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182話 それはそれで寂しい

「それじゃあ、今後の護衛計画について話し合おうか」


 なんやかんや言いながら、ワトスンの給湯器でパールが煎れたお茶をすすりながら、自分もしっかりくつろいでいるマックスがそう切り出した。


「もともとのパーティメンバーではありませんが、この中で一番ランクが高いのはマックスさんですし、リーダーと言う事で取り仕切って頂いて構いませんわよ」


「そうね、私もその方が良いと思うわ」


「僕も異議なーしだねー」


 皆がマックスがリーダーで良いよーと言っているので、俺も空気を読んで賛成しておこう。


「リーダーに全部任せるぞ!」


「おう任せな! って、なんかお前からだけ、めんどくさい事は押し付けとけ的なオーラを感じるんだが、気のせいか?」


 流石Aランク、察しが良いな!

 いや、まとめ役とか管理職とか幹事とか、めんどくさいに決まっているじゃないか。

 せっかくイロイロ面白そうなモノが沢山あるのに、そんな事に時間を取られたくはない。


「まあいい、参考までに学園ではどんな感じで割り振りしていたんだ?」


「最初は単純にローテーションを組んで居たんですけど……」


「そのうち、イオリが講師になったり、その助手というかお目付け役についたりなんて事があって、正直グダグダになってたわ」


 苦笑するエーリカの言葉を引き継いで、眉間にシワを寄せたアリーセが答えた。


「最終的には地味に僕とエーリカばっかり護衛についてたんだよねー」


「そうそう、イオリはリーラ様を降臨させて表に出れなくなったクセに、本当に頻繁に脱走するから私が見張ってたのよ」


 皆のジト目の温かい視線が俺に降り注ぐので、ロイヤルスマイルを意識して手を振っておいた。

 なんか一斉にため息をつかれたけどな。


「つまり、コイツは別枠で考えておいた方が安心って事だな!」


「だってよパール」


「ん? 我なのか?」


「お前だよ! イオリ!」


「ちょっとした、よくあるジョークじゃないか。 気にしすぎると禿げるぞ?」


 がくーっと、もの凄く疲れた、といったジェスチャーを取るマックスを尻目に、俺はこの後どのように脱走しようかと考えていた。

 どうせこの後は、屋敷の内外の把握のためにぞろぞろと見て回るはずだ。

 間取の把握だけでなく、万が一襲撃があった際に逃走するルートの確認や、コリンナ様を護りやすい場所を予め調べておくのだ。

 そういう事態が起こる事はそうそう無いが、学園にいる頃一度マルの侵入を許してしまっているため、結構厳重にやっている。

 パーティでの動き等も、いざその時が来て右往左往しないように担当を決めてあり、俺はアリーセと行動し最速でコリンナ様の所に駆けつけて盾になるという役割分担になっていたりする。

 技術は要らん身体張って防げとか地味に酷いことを言われているが、刃物を持った相手の前に怯まずに出ていくのはなかなか難しい。

 ちなみに俺がコリンナ様の所在がわからなくても、アリーセがあっという間に場所を特定してくれるので、俺は下手に動き回らないように言われている。


「この国独自の魔道具やゴーレムの戦闘力がどの程度かとか、エルフ側からの案内を待たずに俺とワトスンで調べに行っといた方が良いと思うんだが、どうだろう?」


「む? 珍しくまともな意見だな。 専門家も居るし確かにそれも必要だな」


「どうせただ見に行きたいだけだから騙されたらだめよ。 出たっきり帰って来ないってことになるわ」


 うむ、全く信用無いな!


「失敬なー、一緒にしないでいただきたいー、僕はそこまでじゃないよー」


 ワトスンが小さく講義の声をあげるが、錬金術がらみだと、時間を忘れて没頭してしまう事がよくあるので、そっち関連はあまり信用はない。


「そっちを調べに行くなら私も付いて行くから、勝手に外に行ったり知らない人について行ったりしちゃ駄目だからね?」


「だってよマル」


「もきゅ!」


 マルがわかったと、したっと手を上げて元気に返事をした。


「いや、明らかにお前に言ってるだろそれ。 つか言われている内容が子供と一緒じゃねーかよ」


「うーん、無駄な身体能力や悪知恵が無い分、子供の方がマシですわね」


 何度目かの溜め息をつかれたので、たぶん「わかってるから脱走しても良いよ」というジェスチャーだと思ってくことにした。


 護衛についての話し合いは、ほぼ俺抜きで進んでいき、本当に俺抜きのローテーションが大まかに組まれていった。

 やはり「わかってるから脱走しても良いよ」ということのようだ。






「と言うわけで、周辺を見て回るというタイミングで脱走して来ました」


「どういう訳かは知りませんが。 こんなに早く再会するとは思いませんでしたよ」


 と、言うわけでギャスランの居る外環12番枝ミルカの店にやって来た。

 迷うかと思ったが、道行く人に素直に店の場所を訪ねながら来たらあっさりと到着したのだ。

 一つ解ったことは、道がグネグネしているのは、木の成長に合わせてジリジリと道の方をずらしていった結果であるらしく、基本的に曲がりくねっていても分岐の数や、分岐で曲がる方向が変わっているわけではないので、住所がわかるなら分岐の数を数えていくだけで、ほぼ迷うことなく行きたい所に行けるということだ。 


「良いんですか、仕事放りだしてきて?」


「良いんです。 何気にガチで置いて行かれたんで……」


 確かに脱走しようとか企んで居たのは確かだ。

 しかし、流石にトイレの場所ぐらいは確認しておこうと、皆でゾロゾロと間取の確認に出て、おーあったあったと、トイレを見つけたついでにちょっと用を足して外に出てみたらマルとパールを含め、すでに誰も居なかったのだ。


 別に悲しくなったりはしていない。


「なんで泣いてるんですか?」


「泣いてなんかいませんよ、ちょっと目から鼻水が出ただけです」


「脱走しようとしていたのに、どうぞってなったら泣くとか難儀な人ですなあ。 まあでも嫌われたとか頼りにならないとか戦力外だとか、そういう事じゃあ無いと思いますよ? ある意味信頼されているんですよ、多分」


 うぅ、ギャスランさん良い人だなぁ……。


「叔父さんただいまー、夕飯採ってきたよ。 あれお客さん?」


 青緑っぽい色のロングヘアで明るいオレンジ色の切れ長の目をしたエルフの美少女が店に入ってきた。

 


「おかえり。 こちらはイオリさん、学園で臨時講師をしていた方だよ」


「あー、あの論理がなんたら流の魔法を使う人ね?」


 どうやら俺の話をギャスランさんから聞いているらしい。


「どうも、イオリコスイです。 ギャスランさんにはお世話になってます」


「あ、ああどうも。 世界樹のミルカです。 噂はカネガネ……」


「どんな噂でしょうかね?」


 このミルカさんは、ギャスランさんの姪にあたるそうで、100歳を少し越えた若者だそうだ。

 見た目は人間換算だと10代半ばぐらいと言った所で、年下にしか見えない、どの様に寿命が決まっているのか論理的に説明が欲しいと思う今日この頃だ。


「イロイロ聞いてるわ! まずはご挨拶代わりに手合わせしてくれない?」


 あかん、この子もかい……。


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