がない。

 ……デザインセンスはこの際目をつぶる。 ここから出たらワトスンにでも協力してもらおう。


「フルメタルは男のロマン! 行くぜホーリーメタルの無駄遣い!」


 ミニチュアだし武器じゃないからセーフだ!

 と、標準、軽量、重量、2脚、逆関節、多脚、車両、蛇脚、2腕、4碗、武器腕、等々、思いつく限りのパーツを作っていく。


「マル、他にほしい形のパーツがあったら作るぞ?」


「もきゅぅん……もきゅ!(えーとぉ……円盤!)」


「ほほう、UFOというわけか。 やるなマルよ」


 飛行型もロマンだな。 UFOからロボ、じゃなかったゴーレムが分離して、武器は半月状の鎌とかが良さそうだ。もちろん腕も飛ぶようにせねばならない。

 どうやって飛ばすかが問題になってくるし、指なんていう繊細な部分のパーツがあるのに飛ばしてぶつけるなど正気の沙汰ではないが、今はとりあえず作る事を優先して、飛ぶ方や一番壊れやすい手の部分での攻撃等については今後の宿題としておこう。

 円盤型は飛行出はないがホバー移動のものを作っておいた。


「今は飛ばせないがいずれは飛ばしてみせるからな!」


「もきゅ!(流石ご主人!)」


 着地を考え無いなら、飛ばせないこともないんだけどな……。

 手も予備を用意しておいて回収を考えなければ行けるか!?

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