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プロローグ2 即効クリア

『ログアウト不能デスゲームが開始されました』


スクロールには、さらりとそう書かれていた、俺はあまりの内容に、もう少しヒネれとか、もっとマシな始め方があるだろうとか、演出地味すぎじゃねとか、コレ考えたデザイナー首にした方がよくね?などと考えていたが、一応確認をしてみることにした。


「うお、マジでログアウトも強制終了も出来ないな。ご丁寧に外部や運営にも連絡取れなくなっとるし」


 通常であれば、ステータスブックの最初のページからログアウトが可能になっているのだが、その項目が消えていた。さらには、何かトラブルがあったときの為のヘッドセットの強制終了の方法もあるがそれも実行出来なくなっていた。


 現れたスクロールのイベント詳細が普段であれば記されている部分には、メインシナリオとなる最後のボスである邪神を誰かが倒し、エンドコンテンツをクリアすることが出来れば、すべてのプレイヤーが解放されるという、一応のクリア条件などが簡素に書かれていた。

 だから、表示も何もかも地味だっつの、エフェクトぐらい入れとけよ!と、開発者目線でツッコミを入れていた俺だったが、目の前にチートツールの画面がそのまま浮かんでいることに気がついた。


「ヌルいデスゲームで良かった。自重無しでチートしまくれば垢バンされて強制ログアウトさせられるかな? まあ駄目だったら駄目でクリアが条件なら課金アイテム無限増殖して、トレード制限解除してパラメータカンストのぶっ壊れ装備を配布しまくればなんとでもなりそうだな」


  デスゲームを始めた何者かを微妙にディスりながらもチートツールが問題なく使えることをHPなどを上げ下げして確認していく。

 使用する気はなくても、様々なチートコードは予め登録済みである、登録済みのチートコードから類似のパラメーターを推測することもできるからだ。例えば、アイテム欄の一番最初を示す数値で1があるとして、そこを2に変えればアイテム欄の2番目になる。というようにだ。


「本当にデスゲームになったかどうかはともかく、今週納品だからログアウト出来ないのは困るんだよ。とりあえず一番垢バンされやすい魔晶石をカンストさせてみるか~…… って、これ実際に課金したら億単位で金かかるじゃねーか!そんなに課金する奴がいるのかよ!? コレ使ってアイテムBOXを課金領域全部解放しておけば、チートアイテム量産の準備が捗るな!ってこっちもどんだけ増やせんだよ!こんなにアイテム欄使う奴いんのかよ!」


 奥というより闇が深そうな課金要素に驚愕しながらも、普段であれば手を出さない部分のチートをしていく。

 本当にデスゲームになってしまったのか確認のしようもないので、もしもこのまま何事も無く元の状態にゲームが戻ってしまったら、最悪逮捕されてもおかしくないことを行っているのではあるが、連日の激務と睡眠不足で少しテンションがおかしくなっている俺は、そのことに思いが至らずにチートコードを適用していく。


「ふははははは、俺TUEEEEEEEEEEEE!」


 ゲーム上では真っ昼間であるが、現実世界では深夜2時を回った頃だ、夜中のテンションとでも言うべきテンションでパラメーターをいじっていく俺だが、ふとあることに気がついた。


「あれ?クリアすればいいってことなら、クリアフラグいじったら試合終了じゃね?」


 早速全イベントのクリアのチートコードを使ってみたが、特に変わった様子は無い。

 しかし、この事自体は俺も想定済みである、もともとあったエンドコンテンツに何か追加要素なりが追加されていると考えられるため、今までのチートコードでは足りないというだけだからだ。

 コンテンツのクリアフラグのような物の場合、一つのチートコードで一気に全部クリアとなるわけではなく、コンテンツ一つにつき一つ、または複数のチートコードが必要になる。物によっては、導入時や途中経過に対してもチートコードが必要になる場合も多い。

 では、どうするかというと、何かアクションを起こす前と後のデータの差異を比較して、どこの部分が変わったのか?という事からチートコードを0から探すということも出来るが、この場合はすでに登録してあるチートコードから、その先を推測すれば良いのである。


「えーと、他のコードが末尾の数値は0から始まって8ずつ増えてるから、257Fか……。対策されて他のアドレスになってるってこともなさそうだし、ダメならダメでステータスブックの項目のアドレスあるから、ログアウトの項目を出すのも、別に無対策だろうから難しくなさそうだしな」


 ナチュラルにこの事態を仕掛けた何者かをディスりながらも、俺はチートツールの機能から、これまた世界観ぶち壊しの半透明な空間に浮いた簡易キーボードと関数電卓を出現させ、チートコードを作成していく。

 数字にアルファベットが含まれているのは、こういったチートコードは普通の10で繰り上がる10進数ではなく0~9の数字にABCDEFを足した16進数が使われる。

 10進数では9+1は繰り上がって10となるが、16進数では9+1はAとなり、繰り上がらない。9+6でFまでいき、9+7で10となって繰り上がるのが16進数だ。

 関数電卓は文字通り関数の計算ができる電卓であるが、単に16進数の計算をするためだけに使っている。


「一つだとクリアの判定にならないかもしれないから、10個くらい先まで作っとくか」


 なれた手つきでチートコード作成していく。こういったリアルタイムでのチートコード作成も出来てしまうのだ。

 完成したところで、実行前に他のチートコードを一旦オフにする。オフにしたのは新しく追加したチートコードを適応させるためだ。

オフにしたことで「何倍になる」としていたチートコードをつかっていたパラメーターは元に戻るが、具体的に数値を入れた魔晶石やお金、アイテム等はチートツールを切っても元に戻らずそのままだったりする。もっとも、数値をダイレクトに変更するチートは使っている最中はその数字から減ることも増えることもないという差はあるが。


「まあ、流石にこんなに単純にうまく行くほど、甘くはないと思うけどな~」 


 と、即興で作成したクリアフラグ(仮)のチートコードを使ったその瞬間、俺は強い光に包まれ、目の前が真っ白になった。


「目があぁぁっ!目があぁぁっ!」








絶叫を残し光が収まると、そこに庵の姿は無く、見る者が居なくなったコンテンツクリアを伝える一枚のスクロールだけが誰の目にも止まることも無くそこに残されていた。


 この日世界を巻き込んだFADのデスゲーム化は、多くの謎を残したまま、犠牲者を出すこともなく10分ほどで終了した。

 一人の行方不明者を除いて……。

決して実在のゲームにおけるチート、改造行為を推奨するものではありません。


また、作者自身もチート行為を行うことを良しとしていません。仕事柄どちらかと言えば対策を建てる側だったりします。

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