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180話 新たなる浪漫

 世界樹のガッカリ仕様を聞かされ「世界樹」と冠された素材の採取を諦めた俺は、ならば珍しい素材は無いかと、世界樹の仕様を教えてくれたエルフを捕まえて根掘り葉掘り聞く作業に専念する。


「珍しい素材ですか? うーん、左右で違う花の咲く苗木とか、内部にほぼ真水を溜め込んで日持ちもする果実等がお土産として人気がありますね」


 お土産かい。

 気にはなるが、植物はアイテムボックスに入らないからな。

 まあ、あれこれを作るための素材と聞いたのではなく、単に珍しい素材と聞いただけじゃあ答え難いのは仕方がないか。


「武具に使用する様な素材については、一般的な物以外は許可が無いと外の方にお譲りすることは出来ませんので、ご了承下さい」


 ほう、ということはレアで有用な素材があるということだな?

 どの道有機物は普通のカバンに入るだけしか持てないが、地盤が見えているなら鉱物とかもありそうだ。

 ちょっと貸してもらう事さえ出来れば手に入りそうだな。


「許可が無いと手に入らない素材と言うのは、どういった物なのか聞いても構いませんか?」


「ええ、大丈夫ですよ。 幾つかありますが、多くはこの世界樹から採れるもの全般ですね。 素材として特別優秀というわけではないのですが、自分達の足下を崩す様な真似をしない為です」


 優秀というわけでは無いのか……。

 いや、対外的にそのように言っている可能性はあるか。

 1人になったら解析してみよう。


「それと、世界樹の中央に魔力を帯びた泉が湧いていまして、特殊な魔石が産出するんです。 おそらくこれが一番珍しく、実用性の高い物かと思いますよ」


「ほほう! 特殊な魔石ですか! それは興味深いですね! それを譲っていただく……。 いえ、購入することは出来ますか!? 駄目なら触れせていただくだけでも……。 いやいや、この際見せていただくだけでも構いませんので!」


 ゲームに無かった物でも、解析ツールを使用すればその素材やアイテムのコードが判明する。

 コードさえ判明すれば、アイテム変化のコードにコードを足してやれば、譲り受けなくともアイテムゲットが可能だ。

 もちろん、品質を上げたりパラメータを変更することも出来るので夢が広がる。


「きゅ、急にグイグイ来ますね……。 外の方には渡す事は禁じられていますが、滞在中に使用しているところは見かけるかと思いますよ」


 見るだけならOKということで、どのように使用するのかとか、普通の魔石とは何が違うのかとかと踏み込んで聞いてみたが、技術者や学者ではないのでその辺は詳しい人に聞いてくれと素気なく言われてしまった。


「ああ、ちょうど見えましたね。 私は技術者ではないので仕組みまではわかりませんけど、魔石は主にアレに使っています」


 指で指し示してくれたので、そちらの方を見てみると木製の全身鎧の姿をした何かが、なにやら荷物を運んでいるのが見えた。

 動きを見るからに中に人が入っているようには見えない。

 魔石を使う用途で人型と言う時点で、確定だろう。


「ゴーレムですか?」


 王都でも錬金術師達がいじくり回していたが、あちらは金属ベースのゴーレムだった。

 対してこちらのゴーレムは木製の鎧を着た人形だ。

 鎧にはレリーフが彫られて居て高級感がある。


「そうです。 詳しくは存じませんが、世界樹で採れる魔石は世界樹と相性がよく、長く稼働してくれるのだそうですよ」


 ほほう、それは是非解析してみたい。

 この世界のゴーレムは、正直な所発展途上である。

  というのも、元の世界のロボットと同じ様な問題があり、それに技術が追い付いていないのである。

 魔法という不思議パワーがある為、ゴーレムの動作に関するプログラム的なものは大分簡略化出来るとはいえ、それでも十分すぎるほど制御が難しいのだ。

 先人達が作ってきた基本プログラムがあるので静歩行でゆっくり歩いたり、物を持ち上げたりと単純な作業をさせる事は出来るが、どの動作も非常に緩慢だ。

 静歩行と言うのは足の裏から重心が離れない歩行方法の事で、常に中心にバランスを取りながら歩く歩行方法で、足から棒が出ているようなゼンマイ仕掛けのロボット等と同じだ。

 これに対して人間は動歩行と言って重心を前に傾けて倒れる前に反対の足を出すという歩行方法だ。 ようは倒れながら進んでいくという体重移動の繰り返しで歩行している。

 つまりバランスの制御が出来ていないだけでゴーレムが早い動きができないというワケではなく、ゆっくり動かさないとバランスを崩して転んでしまうという事に他ならない。

 その為、俺がセントリーガンで利用したのと同じように、一部分だけで使用するのが通例となっていたりするので、王都でも完全な人型のゴーレムは研究用の物しか無かったのだ。

 多足型や車輪型のゴーレムは一応存在するが、それらはゴーレムの上半身を使った別の魔道具として扱われている。

 しかし制御項目が多い為、燃費が悪く単機能のものと比べれば遥かにコストパフォーマンスが悪いせいで、ほとんど普及していないというのが実情だ。

 それがココでは人型のゴーレムが実用品として利用されているというのだ、これは是非とも手に入れたい所だ。

 木製じゃなければアイテムボックスに入るのに、その点が非常に残念だ。


「って、どこ行くのよ!?」


「ぐえっ」


 無意識にゴーレムの方へ足が向いていたらしく、アリーセに襟首を掴まれた。

 首が締まるから腕とか肩とかを優しく掴んで欲しいと思う……。


「挟んで、掴んで、持ち上げてー、なんて言いながらゴーレムに突進して行くような人を優しく掴むなんて無理よ! 止めるだけで精一杯ね」


「おかしいな、それじゃあまるで変人じゃないか」


「イオリが変人じゃなかったら、世の中に変人なんて存在しなくなっちゃうわよ! ほら、それよりもう着くみたいよ」


 酷い言われ様であるが、これも文化の違いだと思い、ヤレヤレと反論の言葉を飲み込む。

 国どころか世界まで変わってるわけだしな。


「何を考えてるか知らないけど、多分違うと思うわ」


「いやいや、俺が住んでたとこでは、重機を見てワクワクしない男子は居ないんだよ」


「イオリの居たところって、錬金術師ギルドだったってわけね」


 流石にゴーレムの彼女を作ろうとか言う奴は……。 いっぱい居そうだな。

 人形嫁に二次元嫁……。

 あれ? おかしいな、あんまり反論出来ない。

 釈然としないが、とにかく目的地らしい建物の前に着いた。

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